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ドール・バトラーズ 作者:フラン

第10回   一の巻 終 『信じる力と傷つけたくない人』










「ハル…!」

 あたし、見届けるよ。
 ハルが闘うところ。
 本当は見たくない。人が闘うところも傷つくところも。だけど…。

 ハルは闘っちゃうから。あたしがダメって言っても、きっと闘っちゃうから…。
 だったら見守りたい。あたしがいれば、少しでもハルの力になるんだから。

「負けないで!」

 そう叫ぶと、あたしの『クリスタル・バッジ』が光を発した。
 金色に輝く光があたしを包む。

「おっしゃー! 力が溢れてくるぜッ!」

 あたしの、ハルを思う気持ちが強くなればなるほど、ハルに力が満ちていくみたい。
 それがドミネーターとドールの関係なんだと思う。どれだけ相手を思えるか、それで決まるんだと思う。

「へえ。あんた、ハルって言うんだ。気に入ったよ」

 敵の『ドール』を操っている人――アスカさんの声が聞こえた。

「でも、いくら『ドール』が良くても、ドミネーターがいまいちじゃ、力は発揮できないよ」

 相手の『ドール』と、ハルが発する光が激突した。
 まるで核爆発のような衝撃が弾けて、あたしも吹き飛ばされそうになる。

「あたしのドミネーターとしてのレベルはB。でも、ハル! あんたのところの彼女のレベルはEだよ! それじゃあ相手にならない!」

 何を言っているのか分からない。
 けど、なんとなく悪口のようなことを言われてるのは分かった。
 レベルとか意味分からないけど! あたしは負けない! ハルも負けないよ!

「アスカさんよぉ! アンタ、ぜんぜん『ドール・バトル』を理解してねえな!」

「なっ!?」

「この闘いはなぁ! お互いがどれだけ信用できるか! どれだけ強く思えるかで決まるんだ!」

 ハルが、チラリとあたしを見た。
 その顔には笑顔が浮かんでいて。なぜか嬉しそうに微笑んでいた。

「俺は最高のドミネーターと組めたよ! あいつは人の痛みが分かる! だから人を思いやることも出来る!」

 え…? あたしが……人を、思いやる…?

「闘いなんてないほうが良いに決まってる! 闘いは必ず誰かが傷つくんだ! そんなのはイヤだ…! だから――」

 ハルの言葉。
 なぜか、あたしの胸を打った。
 ハルは言ってた。『俺も、大切な人がいなくなる悲しみってやつは、十二分に分かってるつもりだよ…』って…。

「他人が傷つくくらいなら、俺が盾になる! 俺はもう、人が傷つくのを見たくないから!」

 きっと、ハルもあたしと同じ気持ちなんだ。
 他人が傷つくのを見たくない。でもあたしは、自分も傷つきたくないって思ってる。
 だけどハルは……他人が傷つくなら、自分が傷ついたほうがマシだって…。

 でも、それは間違ってるよ…!

「ハル!!」

 あたしの全力の大声。
 その声はハルに届いたらしく、戦闘中だというのに、ハルはあたしに目を向けてきた。

「言っとくけど! ハルは自分が傷ついてもいいかもしれないけど! あたしはイヤだからね!」

 ハルは分かっていない。
 ハルが傷ついて、悲しむ人がいることを。
 誰が悲しむかは分からないけど……あたしが悲しむ。きっと涙が出ちゃう。

「これ以上ケガなんかしたら、許さないんだから!!」

 ハルはあたしを見て、笑った。
 これ以上ないってくらいの笑顔で。

「ハル…」

 光が、再び輝いた。
 それはあたしを包み、ハルも同時に包んだ。
 きっと、あたしの力がハルに伝わったに違いない。
 ハルは負けない。そう、確信に近いものを感じた。

「いっけぇ! ハル!!」












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Novel Editor