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彼がいた頃 作者:比呂

第6回   第五話
「健悟、好きだよ。」

「え?」

「気づいてなかったの。」

「あーいや、ちっとそんなような気がしてたけど・・。」

「お願い!あたしと付き合って!」








二人で屋上に消えていったのをどうして追いかけていってしまったんだろうか


知らないでいれば 今とは違う未来があったかもしれないのに







階段の扉の所に隠れて京夏とけんちゃんの会話を聞いていた。





最低だな あたし

















京夏がけんちゃんに抱きついて言った。


「里沙のこと好きなの?」


けんちゃんは答えずに京夏を離した。


「好きなの?!」

「好きじゃないよ!」


「ならあたしと付き合ってよ、健悟・・・。」



泣きじゃくる京夏をけんちゃんはそっと抱きしめた。















そうか

けんちゃんも京夏が好きだったのか








なんだ 両想いじゃん


あたし別に嘘つかなくてよかったんだ



うん

良かったじゃん











良かった
















そっと静かに階段を降りた。

けんちゃんがあたしに気づいていたとも知らずに。













京夏は戻ってこなかった。

先生に理由を尋ねると早退したとのことだった。


放課後、けんちゃんのところに行った。




「きょうちゃん帰ったって・・。」

「うん、知ってる。」

「そう・・。」

「お前、さっき見てたろ?」

「え・・な、なにそれ?」

「いいよ、嘘つかなくて。」

「・・・。」



「俺、京夏と付き合う。」


















予想したとおりなのに
どうしてこんなに悲しいの
































「いやだよ、けんちゃん。」


























自分勝手なことばかりしてきてごめんね


あたしの想いなんて殺そうと思えば殺せたのに







それができなかったのは あたしがまだ幼すぎたから




本当にごめんね













 

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Novel Editor by BS CGI Rental
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