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刻の番人 作者:Mr.瀧川

第3回   第三章 訪問者
・・・ 
いま一瞬気配がしたね。
久々に何か来たのかもしれない。
それが生き物なのか物質なのか・・・それはまだ分からない。
・・・
遠くにほのかに明かりが見える。
人・・・じゃあないな。
しばらくすると黒いものが流れてきた。
手を伸ばしてみる。
・・・
何だろう・・・黒くて液体のようだけど固体、あんまり硬くなくて、変に重い。
ああ、これは魂だな。
比較的よく流れ着く奴ではあるが、こんなに真っ黒いものは珍しい。
よっぽど悪いことでもしたのかな?そんなこと思っても魂は答えてくれない。
これはこの空間にしばらくすると馴染んでなくなってしまう。
結局どうなるのかは知らないけどね。
そういえばもう少し昔のことを思い出したよ。
それは結構昔・・・どのくらい前かは忘れたけど、一匹の犬が迷い込んだことがあったね。
どうやって迷い込んだかは分からないんだけど。
彼には名前が無かった。ここに来るまでに、昔の記憶と共に落っことしちゃったみたいだった。ここではよくあることなんだよ。
記憶の欠片を違う次元に落として来る時があるんだ。
まあ大抵の場合は多数の次元を彷徨ったってことなんだろうけど、僕のいるところにたどり着いたのは運がよかったと思うよ。
彼も疲れていた、僕を見つけて安心したみたいだけどね。
彼とは250年くらい一緒にいたかな?
名前は付けなかったんだ。
犬と話すってのも最初は不思議な感じだったけど、通じ合っていれば犬とか人間とかは問題じゃないんだよね。
彼のおかげで長い間寂しくなくて済んだよ。
でも今はもうここにはいないんだ。
ある日彼の記憶がこの次元に流れ着いた。
ほんと奇跡に近いね。で記憶が戻ったんだけど・・・僕と過ごした時間が長かったからどっちか記憶を捨てないといけなかったんだ。
散々悩んでいたけど、結局もとの記憶を取り戻したくなって、僕との記憶をほとんど消しちゃったんだ。
彼はまた違う次元に旅立つことにしたんだ。
もちろん止めたんだけど・・・僕との思い出はもう消えてしまったから。
きっと彼は今でもどこかの次元を旅しているんだと思うよ。
きっとね。

 
 

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Novel Editor by BS CGI Rental
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