「ハル…!」
あたし、見届けるよ。 ハルが闘うところ。 本当は見たくない。人が闘うところも傷つくところも。だけど…。
ハルは闘っちゃうから。あたしがダメって言っても、きっと闘っちゃうから…。 だったら見守りたい。あたしがいれば、少しでもハルの力になるんだから。
「負けないで!」
そう叫ぶと、あたしの『クリスタル・バッジ』が光を発した。 金色に輝く光があたしを包む。
「おっしゃー! 力が溢れてくるぜッ!」
あたしの、ハルを思う気持ちが強くなればなるほど、ハルに力が満ちていくみたい。 それがドミネーターとドールの関係なんだと思う。どれだけ相手を思えるか、それで決まるんだと思う。
「へえ。あんた、ハルって言うんだ。気に入ったよ」
敵の『ドール』を操っている人――アスカさんの声が聞こえた。
「でも、いくら『ドール』が良くても、ドミネーターがいまいちじゃ、力は発揮できないよ」
相手の『ドール』と、ハルが発する光が激突した。 まるで核爆発のような衝撃が弾けて、あたしも吹き飛ばされそうになる。
「あたしのドミネーターとしてのレベルはB。でも、ハル! あんたのところの彼女のレベルはEだよ! それじゃあ相手にならない!」
何を言っているのか分からない。 けど、なんとなく悪口のようなことを言われてるのは分かった。 レベルとか意味分からないけど! あたしは負けない! ハルも負けないよ!
「アスカさんよぉ! アンタ、ぜんぜん『ドール・バトル』を理解してねえな!」
「なっ!?」
「この闘いはなぁ! お互いがどれだけ信用できるか! どれだけ強く思えるかで決まるんだ!」
ハルが、チラリとあたしを見た。 その顔には笑顔が浮かんでいて。なぜか嬉しそうに微笑んでいた。
「俺は最高のドミネーターと組めたよ! あいつは人の痛みが分かる! だから人を思いやることも出来る!」
え…? あたしが……人を、思いやる…?
「闘いなんてないほうが良いに決まってる! 闘いは必ず誰かが傷つくんだ! そんなのはイヤだ…! だから――」
ハルの言葉。 なぜか、あたしの胸を打った。 ハルは言ってた。『俺も、大切な人がいなくなる悲しみってやつは、十二分に分かってるつもりだよ…』って…。
「他人が傷つくくらいなら、俺が盾になる! 俺はもう、人が傷つくのを見たくないから!」
きっと、ハルもあたしと同じ気持ちなんだ。 他人が傷つくのを見たくない。でもあたしは、自分も傷つきたくないって思ってる。 だけどハルは……他人が傷つくなら、自分が傷ついたほうがマシだって…。
でも、それは間違ってるよ…!
「ハル!!」
あたしの全力の大声。 その声はハルに届いたらしく、戦闘中だというのに、ハルはあたしに目を向けてきた。
「言っとくけど! ハルは自分が傷ついてもいいかもしれないけど! あたしはイヤだからね!」
ハルは分かっていない。 ハルが傷ついて、悲しむ人がいることを。 誰が悲しむかは分からないけど……あたしが悲しむ。きっと涙が出ちゃう。
「これ以上ケガなんかしたら、許さないんだから!!」
ハルはあたしを見て、笑った。 これ以上ないってくらいの笑顔で。
「ハル…」
光が、再び輝いた。 それはあたしを包み、ハルも同時に包んだ。 きっと、あたしの力がハルに伝わったに違いない。 ハルは負けない。そう、確信に近いものを感じた。
「いっけぇ! ハル!!」
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