今日は2学期の終業式。 野崎郁美は、ちょっと複雑な心境でその日を迎えた。 なぜなら、休みになるのはうれしいのだが、郁美には好きな人がいるのだ。 冬休みだからまだ期間が短くて救われるものの、恋する乙女にとって、2週間はあまりにも長すぎる。 休みの間中、郁美は早乙女君のことばかり考えていた。 会いたいな・・・、すっごく。 早乙女君、早乙女雅弘。 笑顔の素敵なスポーツマンタイプの男の子だ。 3年の体育祭の時に、彼を見つけた。 部活動の紹介で、ラガーシャツを着て、一生懸命に動いている彼の姿に一目ぼれしたのだ。 ホコリまみれになって、カラリと笑いながらボールを追う彼の姿は、とてもかっこよくて、まぶしかった。 どうしてこんなにかっこいい人に、今まで気づかなかったんだろう。 残り少ない高校生活を思い、郁美はもっと早く彼のことに気づかなかったことを悔やんだ。 早乙女君に対して、郁美は完全な片思いだ。 クラスも違うから、話したことなんかもないし、廊下とかですれ違っても、目が合ったことすらない。 こんなんでいいのかなぁ。 郁美は、もうすぐ卒業という事実に焦りを感じていた。 早乙女君に対する思いは、単なる憧れでも、ミーハー根性からでもない。 本当に好きなのだ・・・と思う。 それだけに、今のままじゃ嫌だという気持ちは大きいけれど、どうすればいいのかわからない。 告白すればいいじゃないかって思うかもしれないけれど、早乙女くんは多分、郁美の事など知らないはずだから、知らない子から告白されても、断る率が高いんじゃないかと思うと、どうしても勇気が出ない。 でも・・・、やっぱりこのままじゃいけないと思う。 どうしようかな。 郁美は考えた。 そうだ、年賀状を書こう。 郁美の存在を伝えるいいチャンスかもしれない。 郁美はとてつもなくドキドキした。
そうと決めてから、郁美はハガキを前に考え込んだ。 言葉、ペンの色、イラスト、ets・・・。 だけど、考え込んだにもかかわらず、出来上がったものは、ごくありふれたごくシンプルなものだった。 黒の細字の万年筆で、横書きに「A Happy New Year」 そして一言、「あなたの合格、心からお祈りしています。野崎郁美」と。 郁美は、1日迷って、やっとの思いで、ポストに投函した。 それからというもの、郁美は必要以上にドキドキした毎日を送った。 何度か、大胆なことをしてしまったと、頭を抱え込むこともあった。 後悔もした。 だけど、元旦も過ぎて、いろいろと忙しいうちに、だんだんと忘れていった。 たまに思い出すことはあっても、ま、いいやって、出したものはしょうがないって、開き直っていた。 そう、1月7日までは・・・。 7日、ポストに時期はずれの年賀状が届いていた。 明日はもう学校なのに。 郁美は、おかしくなった。 誰だろう、野崎郁美様と書かれた宛名の文字に見覚えはなかった。 少し細めの文字、表に名前はない。 裏を返す。 ざっと目を通したけれども、裏にも名前はなかった。 だけど、文を読んで、郁美はハッと息をのんだ。 あけましておめでとうの下に1行、「受験頑張ります」と。 早乙女君だ! 確信はないけれど、早乙女くんからに違いない。 郁美は、胸がドキドキした。 まさか、返事がくるとは思わなかった。 郁美のハガキなど、なんだよこいつって、ほおっておかれるものだと思ってた。 郁美は急に、明日の始業式が待ち遠しくなった。 早く、早乙女君に会いたかった。 会って、お礼が言いたかった。 ありがとうと、一言。 早乙女君にとって、返事はただの社交辞令で、もらったものには返事を書く律儀な性格からだったかもしれないけれど、一歩近づいて、親しくなれたような気がして、うれしかった。 明日、早乙女君と話ができるかもしれない。 心がざわざわと騒いだ。
いつ言おう。 郁美は朝から、ソワソワとお礼を言うチャンスを狙った。 だけど、始業式、大掃除、と言うチャンスは見つからぬまま、午前が過ぎた。 弁当の時間が近づくと、郁美は必要以上にドキドキし始めた。 というもの、早乙女君を好きになってから、早乙女君のクラスでお弁当を食べていたからだ。 今日はなんだか行くのが恥ずかしかった。 早乙女君と、顔を合わすのが、照れ臭かった。 偶然にも、友達の佐和子と、早乙女君の席は、前後ろで、郁美たちは、佐和子の机の周りでお弁当を食べていた。 早乙女君は、食べる場所は違うけど、食べたらすぐに戻ってくるのだ。 郁美は、チラチラと遠くの早乙女君を盗み見ながら、落ち着かなかった。 あ、来た、どうしよう。 郁美はうろたえた。 いつ言おう・・・。 早乙女君が席に着いてから、一呼吸してから言おう。 大きく深呼吸してから、タイミングを計った。 ドキドキドキドキ・・・。 早乙女君が、背後で座る気配がした。 ど、どうしよう、今言うべきか・・・。 ドキドキ。 トントン。 えっ? 誰かが、郁美の背中をつついた。 まさか・・・、郁美がおそるおそる振り返ると、早乙女君が微笑んでいた。 「年賀状ありがとう。俺の届いた?」 「う、うん。私こそありがとう。昨日届いたよ」 「え?昨日?ごめん、出すのが遅れて」 「ううん、そんな、わざわざありがとう」 「いいよ」 早乙女君は、目を細めて微笑んだ。 郁美は信じられなかった。 あの早乙女君に話しかけられたなんて。 勇気を出してよかった。 郁美は、心からそう思った。
郁美は、きれいになりたいと思った。 もっともっとかわいくなりたい。 魅力的になりたい。 あの日以来、郁美は早乙女君と交流があるようになった。 佐和子のところに遊びに行くと、その後ろの早乙女君と目が合って、会釈するようになったのだ。 郁美は、早乙女君の、目を細める微笑が好きだ。 「佐和子どこに行ったか知らない?」 「さぁ、見てなかった」 早乙女君は、申し訳なさそうに、微笑んだ。 郁美は胸がキュンとなった。 せつないような、苦しいような、うれしいような、何ともいえない感情がうずまく。 「じゃ、待ってよう」 少しでもそばにいたくて、顔を見ていたくて、たいした用事じゃなかったけど、佐和子を待つふりをして、わざと声に出して言った。 早乙女君は、うなづくように伏し目がちに微笑んだ。 ああ、まただ・・・。 せつなくなるようなその微笑み。 その微笑みを見ると、好きという感情をもてあまして、胸が苦しくなってしまう。 だけど、もっともっと見ていたくて、郁美は見つめつづけた。 ふっと、早乙女君が顔を上げた。 視線が合った。 郁美はドキッとして、見ていたと思われるのが恥ずかしくて、慌てて目をそらした。 もういいかな・・・、と思った頃、おそるおそる早乙女君を見たら、まだ彼はこっちを見ていた。 郁美は、ドギマギした。 早乙女君はしばらく郁美を見ていたけど、ふっと微笑むと、また下を向いた。 ドッキ〜ン。 郁美は体中がしびれた。 なんだったの?今のは。 胸が苦しかった。 「まだ来ないみたいだから、帰るね」 郁美は、あまりの胸の苦しさに、そこにいることが出来なくなって言った。 早乙女君は顔を上げて微笑みながら、何も言わずに2,3度うなづいた。 ドキッ、ああ、またあの笑顔。 郁美はたまらなくなって、足早に去った。
その日のお弁当時間、郁美はいつになくボーッと早乙女君を見つめていた。 この頃の郁美は、早乙女君に対する思いをもてあまし気味だ。 何をするにも、早乙女君のことが頭から離れない。 好きで好きでしょうがないのだ。 1分1秒でも、長く見ていたい。 最近の、お弁当時間の会話は、もっぱら早乙女君のことばかりだ。 郁美がひっきりなしに、今日の早乙女君の様子を聞く。 今日は何の時間に、どういう問題を当てられて、どう答えたとか、休み時間に誰々とどんな会話をしてたとか、表情から、仕草から、とことん聞きまくる。 友達の話を聞きながら、チラチラと、郁美はせわしなく早乙女君を見ていた。 「キャッ、どうしよう。早乙女君と目が合っちゃった」 郁美はうろたえた。 郁美はどうどうと見ている割に、気は小さくて、こういうシチュエーションに弱い。 好きだってことがばれちゃうんじゃないかって、心配になる。 「そういえば、この頃思うんだけど、早乙女君って、よく郁美のこと見てるよ」 すみれが、思いがけないことを言った。 「えっ、ウソ。いついつ?」 「えっとね、郁美がさわちゃんとしゃべってる時とか、お弁当時間とか、いろいろ」 「どんな感じで?」 「どんなって、よくわかんないけどさ」 「なんだこいつ?みたいな感じじゃなかった?」 「ううん、まさかぁ。そんな感じじゃないよ」 「うわぁ、これって喜んでいいこと??」 「だよぉ」 みんなに信じられないようなことを言われて、郁美はドキドキした。
郁美は、自分のクラスに戻ると、友達の弥生にさっきのことを報告した。 「郁美〜、これはもう、告白するしかないよ」 「え〜っ、いきなり何言うのよ」 「どうして、チャンスじゃん」 「とんでもないっ!そんなことできるわけないよ。それに今せっかく親しくなりかけてるのに、告白して気まずくなるなるなんて耐えられない」 「大丈夫だって」 「そんな、他人事だと思って〜」 「他人事じゃないよ。来月は運良く、バレンタインじゃん。チョコあげなよ」 「だ、だめよ」 「いいから。よーし、作戦を練ろう」 「もう・・・」 郁美は、弥生の強引さにため息をついた。 弥生は張り切って、話を進める。 「いい、バレンタインまであと1ヶ月あるんだから、それまでに早乙女君ともっと親しくなるんだよ」 「はぁ、、」 「郁美は、ふられた後の気まずさが嫌なんでしょ。だったらとにかく仲良くなっといて、もしふられそうになったら義理だったことにすればいいじゃん」 「はぁ、、」 郁美は適当に頷いた。 「あと、もうひとつ、親しくならなきゃならない理由。バレンタインっていうのは、ある程度顔を知ってなきゃ、それはあげた、もらっただけの行為で終わってしまうんだよ。美少女でもなきゃ、進展はないと思ったほうがいいわ」 「はぁ、、ナルホド」 郁美は、今度は真剣に頷いた。 「それからさ、郁美の場合はちょっと脈ありだから、セーターも編みなさいよ」 「えーっ、ちょっと、編めるわけないって。脈もないない」 「あるってば、私が保証するから。男の人って、+αのプレゼントって喜ぶみたいよ」 「でも、セーターなんて・・・」 「じゃ、マフラーにすれば」 「そんな・・・」 「早乙女君のためでしょう、早乙女君のことを思いながら、一針一針編んでいくなんて、素敵じゃない?」 「うーん」 郁美は、早乙女君に似合う毛糸を選ぶ楽しさに惹かれて、マフラー編んでみようかなと思った。 郁美はさっそく、放課後毛糸を買いに行った。 何色にしよう。 郁美は何軒も行ったり来たりして、歩き回った。 気に入った色を棚に並べて考え込んで、郁美の編んだマフラーをして微笑む早乙女くんの姿を想像して、胸がドキドキした。 それから、郁美は一生懸命マフラーを編んだ。 そして、早乙女君と親しくなるように努力もした。 まだまだ交わす言葉は少ないけれども、最近では廊下で会った時など、お互いの存在を認め、微笑み合いながらすれ違えるようになった。 バレンタインは、あと1週間にせまっていた。
郁美が3組に行った時、また佐和子がいなかった。 窓から顔を出したまま、どうしようかと考えていると、早乙女君が顔を上げて、入ってきたら?と手招きした。 郁美はうれしくて、飛び跳ねるようにして、中に入った。 郁美は、佐和子の席に座って、早乙女君と向かい合った。 早乙女君が微笑んだ。 「やっぱり、教室の中はあったかいね」 郁美は胸がいっぱいになって、間つなぎに言った。 「いる?」 早乙女君が、ポケットからホッカイロを取り出した。 「う、うん」 郁美はあまりのうれしさと、信じられない気持ちでどぎまぎしながら、受け取った。 早乙女君のホッカイロ!!! 早乙女君のぬくもり!!! 郁美は嬉しさのあまり、どうにかなってしまいそうだった。 「それ、数学の宿題?」 郁美は心の動揺を隠すように言った。 「うん、そうだよ」 郁美はしばらく、早乙女君のしていることを眺めていた。 額にかかる、サラサラで、ストレートな黒髪。 シャープな輪郭、精悍な頬、どんなに見ていても飽きない。 郁美は深いため息とともに、見つめつづけた。 いきなり早乙女君が顔を上げて、郁美を見た。 ドキっとした。 「あのさぁ」 早乙女君がふっと微笑んで、思い切ったように言った。 郁美はなにか気に障ることでもしてしまったんじゃないかと不安になりながら、身を乗り出した。 「今度の日曜日、映画に行かない?」 「えっ」 郁美は、自分の耳を疑った。 「チケットが2枚手に入ったんだけど、一緒に行かない?」 ウソ・・・。 「私?」 郁美はおそるおそる尋ねた。 早乙女君は軽く微笑んでうなずく。 「でも、この映画興味ないかな?」 「あ、ある。あるある、行きたい!!」 郁美は息せき切って答えた。 「よかった、断られたらどうしようかと思った」 早乙女君はホッとしたように肩で息をつくと、うれしそうに思い切り笑顔を浮かべた。 郁美は、突然の出来事に、胸がドキドキ鳴りっぱなしだった。 目の前で起こった全てのことが信じられなかった。 夢を見ているようだ。 映画・・・、早乙女君と映画。 土曜日、郁美が3組に行くと、早乙女君が「明日2時に、映画館の前」と言った。
10分前に着いたのに、早乙女君はもう来ていた。 「早かったんだね」 「早乙女君こそ、何時に着いたの?」 「俺も、今だよ。ね、映画始まるまであと30分あるみたいだけど、どうする?」 「じゃあ、時間までぶらぶらしない?」 「いいよ」 郁美たちは肩を並べて歩き出した。 郁美は幸せだった。 歩きながら覗くウインドウも、ビルも道も地面も空も、早乙女君と歩きながら見るもの全てが光り輝いて見えた。 映画館を出て、再び街を歩くと、さっき以上に何もかもが素敵に見えた。 「野崎さんはまだ時間ある?」 「うん」 「じゃあ、何か食べに行こう「 「うん、行こう!」 郁美たちは、スパゲッティのお店に入った。 郁美はきのこスパを、早乙女君はカルボナーラを頼んだ。 「おいしい?」 「うん。早乙女君のは?」 「おいしいよ、食べてみる?」 早乙女君はそういうと、あざやかにクルクルと巻いて、郁美に差し出した。 えっ・・・。 郁美は戸惑いながら、それを口に運んだ。 「野崎さんのも、一口ちょうだい」 郁美は、信じられない気持ちで、スパゲティをクルクル巻いた。 これは、郁美がいつも夢見ていた憧れの光景ではないか。 彼氏が出来たら、こんなことしてみたいっていつも思っていた。 それがこんなふうに実現するなんて。 それも、早乙女君と。 「食べないの?」 気が付くと、早乙女君が自分のを食べ終わって、郁美を見ていた。 「うん、なんだかもうおなかいっぱい。食べる?」 「えっ、いいの?」 早乙女君はうれしそうに郁美の分もたいらげた。 「早乙女君って、よく食べるんだね。そういえば、お弁当箱も大きいよね」 「えっ、見てるの?」 「あ、そういうわけじゃないけど・・・」 郁美がうろたえていると、早乙女君が微笑みながら言った。 「あのさ、俺がもし付き合ってって言ったら、どうする?」 「えっ」 郁美は一瞬自分の耳を疑った。 「も、もちろんOKよ。さ、早乙女君のような人に告白されて、断るわけないよー」 郁美は自分の気持ちを悟られまいと、冗談っぽく切り返そうとしたけど、あまりの動揺にどもってしまった。 そんな郁美の様子に早乙女君はクスッと笑って、真剣なまなざしで、郁美をみつめた。 「本気だよ」 郁美があまりの驚きで何も言えなくなっていると、早乙女君は郁美からフッと視線を外して目を伏せると、力なく言った。 「でも、野崎さんは俺のことより、池宮のことがいいんだよな」 「えっ、どういうこと?どうしてここで池宮君の名前が出てくるの?」 「だって、野崎さんは池宮のことが好きで、池宮に会いに毎日来てるんだろ、俺のクラスじゃそういうことになってるけど」 「ち、違うよ!私、池宮君なんか好きじゃない」 私の好きな人は、早乙女君あなたよ! そう叫びそうになる気持ちをぐっと押さえる。 「違ったの?」 郁美は必死にうなずいた。 「そっか、だから俺、映画に誘った時は、断られると思ったんだけどさ、OKしてくれた時はうれしかったよ」 「私、他の人を好きなら、早乙女君と映画なんか行かないわ」 「だよなー」 早乙女君は独り言のようにそうつぶやいてから、思い直したように顔を上げて郁美を見た。 「じゃあ、改めて言うけど、俺とつきあってもらえませんか?」 「本気で言ってるの?」 郁美はどうしても信じられなくて、尋ねた。 「本気だよ。年賀状貰ってからずっと気になってて、こないだやっと勇気を出して映画に誘ったんだから」 「実は私も、ずっと前から早乙女君のこと好きだったんだよ。年賀状出すのは勇気がいったんだから」 早乙女君は目を細めて微笑んだ。
「出ようか」 郁美たちは再び街を歩き出した。 「ねぇ、バレンタインのチョコいる?」 「もちろん」 「よかった。実はね、もう用意してあるの」 「なあんだ、じゃあ俺が急いで告白することもなかったんだ」 「えっ、だめよぉ。やっぱり告白は男の人からしてくれなきゃ」 「そういうもん?」 「うん」 2人は顔を見合わせて笑った。 「バレンタインの時は、チョコともうひとつあるから楽しみにしててね」 「えっ、キス?」 「バカッ、違うよ」 「なあんだ、俺、キスがいいなぁ」 「知らなかった。早乙女君ってエッチなのね」 「知らなかった?俺って超エッチなんだよ」 「もうっ、マフラーよ」 「へぇ、マフラーかぁ」 「うん、もうすぐ出来上がるの」 「ふうん、ねぇ、それ2メートルくらいにしてよ」 「えっ、長すぎない?」 「いいの。そんで、俺と野崎さんと、2人でぐるぐる巻きにして街を歩くの」 「うわ、、超ダサダサ」 「言ったな!」 「まじで?」 「まさか」 「ええっ、ホントはしてみたかったのに」 「まじで?俺、ひくよ」 「もうっ」 郁美がぶつ真似をすると、あははと早乙女君は身をかわした。 さっきまでとは違う幸せの風が、2人を取り囲んで、2人は仲良く歩き出した。
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