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探求同盟 −未来編− 桐夜輝の日常 作者:光夜

第5回   5
「お前、今なんて言った」
「君の提案は断るって言ったけど?問題でもあった?」
「問題だと・・・・。お前に選択権があるとでも思ったのかっ」
ばん、と一歩前に出た城ヶ岬は僕の机をたたく。
「君は、僕に選択肢が無いとでも思っていたのかい?」
「決まっているだろうっ。お前に選ぶ権利はない、ここのルールは俺なんだよ!てめぇは大人しく俺の言うことを聞いていればいいんだっ」
自分を親指で示して彼は怒鳴る。整っているとは到底いえないつくりの顔、不摂生な生活を送っているのか、肌は粗く、ニキビの後も見える。引きつった顔はまさに悪代官のそれだった。
「決まってはいないよ。聞いたでしょ、みんなもそうなのかなって。と言うことは自分で決めたんだよ、君に従うって。なら選択権を渡したのと同じさ。だから、僕は否定するほうを選ぶよ。僕の生活は僕のだし、人生もまた、ね。だから、君に従って制限される必要性は、ないよ。それに―――」
「あ、あの・・・・お昼か、買ってきました・・・・」
あらぬ方向からのこえ、全員がそちらを向くと、気弱そうに砂野という生徒が袋を持って立っていた。
「あっ?んだよ砂野、おせぇんだよっ!」
城ヶ岬の取り巻きが割って入った砂野に蹴りを入れた。持っていた袋を手放し、床に倒れてしまった。僕と城ヶ岬の問答もあり、取り巻きはいらだっていた。それが怖いのか、ごめんなさい、と彼は死にそうな声で謝っていた。
「城ヶ岬君」
「・・・・なんだ」
「彼も、君に従うと言ったのかな?」
「当然だ」
「ふーん」
僕は立ち上がって砂野のところへ歩み寄った。彼は震えて床に顔を落として、とても怖がっているようだった。彼の隣にしゃがんで、ぽん、と肩に手を置くとびくりと、体が跳ね上がる。
「大丈夫だよ、僕は蹴ったりなんてしないからさ。君、名前は?」
「あ、えっ・・・あ、あの、その・・・・」
「名前は?」
「す、砂野、ま、こと・・・・です。まことは、し、真実の真で、まこと・・・です」
砂野 まこと。砂野―――真。なるほど、悪くはない。
「真、か。僕は桐夜 輝。輝でいいよ、よろしくね」
「え、あ、あの・・・・」
「おい、転校生。無視すんじゃねぇよっ!城ヶ岬さんの話を聞きやがれ!」
取り巻きの一人が怒鳴った。僕はやれやれと立ち上がり、彼に振り向いた。
「ああ、そんな話もあったね。最後まで言わないと、失礼かな」
「お前、本当に俺に従わないのか」
「従わないよ。従う相手くらい、僕は自分で選ぶもの」
「俺を敵に回して、後悔しても知らないからな。痛い目を見るぞ」
「痛い目ね。この砂野君のように、かい?」
「・・・・」
この会話の矛盾、砂野君も従っているのに、まるで別物扱い。彼は、良い様に使われているのだろう。
「ま、いいや。君には従わないから、僕の処遇は勝手にやってよ。それと、もうひとつ、僕はね、その学校での友達は一人しか作らないんだ。だから、従うとか、従わないとか、どうでもいいよ」
僕はもう一度砂野君の隣にしゃがみこむと、肩を持って宣言した。
「僕の友達は、砂野 真君だよ。君は、身の程を知ったほうがいいよ」
ばん、と城ヶ岬は僕の机を殴りつけ、教室を出て行った。振り返ったとき、教室中の生徒たちは、僕を白い目で見始めた
それは、開戦の狼煙だった。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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