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振られ男の戯言 作者:品川紗子

最終回   振られ男の戯言
ここ一週間、僕はまったくついてない。
あーあ、全く、クソッ!

全ての運の尽きは彼女に振られてからだ。
3年も付き合ってた女と別れると、何かが足りなくなった感じがする。
「ここまで付き合うと別れるのがもったいないね」
なんて、無責任な友達は口々に言うけど、別れを決めたのはどっちみち僕じゃない。
まぁ、そうでなくてもこうなるだろうとは思っていたけどね。

最近急に調子悪くなってさ、と言うと
「今までいた女がいなくなったからさ。また早く作れよ、合コンでもやる?」
と瀧がチャリにまたがって煙草を咥えながら言っていた。
合コンははっきり言って好きじゃない。
なんというか、あの雰囲気に馴染めないんだよね。
だから、ん〜って困っていると大橋がケロッとした顔で、
「ところで、何で振られたの?」
と言う。
まだ傷心の僕は言葉に詰まったけど、
「要するに、飽きたんだってさ」
と、溜息混じりに。
もちろん二人は大爆笑。
ケッ、何とでも言いやがれ。
そう嘆くと二人はごめんごめん、と笑いを堪えた。
すると大橋がまだ笑顔を残しながら、
「じゃあ、あんたは?」
と尋ねる。
「あんたはって?」
「だから、あんたはまだユキのことが好きだったの?って聞いてるの」
やっと話を理解して考えた。
「んー、どうだろう…でもなんかユキがそばにいるのが当たり前になってたから、別れるとやっぱ寂しいかな」
僕が下を向き、笑いながらそういうと、
「ばーか。普通その程度ならとっくに浮気してんよ」
「三年も一人の女に尽くすって…愛だよねぇ」
二人はそうやって言うけど、僕は元々プレイボーイでもないし、そういう女がいるだけで満足だったのだ。

誰か紹介しよっか?と大橋が携帯を取り出したけど、僕はまだそんな気分にはなれなかった。
多分紹介されても違和感があってたまらないだろうと思ったからだ。
言っとくけど、ユキと付き合ったのは彼女からの告白がきっかけ。
彼女は可愛いって雰囲気でも特別美人なわけでもなかったけど、どことなくミステリックで、僕にとってはとても魅力的だった。

瀧は女と別れるとすぐに誰か紹介しろよと皆に言って回る。
女とのいい思い出がないらしい。
例えあったとしても別れる頃には忘れたい過去になっているのだ。

僕たち三人の中で唯一女の大橋は、別れを切り出すには勇気がいると言ってたけど、ユキからはそんな感じが全く伝わらなかった。

冷たい女だとか、口では色々ユキのことを悪く言ったが、楽しかった事が頭の中をぐるぐる回って僕を苦しめる。
こんなことってないよ。
日が経つにつれて、彼女が愛しくなってくる。

でも飽きたって理由で振られたんだし、追っても自分が惨めでかっこ悪くなるだけだ。
僕は彼女とのペアリングを見つめた。
シルバーリングで、内側に僕の名前と彼女の名前、それと『Forever Love』という文字が掘ってある。
何がフォーエバーだ、ったく。
もったいないので一応とっておこうと思っていたが、彼女を忘れる為に川の中へ思い切り投げ捨てた。

今度彼女が出来ても、結婚するまでペアリングは作らない。
サンダルくらいならおそろいでもいいけどね。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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