車は何も言わないのに、私の家の前に着いた。 覚えていてくれたんだ・・・。 たったそれだけのことがとてもうれしかった。 「ありがとう、楽しかった」 凌ちゃんの顔を見て、思い切り笑顔を作った。 凌ちゃんも唇の端を上げて軽く微笑む。 「この次はどうするの?また偶然に会えるのを待つの?」 「そうね・・・」 私は思いがけない凌ちゃんの言葉に驚きながらも、考えるふりをした。 乗り気な態度を見せたら、また彼が逃げていきそうで、これっきりになることにとても怯えていた。 「携帯鳴らせよ」 驚きとうれしさで声が出ない。 「書くものある?」 私がボールペンを渡すと、凌ちゃんは私の手のひらに番号を書いた。 「じゃ、またね」 私が車を降りると、凌ちゃんはさわやかに笑って、「絶対に鳴らせよ」と言って、車を走らせてクラクションを2回鳴らした。 走り去る車を見ながら、急に足が震え出してきた。 これでよかったのだろうか・・・。 運命の再会、待ち望んでいた再会・・・。 ずっとずっと空想してきて、その通りに接してみたけど、これでよかったの? 部屋に戻ってから、今日の自分のとった行動を思い返して、凌ちゃんとの甘い快楽を何度もたどって、眠れぬ夜を過ごした。
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