「ただいま〜」 帰宅、僕は家に帰ると声を掛けた。ぱたぱた、と奥のほうからあわただしそうに母さんがやってきた。 「お帰りなさい、大丈夫だったっ!?ケガとかしてない?」 「ちょっ、母さんいきなりだね。大丈夫だよ、大体初日にケガなんてしたことないでしょ僕は」 「でも、今回のお話だと結構こずるい人がクラスにいるって話だったから、ちょっと心配で・・・・」 「大丈夫だよ。それよりも、父さんは?」 僕は母さんの手をどかすと靴を脱いであがった。 「奥で待ってるわ。結果が知りたいんですって」 「うん、わかったよ」 僕はそのまま茶の間へ移動するとふすまを開けた。そこには正座をして構えている実の父が待っていた。 「帰ったか」 「うん、ただいま父さん。結果を教えるね」 「ん」 「問題を起こしているのは城ヶ岬 修一郎。電化製品メーカーの城ヶ岬グループの会長の息子。金と権力で自分を誇示して、クラスメイトを一人いじめてる」 「そうか」 「とりあえず、そのいじめられてる子と友達になったよ」 「お前は、それで良いのか?」 「うん、だって心の底から友達になりたいって思ったんだもの。僕は自分の意見を曲げたりしないよ。で、その子をいじめから開放するのと、城ヶ岬を負かすのが今回の目的だね。大丈夫、今回もちゃんとやるよ」 「・・・・そうか、母さんの若い頃と同じで、口と頭と元気だけがとりえだからな、お前は」 「あ、ひっどいなー。父さんに教わって格闘技もやったじゃんか、そりゃあ父さんみたいに才能はないけどさ・・・・」 「アレは才能じゃない。呪いのような者だ」 「ああ、まあ、そうだね。者っちゃ者だね」 僕は小さく頷いた。 「それじゃあ、僕は勉強があるからこれで、今回は勉強もちゃんとやらないと大変だよ本当にさ」 「母さんのように、巧くやるんだな」 「はいはい、じゃね」 僕はさっさと立ち上がって部屋を出た。まったく、子供に自分たちの仕事を押付けるなんてどうなってるんだかね、この家は。まあ、請負の仕事をしている以上、仕方がないか。答案たちは別の仕事もあるしね。 「どうだった、お話は?」 「うん、とりあえずまだ様子見。たぶん明日あたりから何かされると思うけどね」 「ごめんなさいね、母さんたちができればよかったんだけど・・・・」 「ううん、適材適所。学生問題で請負があるのなら、僕が出るしかないもの、大丈夫だよ。将来はちゃんと家業を継ぐからさ」 母さんはもう一度ごめんね、と僕に言う。ほんとうに、子供に甘いんだから。まあ逆に父さんは冷たいのかな?本当に極端な夫婦だよね。若いころの二人は、一体どんなだったんだろうね。
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