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ドール・バトラーズ 作者:フラン

第9回   一の巻 『闘いなんて、大ッ嫌い!』











「おい! いつまでそうやってるつもりだよ!?」

「今日が終わるまで! 絶対に闘ったりなんかしないんだから!」

 あたしは今、寮の部屋のトイレの中にこもっていた。
 誰が来ようと、誰がなんと説得しようとも、絶対に出るもんか!

「もう放課後だぜ? 行かないとテリトリーも奪われるぞ?」

「いいもん! 闘うくらいだったら、テリトリーなんて要らない!」

 さっきからハルがあたしを説得を試みているけど。
 無駄だよ。絶対に出ないんだから。

「チッ、しゃーねえな。俺が一人で行ってくるよ」

 そんなこと言って、あたしを引きずり出そうとしても意味ないからね!
 っていうか、支配者(ドミネーター)のあたしがいなくちゃ、人形(ドール)のハルは闘えないじゃない。

「そんなこと言ったって、あたしは行かないからね! ハルも、もう諦めなよ!」

 そう言ってやる。
 屋上で闘ってくれたハルには申し訳ないけど、あたしは闘わない。
 だって、もう二度と人が傷つくのは見たくないから。あたしの周りの人が傷つくのはイヤだから。

 そのまま、時間がすぎていった…。
 ……………………………。
 ……………………。
 ……………。

 あれ…?
 ハルの声が聞こえなくなった…。
 まさか……本当に闘いに行ったなんて事はないよね…。
 だって、ハルはあたしがいないと闘えないじゃない。あたしがお願いをしないと、力が出せないじゃない。

「……ハル?」

 何も返ってこない。
 どうしようかな…。なんか、心配になってきちゃった。
 でも、もしここで出て、ハルが待ち伏せしてたなんて事だったら、あたしが格好悪いし…。

「本当に、闘いに行ったのかな…? でも……そんなことないよね…」

 ケガするだけだもん。
 力の出せない『ドール』が闘っても、勝てるわけないし。
 そんな無意味なことをハルがやるとも思えないし…。

「うぅ…! なに悩んでるんだ、あたしは…」

 自分の頭をコツンと叩いた。
 悩んじゃいけない。あたしは闘わない。そう決めたんだから。
 
 その時――。

 耳をつんざくような轟音が聞こえてきた。

 聞こえてきた場所は上――屋上のほうからだった。

「う、ウソでしょ…? ハルが一人で…?」

 トイレのドアを開けて、外に出る。
 闘いの場所に指定された屋上に目をやると、そこには大きな爆発が起こっていた。
 そして、そこに見える一つの影。

 ハルだ…!

「何で…!? 何で一人で闘ってるのよ…! どうして!?」

 体が震えた。
 どうして? 何で闘ってるの?
 あたしは、ただ誰かが傷つくのが怖くて、トイレに閉じこもって。
 それで全部が終わると思ってた。でも、ハルは闘っている。たった一人で、闘ってる。

 ハル…!!





「ハッ、ハッ…!」

 やっべえ。
 ドミネーターの力がなくても何とかやれるかなって思ってたけど…。
 とんでもねえや。ホント、シャレになんねえ…。

「恩田 梅はどうしたんだい? このまま来なかったら、あんたは死ぬだけだよ」

 確か名前は……池田 アスカって言ってたっけ。
 この人、マジで強え。二年生って言ってたけど、たぶん三年生に引けをとらないんじゃねえかな…?

「行けっ! あたしの『ドール』!」

 ドミネーターの力を受けてやがる…!
 あの『ドール』…! まだ強くなる気かよ…!?

「くそっ!」

 逃げてちゃラチが明かねえ。
 こっちから仕掛けるしか……方法はねえ!

「バカだね。ドミネーターがいない『ドール』なんて、ただの人間じゃないか」

 力を受けたアスカの『ドール』が俺に向かってくる。
 奴の力が直撃したら、たぶん死ぬだろうなぁ…。そしたら梅を呪ってやる…。

 相手の『ドール』が俺に攻撃してきた。
 敵から放たれる閃光が、俺に当たる。焼けるような熱さと、体が叫びだしそうな痛みが襲ってきた。

「ぐッ…! あああ!!」

 痛ってえ…!
 マジで痛ってえよ! ちくしょう、俺は何もできないのかよ…!?
 梅がいなくちゃ何もできない能無しなのかよ…!? 俺はあの時から、何も変わってねえのかよ…!!

「……惜しいね…」

 アスカがそう呟いていたのを、俺の耳が聞いていた。

「あんたの『ドール』としてのランクはAに位置してる。ドミネーターさえいれば、あたしとも対等に張り合える力を持ってるのに…。惜しいね」

「へっ、うっせえよ。アンタにゃ関係ねえだろ…」

「そうだね、関係ない。だから、次の攻撃で終わらせてもらうよ」

 くそ…。
 もうダメだわ。力入れても体うごかねえし。それに頭もボーとしてきた。そろそろマジでヤベえな。

「終わりだ…!」

 アスカの『ドール』が突っ込んできた。
 もう逃げる力もねえし、もし逃げても策があるわけでもない。
 お手上げだな…。俺もとうとうご臨終か。短い人生だったなぁ…。

「ハル!!」

 ……え?
 この声…。あいつの声か?
 梅…。いや、それはないか。幻聴が聞こえるなんて、俺もヤキが回ったもんだ。

「ハル!! 負けないで! 闘って! 絶対に死なないで!!」

 ドクン!
 心臓が跳ね上がった。力が湧いてくる。これは、ドミネーターの力…!
 まさか本当に来てるのか…? あんなにイヤがってたのに…。無理しちゃって…。

「アイアイさー! ちゃんと見ててくれよ、梅!」

 屋上の出入り口に目をやる。
 そこには、やはり梅がいた。
 絶体絶命の状況から、これで一気に盛り返せるぜ!

「いっくぜ! 俺は負けねえからな!!」











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Novel Editor