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好きだって言えない 作者:品川紗子

最終回   好きだって言えない
一年生の時からずっと片想いしてた亮太に告白され、付き合い始めて3ヶ月。

あたし達は見た目、余りアツアツではない。

というか、あたしが一方的にそう言う方向に持っていかないだけなのかも。








亮太とは三年間同じクラス。

奴は馬鹿でアホで明るくて気さくで、みんなの人気者。

おまけに犬みたいに可愛い。

「こりゃ、お前何黄昏てんじゃボケッ」

机で頬杖つきながらボーっとしてたあたしの頭をプリントらしき物でパシンと叩く男。

「ひえー」

と、リアクションとってあげたのに横目で

「ばっかじゃねぇの、何『ひえー』って・・・キモ」

だって。

「うるせー黙りやがれ」

ほっぺを膨らませると、そのほっぺを突きながらしゃがんで上目使いで誘う。

「ねぇ今日さ、僕ん家にレッツゴーしません?」

「うげー」

って舌を出した。

「嫌なんですか」

「嫌じゃないけどさー」

「じゃーいいじゃんかぁー」

子供みたいに、行こーよぉって駄々こねるから、まぁいいけどって言ってあげた。

ホントは結構嬉しかったんだけどね、なんちって。















放課後になって、すぐにあたしの名前を呼んで

「まさか忘れてはあるまいな貴様ー」

と見つめてきた。

「何だお前、気持ち悪」

ホントにこの男は、何キャラだよ。

「俺ん家行くんだろ?どっち?」

袖を掴んで、ねーねーって左右に振る。

これが身長174センチの男がする態度かい。

「わかったよー行くよ」

って言って、ぱぁっと明るい表情に早変わり。

茶髪でピアスして整った顔して、その可愛さは絶対罪。















自転車二人乗りして、亮太の家に向かった。

25分くらいかかるって。

途中でDVD借りて観ようって言うから、ムードある雰囲気にしたいのかな・・・と思ったら普通にアクションコメディ借りてた。

計算のない男だな・・・。

それからコンビニに寄ってお菓子とか飲み物とか買ってってまた自転車を走らせた。

しっかり掴まってろよって彼は言うけど、あたしは自転車の荷台の先を掴むだけ。

「俺に抱きついていいのに」

ってニヤニヤする彼に、強がって

「ヤダよーん」

って、可愛くない事言ってしまう。

あぁ・・・私ったら馬鹿者め。

「ねぇねぇ」

「なんだい亮太君」

「好きだよ」

「・・・何急に」

「今事故りそうだったから言ってみた」

「怖!!」

「危機一髪ですね」

「お前が言うなー」

そんな話を笑いながら言い合ってたら、そういえばさぁ・・・って奴が話し出した。

「お前俺に好きって言った事無くない?告ったのも俺だしさぁ・・・」

「・・・そお?」

ギクッとした。

あたしが好きって言った事ないの知ってたのか。

「何で?俺のことさぁ、好きじゃないの?」

「・・・ううん」

「じゃあ言ってよ」

「やだよ」

「あっそ、じゃーもういいよ」

怒ったのかな、でも何も言えない。

てゆーか、気付けよ。

二年ぐらいずっと片想いしてたのがやっと叶ったのに、いきなし好きって気持ち全部オープンにできないよ。

まだ片想いしてるみたいな時がある。

亮太が学校の女の子とノリノリで話してる時とか、すごい盛り上がってる時とか、さ。

それでちょっと落ち込んでも、すぐに気付いて

「どーしたんだおー」

って頭撫でてくれるからすぐに幸せになるから、いいんだけどさ。

好きって言えないのは、好きで好きでどーしようもないからなのに、怒るなよ。

バッキャロー!!

でも何も言わないあたしに

「俺はすっごいおまえの事好きなのにさ」

って奴が言う。

愛しい。大好き。

言葉のかわりにほっぺにキスしたら、また事故りそうになった。

危ない、危ない・・・。




















家に着いて、誰もいなかった。

ちょっと緊張したけど、笑い話ですぐ緊張が吹き飛んだ。

DVD観ながらお菓子食べてジュース飲んで・・・。

隣りに座ってる亮太の手を握った。

そしたら奴が、骨折れそうなくらい強く握り返してきた。

「いててて・・・」

「あはは」

「痛いわアホー!」

「すまぬすまぬ」

しばらく笑ってたら、奴がサッとあたしにキスした。

嬉しくなって、ふふって笑うと

「気持ち悪い顔」

って言われた。

「好きなくせに」

「お前もな」

なんだ、わかってんじゃん。

だからあたしからもキスをあげた。







それから家にいた間中ずっと手を繋いでたのは二人だけの秘密。




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Novel Editor by BS CGI Rental
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