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探求同盟 −未来編− 桐夜輝の日常 作者:光夜

第35回   35
 さて、ここからはしばし子供のけんかは置いておくとしようと思う。なにせ、今回ばかりは子供同士のあれこれそれで解決できるような物ではないから。どう考えてもろくでもない大人がろくでもないことを考えている、それじゃあ子供のけんかなんて終わろうことがない。
 大人が出てきてしまっては、力の劣る子供ではなんの役にも立たない。本当にろくでもない現状がある状態だ。だから、こっちも大人を使うしかないんだよ。本当は、こんなことは僕は嫌いだし、僕が解決するとはとても言えない。
 だから、今回は家族として僕らは解決しようと思う。それじゃあ、とりあえず僕らは授業をしている裏で、何が起こっているのか、始めてもらおうよ、ね。
 「説明会以来ですね。お久しぶりです、理事長先生」
 「いえいえ、こちらもお会いできて光栄です。今回の件に関しては、私もそろそろ経過を知りたかった物ですから」
 会議室、いや、会議室ほどの広さがある理事長室。そこには現在三人の人間が存在していた。一人は立派な髭に理知的な目を隠すようにめがねをかけた五十代くらいの男、この部屋の主にして当校の理事長先生だった。名前?名前は知らないよ、そこまで気にしたことないし。
 その理事長先生の目の前に座る二人は、もちろんのことだけど僕の両親が、母さんは笑顔で、父さんは毅然とした姿勢で座っていた。
 「本来であれば、私たちが出てくるようなことではなかったのですけれど、少々相手方の親御さんが見逃せないことをしたものですから、大人な解決をさせていただこうと、無理にこの部屋をお借りして、誠にすみません」
 「とんでもない、理事長など肩書き程度で、暇な仕事です。それに、これで子供たちの笑顔が増えるのなら、安い注文です。もうすぐ、残りの二人もやってくると思いますのでそれまでどうぞ、お寛ぎください」
 「理事長、ひとつよろしいか」
 父さんが理事長先生に尋ねた。
 「はい、なんでしょうかご主人?」
 「うちの息子は、まあまだ来て一週間程度ですが、どのような感じですかな。母さんににて、強がりはあるが、変に気落ちしていなだろうか」
 意外な言葉だった。普段は僕を心配するというはっきりとした意思を見せない父さんがこんな場所でそんなことを聞くなんて、やはり子供の身を安じてくれるいい父親なんだね。
 「確かに、条件が条件ですから、ここでの友達が多いというわけではありません。ですがその中でもちゃんと友達を見つけて、少なくとも圧されていることは無いとのことです」
 「お父さん、あの子に限ってそれだけは無いわ。実際、女の子引っ掛けてきてるじゃない。それに、ここに友達がいなくても、他の場所では数えられないくらい、友達がいるのよ。問題は無いわ」
 「それも、そうか」
 父さんは母さんの言葉を聞いて言葉を切った。
 「そろそろ、時間ですな」
 理事長が時計を見やる、すると窓の外でエンジン音が響いてきた。窓の外へ目を向けると、黒塗りの高級そうな外車が校門をくぐってきたところだった。一台だけではない、その後ろからは白いベンツが続いていた。こうも高級車を見る機会などそうそう無いだろうとは思うのだが、父さんと母さんはそんなことはどうでもよく、むしろ車の中身を見ようとしていた。
 「お父さん、来たみたいですよ」
 「見ればわかる、城ヶ岬グループ社長と」
 敷地の端に並んで停車した車。黒の外車からは彫りの深い男が不機嫌そうな顔を下げて降りてきた。城ヶ岬グループ社長、城ヶ岬の父親だ。そして白のベンツからは対照的に落ち着き払った顔の男性と、続いてその男性にそっくりな顔立ちの男の子が出てきた。
 「戦国グループの社長と、その息子・・・・輝の友達か」
 「責任感が強いのね、親の話にまで出てくるなんて」
 「いや、当然といえば当然だ。順当に行けば、あの子供があとを継ぐ、だがそれが現状不安定になっているのだから、その行き先を確認するのは必然だ」
 二組のVIPは案内係と合流し校舎の中へと入っていった。さて、いよいよ話し合いが始まる時間がやってきた。何がどうなるかなんて、判るはずもないけれど、父さんと母さんは期待を裏切るようなことをしないだろうね。


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Novel Editor by BS CGI Rental
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