「あぶなかったな」 丁度駅に入った時、本格的に雨が降ってきた。 「ほんと、あぶなかったね」 間一髪って奴だった、運が良かったというか、こんなところで運を使いたくなかったな、正直そんなこと考えていた。 「早く済ませろよ」 そういいながら恵美と一緒に幸運の大木へ向かった。 駅にいるときはその変化に俺も恵美も気づかなかった、気づいたときには少し遅かったのかも知れない。 「あれ?お兄ちゃん、人少なくなってない?」 唐突に恵美が言う。 「え?ほんとだな、雨のせいでみんな帰っちゃったか?」 いやそれにしては少なすぎる、進むにつれ人はだんだん減り、幸運の大木につくころには俺と恵美だけになってしまった。 変な感じがしたけど俺も恵美も気にしなかった・・・というよりは不思議にそれ以上は気にならなかった。 「なんかおかしくない?お兄ちゃん?」 さすがにおかしい、あんなけ人でごった返していたのに、俺と恵美が食事に出た2〜30分の間に人っ子一人いなくなるなんてそうは考えられない。 「だな、お願い事は次のときでもいいだろ?今日は帰ろう、な」 「う、うん、そうする」 なにか嫌な予感がした。 特に実態が無のだけど、なぜか背筋になんともいえない恐怖感が走る。 「恵美、俺から離れるな、なんかおかしい、今すぐ引き返すからな!」 そういうと俺は恵美の腕をぐっと掴んだ、恵美も同じ感覚を持っていたのか、分かったとうなずくと腕をぎゅっと掴んだ。 「な、なんか怖いよ、お兄ちゃん・・・」 今にも泣きそうな声で恵美言う。 「大丈夫だ、俺がついてる、走れ!」 さっき通ってきたモール街をそのまま引き返す、来るときにはまばらにいた人達はもうどこにも見えない、店に店員さえいない。 さっき来たときより暗く感じる、こんなに照明を炊いているのに・・・そして良く分からないが、店の隅や遠くに見えているはずの出口がにわかにぼやけ出した。 なんだ?目がかすむのか? だんだんと物体の輪郭がなくなっていく、でも俺は恵美の腕を掴み必死に走った。 不安になるから恵美にすかさず声をかける。 「おい!大丈夫か?」 「うん」 恵美の声を聞くと少し落ち着く気がした。 ・・・・ しばらくして、俺は気づいた。 「おかしい!なんでまだ出口に着かないんだ!?」 ふっとわれに返る、今まで必死に出口に向かって走っているつもりだった。 でもいまたっているところは・・・さっきのモール街ではない。 「え、恵美!」 「お、お兄ちゃん、ここは?」 恵美がいるので俺は少しほっとした。 しかし、ここがどこなのか?見たことあるようで見たこと無い・・・すべて曇りガラスを通したように輪郭がぼけて、何が何だか分からない、唯一恵美の姿は、はっきりと見えた。 「お兄ちゃん・・・なんかおかしいよここ・・・どうなっちゃてるの?」 「お、俺にもわからない、でも心配するな、俺がついってるからな!」 そう恵美を安心させたものの俺は今の状況が把握しきれなくて一杯々だった。 このとき俺達は何が起きたのかさえ理解できなかった。 しかしその時俺達はとんでもないところに迷い込んでいた。
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