2年前私たちは大学生で、私は大学の近くで一人暮しをしていた。 大学のまわりは安い飲み屋街になっていて、いつも飲んだ帰りに友達が泊まりに来ていた。 「真由美、今夜泊まりにきてもいい?」 その日も、いつものように酔っぱらった由美子から、ろれつのまわらない声で電話があった。 「いいけど、今どこにいるの?」 「居酒屋。実はまだ飲んでるんだ。何時になるかはわかんないんだけど、絶対来るから泊めてね」 「いいよ。でも明日、朝早いから、先に寝とくからね」 そう言って電話を切って時計を見ると、午前2時を過ぎていた。 中途半端な時間に起こされちゃったな・・・そう思いながらもう一度眠りにつこうとうとうとしかけたその時、玄関のチャイムが鳴り響いた。 由美子?と思いながらドアを開けると、そこには知らない男の人が立っていた。 誰だろう・・・、寝起きでボーっとしていてはっきりしない頭でいぶかしそうに首をかしげると、その男の人はハッとしたように 「あ、俺、由美ちゃんの友達だけど」と言った。 私の周りにはなぜかゆみこという名前の友達が何人かいて、私は思わず「どこのゆみちゃん?」と尋ねていた。 「あ、野田のゆみちゃん」 その人もつられたように慌ててそう言って、私はハッとして、「もしかして由美子の彼氏?」と尋ねていた。 「そう、由美ちゃん来てない?」 「ううん、まだ来てないよ。来るとは言ってたけど」 「駐車場のところで待ち合わせしてたんだけど、まだ来ないんだ」 「待ち合わせしてたんだ」 「うん、じゃ、来てないんだったらまた見てくるよ」 そう言って、彼は行ってしまって、すぐ布団に入ってウトウトしかけると、またチャイムが鳴った。 今度こそ由美子かな・・・そう思ってドアを開けると、いたのはさっきの由美子の彼氏だった。 「どうしたの?由美子まだいなかったの?」 「うん、まだみたい。あのさ、由美ちゃん来るって言ったんだよね、だったらさ、外寒いからここで待っててもいいかな」 「いいよ」 私は由美子の彼氏という安心感もあって、あっさりとOKして中に入れた。 待ち合わせてたくらいだから、由美子もすぐに来るんだろうなと思い、まさかほったらかして眠るわけにもいかず、私は彼の話し相手になっていた。 彼はとっても気さくで人なつっこくて初対面だと言うのに全然緊張せずにすんで、まるで昔から知り合いだったかのように話は弾んだ。 由美子から彼氏が出来たと聞かされたのは去年の暮れぐらいだった。 それから今日まで何度も会わせるからねと言われ続け、数々のノロケ話を聞かされていたあとなので、初めて会ったような気がしなかったのかもしれない。 ずっと尽きない話をしながら、由美子いい人みつけたねーなんて思った。 彼と話していると時間を忘れてしまって、由美子遅いね、と見た時計が午前4時を示していたのを見て、私は朝が早いことを思い出して、あせり始めた。 「ごめん、私もう寝るね。明日朝早いの忘れてた」 「もう寝るの?淋しいじゃん」 そう言って彼は口を尖らせたけど、私はとにかく明日が気になって 「ん、でももうすぐ由美子くると思うよ」 そう言って有無を言わさず布団に入った。 「じゃ、俺も寝よっかな」 あ、それならよかった・・・私も気兼ねせずにすむ、そう思ってホッとすると彼は何を思ったのか私の布団の中にもぐりこんできた。 「何してんのよ。いやだ、入ってこないでよ」 私が驚いて身を硬くすると、彼は全然悪びれるふうでもなく 「いいじゃん、寒いから」と言った。 「いいわけないでしょう。そっちで寝てよ。布団あげるから」 「やだよ。淋しいもん。じゃ、俺はこっち向いて寝るから、君はそっち向いて、離れて寝ればいいでしょ」 私は、さっき話した時点で、彼に好感を抱いていたから、まぁいいかと思って 「じゃあ、絶対にこっちに来ないでよ!」 と言い放って、壁側を向いて眠った。 しばらくジッと目をつぶっているとしだいに睡魔が襲ってきて、夢と現実の狭間にゆらゆら揺られながら眠りに落ちようとしたその時、私は突然背後からガバッと抱きしめられた。 「何するの?」 私は夢うつつの世界から現実に引き戻されて、ビックリして叫んだ。 彼の腕から逃れようと必死にもがいたけれども、私は抱きしめられたまま身動きがとれなかった。 「何考えてるの?私由美子の友達なんだよ。こんなことしていいと思ってるの?今私にせまらなくてももうすぐ由美子来るじゃない。そのあと彼女とエッチでもなんでもすればいいでしょう。もう、離れてよ」 私は必死に言葉を並べたてて彼に抵抗した。 「怒った?」 彼はそう言って、力を緩めた。 「怒った!!」 私が力強くそう言うと 「ごめん、もうしないよ」 彼はしおらしくそう言って、私から離れた。 ホッと胸をなでおろして、うとうとと眠りにつこうとした時、私は再び背後から抱きしめられた。 そして、その手が追い払っても追い払ってもしつこく私の体にまとわりついてきて離れようとしない。 私はだんだんどうでもよくなってきて、彼の手の動きはだんだん眠りを誘う心地良い動きにしか思えなくなってきて、されるがままになっていた。 しばらく単調な動きが続いていたけれども、ゆらりと彼の上半身が動いて、私はキスをされそうになった。 「やめてよ」 私は目を開けて、強くはねのけた。 「もう、眠れない。おとなしくしててよ。この手は何?触わんないでっ!」 語気荒く言い放ってクルッと背を向けて体を丸めて彼を拒否したけど、彼は少しも動じるふうではなく、手は腰から太ももへ伸び、そして、私の大事な部分に伸びようとしていた。 「やめて。今生理中だから」 私は慌ててその手を払いのけて、女のとっておきの言い訳を言ってみた。 よほど嫌いな相手でない限り、ここまでくれば流されてしまう。 私の中で、初対面だということ、由美子の彼氏だということが引っかかっていて、必死にここでくい止めた。 「服の上からならいいでしょう」 「いいわけないでしょう」 私の必死の言い訳も、走り出した彼の興奮を止める理由にならず、しだいに息を弾ませ、私に自分のモノを握らせた。 あえぐ吐息の隙間から、「真由美に入れたい」とささやく声を不思議な思いで聞きながら、彼は自分でフィニッシュを迎えた。 それと同時に彼の興奮も次第におさまってきて、私たちはあたりまえのようにひとつの布団に入って抱き合って眠った。 明け方けたたましく鳴り響く玄関のチャイムで目が覚め、由美子だ、とっさにそう思って、彼を起こして服を着させて、その辺に寝っころがせた。 わざと寝ぼけた顔で由美子を迎え、またわざとらしくすぐに眠ってから、起きて、 「あんたたちは好き勝手してていいからね」 と言い残して、学校に行った。 授業中、私はなぜか、夕べのことをずっと思い出していた。 明け方のあの抱き合って眠ったぬくもりがとても心地良いものに思えて、だんだん彼のことが気になりだしてきて、思い出せば思い出すほど彼に惹かれていく自分をどうすることも出来なかった。 けれども、友達の彼ということが引っかかっていて、苦しい恋の予感がしていた。
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