化粧して、髪を結ってみてめがねをかけて、おまけに三枚も上着を着込んでみる。それでもまだ、自分を隠しきれていない。自分という自分をさらけ出したくないのに、こんなに自分を隠してるのに、みんなみんな、あたしを前へ前へと引きずり出す。失敗した自分も笑えてない自分も、ぐしゃぐしゃの泣き顔も全部全部。あたしのすべてを見せて、何が楽しいんだか。
途方に暮れて、ふと、空を見上げる。いつのまにか藍色が広がっている。その中に点々と小さな灯りが点っている。真っ暗。もう夜だ。
ふと気づく。たまに自分の吐く息が白い。だけ。それだけ。 それだけ見えた。ちょっと嬉しい。
あたしはガキみたいな顔して、その場に寝っ転がって、永遠に広がっているベタな空をぼーっと見上げてみた。どんな顔だって?どこに寝転がってるだって?そんなのあたしは知らない。みんなだって知らない。だって夜は何も見えないんだから。
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