・・・ ふっと目を覚ますと、恵美が先に起きていた。 「おはよう、おにいちゃん」 「ああ、おはよう」 妙に目覚めは良かった、この空間に来てから感じていた違和感が全く感じられなくなっていた。しばらくまどろんでいるとドアをノックする音がきこえた。 「入るよ、お二人さん」 イルが部屋に入ってきた。 「よく眠れたかい?」 「ああ」 「それは良かったね、実は思い出したことがあってね、伝えておこうと思って」 そう行ってイルが手を振った瞬間、部屋が今までの寝室ではなく、食堂のような空間に変わった。 「あれ?おどろかないね?」 「ああ、もう慣れたよ」 というと恵美が言う。 「私はそうでもないけど・・・」 テーブルには朝食が並んでいた。 「座りなよ、食事しながら話そう」 そう言われ席に着くと、テーブルにはステーキ、シチュー、やたら豪華なサラダ。 どう考えても朝飯じゃないだろう・・・どっちかというとディーナーってやつだな・・・ 「ちょっと・・・これは豪華過ぎないか?」 「え?そうかい、君達に合わせたつもりだったんだけどな」 俺らは貴族か・・・?とりあえず軽そうなものを選んで食べることにした。結構旨いので驚いた。 「で話ってなんだ?」 「実はね、最近となりの空間なんだけど、君達みたいに迷い込んだ子が居たらしいんだよ、しかも結構いっぱい」 「いっぱい・・ってまさか・・・」 「おにいちゃん、あそこに居た人たちかな?」 一瞬不安がよぎる、確かにあのモールにいた人がみんな異空間に飛ばされたとしたら大変なことだ。 「かもしれないな・・・でその人達はどうなったんだ?」 「さあね?別に関係ないと思ってたから聞かなかった」 「おい!一番大切なとこだろ!!」 つい大声でどなってしまった。 「うるさいなーちゃんといまそのことについて遣い魔出しといたからそろそろ聞いて返ってくるころだよ」 「え・・・すまない・・・」 イルは言動とは裏腹に親切なのかもしれない、少し悪いことした気分になってしまった・・・その矢先 「ほら、返ってきた」 イルの指差す方向を見ると・・・やたらデカイ山男みたいな奴がコッチに向かってるのが見えた!え!?まるで漫画に出てくる改造人間とかじゃないのか!?3メートルはあるような大男がこっちにゆっくりと向かってくる。 「お、おい!あれはやばいんじゃないのか!?」 恵美もおびえている、反則だろ!あれは!? 「なに言ってるんだよ?別にやばくないだろ?」 そんなことをこいつはさらっと言った。 「いや、どう見てもやばいぞ!まさか近づいた瞬間つぶされたりしないか?」 「酷いな、ニルがそんな事するわけ無いじゃん!」 にわかに信じられるようなものではないが、ここはどっちにしてもイルを信じるしかない。 ニルが近くに来るにしたがって様相がわかるようになった。 デカイだけで男の俺がいうのもなんだが、以外に男前だった。 「ニル!お帰り!なあ、どうだった?」 イルは俺達に見せたことのないような無邪気な笑顔を見せながらニルに飛びついた。 「ああ、聞いてきたよ、まだほとんど残ってるみたいだ」 まるで我が子をあやすようにイルの頭をなぜるニルを見てると、まるで親子みたいだ。 ・・・でもたしかニルはイルの使い魔だよな?反対じゃないのか? 「紹介するよ、こいつが僕の使い魔のニル」 「は、始めまして・・・」 恵美もちょこんと頭を下げた。まだちょっと怖いらしい。 「始めまして、私はニル、君達のことはイルから聞いてるよ」 最初の印象とはちがいすごく紳士的な感じだった。 「君達の仲間はとなりの空間にいる、もちろん無事だよ。しかし・・・」 ニルの表情が曇った。 「残念ながら合うことは出来ないよ、となりの空間を覗くことはできるが、私達以外の存在が行き来することは出来ない」 「ど、どうして!?」 「この空間はそういう仕組みになっていてね、残念だけど姿を確認するので限界なんだ、悪いな」 よくわからなが無理らしい、イル曰く、彼自身が選択するだろうからどうにも出来ない、帰れる子もいるかもしれないけど、そうとも言い切れない、幸いだったのがとなりの管理者はいい奴だからちゃんと選択肢を与えてくれるだろう、ということだった。 「まあ落ち込まないでよ、君達も急がなくてもいいからゆっくり考えたらいいよ」 「ああ、そうする」 とりあえず寝室に空間を戻してもらった。 「となりの部屋にいてるから何かあったら声をかけてよ」 そういってイルとニルは部屋をでた。 「おにいちゃん、私達どうなるのかな?」 「わからないな・・・でもなんとかするさ」 「うん」 なぜかドっと疲れが出てきた、とりあえず今日は休むことにした、急ぐことはない、最善をつくそう・・・そう自分にいい聞かせる事にした。
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