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コケティッシュな微笑み 作者:晶子

第12回   12
 凌ちゃんと会った次の日は、あっという間に時が過ぎ一日が終わる。
 凌ちゃんと過ごした時間が鮮やかに思い出され、幸せの真っ只中にいるような気分になる。
 けれども、2日目3日目以上になると、思い出はどんどん過去へと流れていき、私は曖昧な関係に、これっきりになってしまうのではないかという不安で、胸が押しつぶされそうになる。
 曖昧な関係の時は、会わない時間が長ければ長いほど、相手へ思い入れる気持ちが大きくなる。
 会いたい、会いたい・・・。
 連絡を取りたいけれども、間隔が短すぎると、凌ちゃんに疎まれるんじゃないかと思って、携帯を鳴らすのをためらってしまう。
 まだもう少し距離が縮まるまで、私から行動に出すぎてはいけない。
 いくら凌ちゃんの前で悪女風に装ってみても、私はまだ過去の失敗を恐れて、勇気を出すことが出来なかった。
 頻繁に会って、自分を売り込んで、情を移らせる、そんな例がいくつもあるけれど、私にはその作戦は無理だった。
 もしもあんな過去がなければ、私は素直に彼に飛び込んだかもしれない。
 再会をチャンスに、しつこく連絡を取り、毎日のように会おうよと無邪気に誘って、彼の日常を自分のペースに巻き込んで、彼を離さなかったかもしれない。
 けれども今の私は、過去の過ちに縛られて、あの時ああやって曖昧に思いを知られて、曖昧に避けられて別れを迎えてしまったばかりに、またしつこくすると凌ちゃんがあの時と同じように私の存在を重たく感じて去って行ってしまうような気がして怖かった。
 私から連絡するには、1週間から10日程の間隔が必要だった。
 短すぎも長すぎもせず、少しだけ会ったほとぼりが冷めて、元気?と相手の近況を伺える期間。
 その頃に連絡を取って誘い出す。
 それが、私の最善の計画だった。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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