「真由美、今、暇?遊びに行こうよ」 突然由美子がやってきて、私はドライブに誘われた。 「今、凌ちゃんと一緒に来てるんだよ。一緒に行こうよ」 「えっ、3人で?私が行ったら、お邪魔なんじゃないの?」 「そんなことないよ。3人のほうが楽しそうじゃない」 私は戸惑いながらも、凌ちゃんが来てるということに一瞬ときめいて、また会えるということがうれしかった。 家の前にはフェアレディーZが停まっていて、中から凌ちゃんが手を上げた。 「後ろ狭いけど、ごめんね」 乗り込むときに由美子がそう言い、彼女の特権を見せつけられたようで、胸が痛んだ。 車は、夜景の見える公園に着いて、私たちは車から降りた。 柵にもたれながらきれいな夜景が目に染みて、涙が出そうになった。 今日会ってみたら、私の恋はすでに始まっていることに気づいて、気がついたら目で彼を追っていて、どうにもならない恋に、何度もため息をついた。 どうして私はこんなに凌ちゃんに惹かれるのだろう。 あんなことがあったから?それとも友達の彼氏だから? でももう、この走り出してしまった好きだと思う気持ちはどうすることも出来ない。 私はひたすら安全圏な女を演じて、無表情な無邪気さを装って、2人の後を、ついてまわった。 ドライブの後は、2人とも私の家に泊まることになって、由美子を真ん中にして、3人で川の字になって眠った。 次の日、由美子は学校に行くと言って、9時に起きた。 一緒に帰ろうと言って、凌ちゃんを起こすけど、彼はなかなか起きてくれなかった。 「凌ちゃん、寝起き悪いのよ」 必死に揺さぶるけど身動きしない凌ちゃんをぼんやり見ながら、このまま起きなければいいのにと思った。 「どうしよう・・・」 「寝かせとけば?私ならかまわないよ」 困ったようにつぶやく由美子に、私は何の感情も込めずに無表情に言ってみた。 「ん、じゃ、そうしようかな。ごめんね」 由美子はそう言って、あきらめて出かけていった。 由美子が行ってしまうと、思ったとおりの展開と、凌ちゃんと2人っきりという事実に胸がドキドキした。 凌ちゃんは、ぐっすり眠っていて・・・。 「私も寝るから、もう少しあっちにいって」 半ば計画的に、彼を押しやって、布団の中に潜り込んだ。 案の定、寝ぼけたように寝返りをうって、私は彼に強く抱きしめられた。 私はとっさに「やめて」と拒んだものの、心の底ではそれを強く待ち望んでいて、私たちは結ばれた。 コトが終わると、枕元で煙草を吸いながら凌ちゃんは、夢から覚めたみたいに少し怯えた顔で「このこと由美ちゃんには言わないでね」と言った。 「言うわけないよ、言わないよ」 「俺、いつ由美ちゃんにこのこと言われるかビクビクしてるんだ」 私の幸福感とは裏腹に、この後悔しているような凌ちゃんのセリフがとてもショックだった。 バレては困るほど、由美子を愛しているの? 結局男なんて、どんなに彼女のことを好きでも、浮気をするのだ、と私は冷めた頭で考えていた。 けれども、私の好きだという思いは、それを上回るほど強く、私はそんなセリフに傷つきながらも、とにかく彼と抱き合っていたかった。
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