■ トップページ  ■ 目次  ■ 一覧 

愛すべき人のために・・・。 作者:快新平

最終回   好きになった人。
 テレビの向こうにうつる、1人の芸能人。

 あ、彼だ。

 彼がうつるたび、私の心は踊る。




 彼と出会ったのは去年の秋頃。その頃の私はひどく落ち込んでいて、精神的にもかなり荒れていた。
 そんな時、彼と出会った。彼は、テレビの向こう、物悲しげな表情で喋っていた。

 最初は、なんとも思わなかった。最近、こういう人が人気なんだ、程度で。
 でも、だんだん彼がテレビに出るたび、テレビに視線が行く私がいた。彼の言葉に、耳を傾ける自分がいた。彼のすべてに、心惹かれていく自分がいた。





 今では私は、すっかり彼のとりこだ。
 彼の出るテレビ番組をチェックし、雑誌を読み、ファンレターも送った。
 
 いつの間にか、彼は私の生活の一部になっていた。




 そして、彼の本を読んだ。いじめられっ子だった幼少期。人間不信な性格。なんとも私そっくりじゃないか。その本のあとがきに、彼の言葉が添えられていた。

 あきらめないで

 その言葉に、私はどれだけ励まされた事か。彼の言葉が、私の暗闇だった心に、一筋の光を射してくれたのだ。




 今日もテレビにうつる彼。スポットライトに照らされて。そのスポットライトは、私の心まで照らしてくれた。
 好きになってしまった。いつのまにか、彼を。
 でも、彼はテレビの向こうの人。不毛な恋。
 だけど、彼の言葉は、私を何度も、何度も、励ましてくれた。
 だから、せめて、そのお礼くらい言いたい。
 だから

 だから明日。彼に会いにいこうと思います・・・。

■ 目次

Novel Editor by BS CGI Rental
Novel Collections