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作者:快新平

最終回   飲み続けること。
 私が今、病気を治すためにもらっている薬は、かなり長い間、飲まなければならない。



 もともと、精神的な病気であるため、治すのにはかなり時間がかかる。少なくても1年長い人は10年以上、この病気と付き合っているのだそうだ。
 その際、切っても切れない縁にあるのが、「薬」の存在だ。一種の精神安定剤、その類のものを闘病の期間、飲み続けなければいけない。



 私も、この病気で薬を飲むようになって1年近くたつが、最初の頃、薬を飲むのには、かなり抵抗があった。
 普段はいたって健康なのだ。だが、鬱や不安になると、薬が必要になる。鬱な状態や、不安な状態から逃れるために飲み始めた薬。けれど今は、鬱や不安な状態にならないために飲んでいる。しかも、治ってきても、薬が切れると不安になったりするから、薬の量をゆっくり減らしていくのだ。


 飲まなければならないのはわかっている。でも、今でも時々嫌気がさすことがある。こういう薬は、劇的には効果が出ない。そのために余計に不安がつのるのだ。
 そんな私を勇気付けてくれた1つの言葉がある。




 「風邪を引いた時は薬を飲むでしょ?だったら、今は、心の風邪を引いていると思いなさい。風邪を引けば、心だって、薬が必要なのよ。」



 今でも、薬はちゃんと飲んでいる。白い錠剤が3つ。今日もこれを飲む。
 けれど、この病気の薬はこれだけじゃない。みんないろいろな方法で元気を取り戻していくのだ。



 薬は、補助手段だ。病気を治すのは患者自身。
 実は患者の心自体が薬なのかもしれない。



 薬を飲み続け、いつか元気になった日には、私も誰かの薬になれたらと思う。誰かの心の「薬」に・・・。

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