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コケティッシュな微笑み 作者:晶子

第4回   4
 だんだん会っていると、凌ちゃんはかなりの浮気性で、由美子に内緒でかなり遊んでいるということがわかった。
 よくもまぁこんなにバレないものだと思うくらい、彼の浮気はすごかった。
 私は、2人っきりでいる時に、本人から直接聞いたり、彼の周りの男友達や、偶然彼のことを知っていた私の友人から、かなりの噂を聞かされ、呆れ果てるのを通り越して、感心してしまうほどだった。
 だけど、その中で、偶然にも由美子の短大のクラスメートの子を凌ちゃんがナンパしてしまい、由美子にバレてしまったことがあった。
 当然のことながら由美子は激怒し、凌ちゃんを責めたて、凌ちゃんは必死になって
「もう2度としない、俺が悪かった。酔ってたし、今思えば、たいしてかわいくもない女だったのに、キスなんかして後悔してる」
と散々弁解の意を並べ立てて謝った。
 由美子からその話を聞いたときには、由美子はすでに愛情で彼を許し、「私達の関係は前以上に深まったの」とノロケられ、私はショックだった。
 今、2人の恋は、ものすごいスピードで深まっていて、もう由美子しか見えなくなっていて、そういう決心をしたんだと思った。
 きっと、私とのことも後悔していて、もう、うちに泊まりに来ることもないかもしれないと思った。
 けれども、よくよく話を聞いてみると、それは私と会う以前の話で、結局後悔とは、口先だけのことだったのだ。
 心の中で、はんと鼻で笑いながらも、心の底ではとても嬉しかった。
 由美子が「もう隠し事はしないでね」と言い、凌ちゃんが「してないよ」と答える。
 ひとつの浮気の全てを知って彼の浮気の全てを知った気分になった由美子が満足気にのろけるように話すのを聞きながら、私は妙な優越感に浸っていた。
 彼女の知らない彼の事を知っているという優越感に。
 不倫とは、こういう気分なのだろうか。
 私は、凌ちゃんのことをとても好きだとは思うけど、2人の仲を壊そうとは思っていない。
 彼が誰と付き合っていようと構わない。
 ただ少し、私にも愛情を分けて欲しいだけ。
 陰で愛してくれればそれでいい。
 それなら2人の熱愛ぶりをそばでポーカーフェイスで平然としていられる自信がある。
 しかし、私は凌ちゃんが不思議で仕方なかった。
 はたから見ていても、2人の恋は始まったばかりで、とてもラブラブでお互いに愛し合っているのがわかるのに、どうして浮気なんかするのだろう。
 彼女と会った直後に他の女に手を出すことが出来るのだろう。
 昨夜も、由美子と抱き合って眠り、欲求不満だったわけでもないはずなのに。
 何が不満だったのだろう。
 朝、布団の中で抱しめられた時、うれしいと思う反面、「えっ」と思ったのも事実だった。
 おもわず一瞬はねのけて、「また、何するの?私、由美子じゃないよ、わかってるの?寝ぼけてるの?」そう尋ねると、凌ちゃんは少し寝ぼけたようなハスキーな声で、「わかってるよ」と言った。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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