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探求同盟 −未来編− 桐夜輝の日常 作者:光夜

第40回   40
 「大塚って、確か警視総監の名前が大塚。でも、法を行使する団体の最高責任者がこんな若いわけ」
 「いや、確か警視総監の入れ替わりのときに前任者の孫がなったという話があったはずだ。最年少で警視総監になった男。確かそれが今の警視総監、その名前は確かに大塚。まさか」
 「まさか・・・・」
 場の空気が一転してあり得ないことになってきた。城ヶ岬の父親もその顔色があり得ないくらいになってきていた。まあ、当の昔に積んではいたんだけどね。
 「だいたい察しは済んだかな?まあそのとおりだ、大塚綺羅春―――――警視庁総部門総課監視役最高責任者、それがここにいる、俺だ!」
 ばん!と懐から取り出した警察手帳を高々と掲げて宣言する国家公務員最高指揮官。好きなテレビ番組―――――水戸黄門。
 「で、その上役って誰ですかねぇ?ちょっとそういうことできないように、懲らしめないといけないんでね」
 「あ、あんたは・・・・」
 「ってことで、なんか面白い捕り物が出来るってんで立会人になったわけよ。一部始終じっくり見せてもらったわ。いやぁ、元虐められっ子の俺が出来ることって言ったらこうして正義を守り抜くことだけだからなぁ。特に、大手企業や官僚たちの犯罪って見つかり難いんだよなぁ。
 ってことで、今回の大きな捕り物はこっちとしてもいい成果となった。こうなれば、俺はあんたらの今まで犯した罪を洗い出して、全てに当てはまる罪状をはじき出してしかるべき処置を施させてもらう!」
 と、大塚さんは胸を張って宣言する。城ヶ岬の父親はもう青い顔を通り越して脂汗が吹き出て、死にそうな顔だった。
 「・・・・お前、ずるいわ、こんな強力な手札」
 「君ほどじゃないよ。僕は、ずるいのが嫌いだからね」
 息子の修一郎も、もうだめだと頭を抱えていた。彼に罪はない、彼の性格を決定させたのは父親の暴力的なしつけだったし、それが彼を間違った生き方にしてしまった。だから彼が絶望することはない、子供の間違いは親の責任だ。
 「と、まあ啖呵を切ってみたものの、俺はあくまで立会人で、獅子身中の虫をあぶりだせればいいんだよな。ああ、あと教育委員会の副委員長?賄賂をもらうのは良くないわぁ。あっちの委員長、俺たちの同級生なのに部下の監視が弱いなぁ。って俺もか、うははは」
 警視総監、そんな肩書きを微塵も見せない態度で大塚さんは笑った。そして、僕の両親を見た。
 「あくまで俺は立会人、まああんたらの罪をただ裁くのなら誰だって出来る。だが、俺の恩人は心が広いからなぁ。情状酌量、そういうものがないわけでもない。ってことで、そちらのご両人、俺も正体ばらしたんだから、そっちも正体晒しちまえよ」
 「いや、それはちょっと」
 「構わない。現実とはこういうものだということを、教えてやれ」
 父さんが静かに、母さんへ宣言した。母さんは、父さんの言葉を受けて母さんはこほんと一つ咳払いした。
 「とりあえず、大塚君の言うとおり、場合によっては情状酌量。でも、どうしてそんなことが出来て、そんな権限をこちらが行使できるか。それは、『僕』たちが警察に認められた機関だからです」
 「警察、公認・・・・?」
 「息子の名前は、桐夜輝、家内の名前は桐夜アカネ、俺の名前は桐夜コウジ。だが、それは通常の生活をする上での偽名だ」
 父さんはさも当然のように、偽名だと口にした。そう、僕の名前も家族の名前も、それは偽名。真は、僕に言葉を求めた。
 「ごめんね、全部終わった後に教えようと思ってた。でも、こうして教えるのも、順序は違わないから。僕の本名は―――――」
 「我が家の名は、八神。当主である俺の名前は光夜、妻は明、息子の名前は」
 「八神 光(アキラ)。父さんの字と、母さんの発音をもらって、光と書いてアキラ。それが、僕の本名だよ」
 「アキラって言う音は、変わらないんだ。なら、良かった」
 真はほっとして、僕の肩に首を預けた。
 「八神、ヤガミ―――――まさか、お前たちは・・・・」
 「気づいたな。世の中で名前数多くあれど、八神という名前に意味合いを持つのはただ一つ。
 総合請負調査組織―――――『探求同盟』とは、この家族が運営する組織だ!」
 と、なぜか大塚さんが口上を述べてしまった。でも、そのとおり、うっかり名前を出せば誰もが警戒してしまう謎といわれる調査組織。元祖は学校の隅っこで活動していた『書籍同好会』から始まったその組織、『探求同盟』が僕のいる、僕の家族の場所だ。
 僕の両親は学生の頃から記録に残っている、残っていない、消されてしまった、そんな多くの事件を解決してきた組織。
 人形使い事件、
 開かずの扉事件、
 死体隠し事件、
 桐嶋 明拉致事件、
 通り魔事件、
 爆弾男事件、
 多くの事件を二人は解決し、僕という跡取りが出来てからも二人の活躍は衰えなかった。警察も何もかも巻き込んで、母さんの言葉一つで、事件は迷宮になることすら、許されなかった。
 それが『探求同盟』、名前を出せば今なら、すぐにでも相手は降参してしまうであろう組織。だが母さんも父さんも、自分の力で解決することを前提として、最後の最後まで、その名前は口にしなかった。
 「あ、ああ・・・・・」
 城ヶ岬の父親は、がくん、と力なくひざから床に崩れた。逃げられない、この組織の前では、絶対に逃げられないのだから。
 「で、そちらの処遇についてですが、とりあえず罰金ということで、いいですよ。その代わり、戦国グループの吸収中止とこれまで犯した罪の公開、お子さんへの再教育、こちらから観察員を派遣しますので指示に従ってください。それで、今回は終了です」
 城ヶ岬の父親は既に声も出なくなっていった。そして、返事のない相手に母さんは更に続けた。
 「ということで、もしまた同じようなことがあれば、大塚君やその他の機関を通さず、個人的に潰しに行きますから。そのつもりでお願いします。結構簡単なんですよ、頂上でえばってる人間を無一文で社会に放り出すのって、『僕』は、嘘はつきませんから」
 と、最後に笑顔を向ける。それが、終了の合図だった。
 「・・・・は、はい、以後、でしゃばったまねは、つ、つつしみます・・・・」
 城ヶ岬グループの裏事情―――――解決。



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Novel Editor by BS CGI Rental
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