そんな風に朝食が進んでいる頃、僕は学校の体育館の裏にいた。先頭に立って僕を睨んでいるのは城ヶ岬の取り巻きである佐々木だった。その後ろには何人かが僕を殴ったり蹴ったりする予定のクラスメイトが立っていた。 でも、後ろの数人は顔に苦悶の表情を浮かべていた。当然だ。彼らが僕を取り囲むのはこれで二回目だから。前回僕を取り囲んだとき、僕に諭される以前から城ヶ岬には不満しか持っていないクラスメイト、僕を殴る気もなく駆り出されて逆に僕に全部話してくれたクラスメイト、それがまた僕を殴るために駆り出されていた。 「よお転校生、何でここに呼ばれたか、知ってるか?」 「さあ、呼び出された理由は知らないな。でも、君を嫌いな理由は知ってる」 はっ、と佐々木は鼻で笑って僕の言葉を一掃した。 「お前な、城ヶ岬に逆らいすぎ。おかげでこっちは機嫌取るのに苦労してんだぜ?こっちの身にもなれよ、なあ」 「勝手だね。それで、再三にわたって僕を痛い目に合わせようってことなんだ。でも後ろの人たち、嫌がってなかった?」 僕は視線だけで指し示す、そのとおりと佐々木がいう必要もなく、後ろで控えていたクラスメイトたちは顔をこわばらせた。そんな非戦闘的なクラスメイトに佐々木は振り返るといやらしい笑みを浮かべた。 「あ?ああ、ああそうだった。こいつら今更嫌がるなってんだよ。転校生ボコるのと城ヶ岬に逆らうのどっちがいいと思ってんだ?ちょっとは考えろよ、なっ!」 と、苛立った佐々木は一人の腹をつま先で蹴った。うげっ、と声を上げてクラスメイトの一人が倒れこむ。けれど佐々木はさらに痛めつけるように何度も彼を足で蹴り続けた。 「ったくよ、俺だっていい思いしたいっての。それだってのに、指示に逆らって、付いてきても非協力的で、俺の評価は下がるばかり。田島はいいよな、なんか可愛がられて―――――ああ、ムカツク!」 「うぎっ、ぎゃっ、あがっ、い、いだっ、うぐぅっ」 けらけらと笑いながらなおも蹴ることを止めない佐々木、周りのクラスメイトはとめることができない。止めれば、今度は自分が攻撃されるかもしれないからだ。じゃあ、僕が止めればいいか。 「そんなに城ヶ岬からの評価が落ちるのが嫌い?」 「ったりめーだ、んな―――――ぐ、ぎゃっ!?」 僕の質問に一時的に蹴りを止めて振り返った佐々木の顔めがけて、拳を叩き込んだ。大丈夫、鼻血が出る程度に抑えたから。まだ、立ち上がれるよね? 「て、てめへっ!?」 尻餅をついて鼻を押さえる佐々木は、怒りの顔で僕を見上げる。僕はその顔をめがけて横から蹴りを放った。一撃でおさめられるほどに、僕の不機嫌は小さくないから、二回に分けさせてもらった。 今度は叫ぶことも出来ず、体育館の外壁に頭をぶつけて動かなくなった佐々木。僕はそれを確認する。 「嫌がる人を使って戦う気もない人を襲うなんて、指示を出す城ヶ岬も最低だけど、それに従って否定しない人も最低だ。評価が下がるなら、下がらないようにしてあげるよ。評価が一番下なら、それ以上下がらないでしょ。聞いてない、か」 大丈夫?と僕は佐々木に蹴り続けられたクラスメイトのところへしゃがみこんで確認した。目から涙を流して、苦しそうだった。 「お、まえ、こんなことして、どうなるか・・・・うえっ」 「もうね、なりふり構ってられなくなったんだ。暴力で何でも解決できるなら、今頃世の中戦国時代だよ。城ヶ岬は、今日で終わりだよ。僕がそうする、君たちに聞きたいのは一つだけなんだけど、答えてね。僕に付くか、城ヶ岬に黙して従うか」 僕はその場にいる佐々木を除いた五人に聞いた。そして、答えを聞いて僕は教室へと向かった。
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