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探求同盟 −未来編− 桐夜輝の日常 作者:光夜

第31回   31
 その夜、夕方に指示を出したカラスとコンドルがボロボロになって戻ってきたという報告は城ヶ岬の父親の耳にも既に入っていた。それを聴いた瞬間、城ヶ岬社長は持っていたグラスを壁に投げつけた。
 「どういうことだ。うちの戦闘屋でもてだれのカラスとコンドルだぞ・・・・、軍人を相手にしろとは誰も言っていない、ただの自営業の男と主婦が相手だぞ、どうしてそんなことになるというんだ!」
 「で、ですが事実、カラスは部下ともども怪我を負い、コンドルは部下ともども病院に搬送され―――――」
 「だまれそんなことはきいていない!」
 ふー、ふー、とまるで気がふれたかのように城ヶ岬社長は呼吸を荒く頭を抑えた。
 「調査しなおせ!カラスとコンドルがやられた相手だ、何かがあるに決まっている。くそが、私の出鼻を挫きやがって、絶対に潰してやる。私に出来ないことなどない!」
 声高々に叫び上げる。あの広い部屋に今は城ヶ岬社長ただ一人だけがいた。息子の修一郎は部屋に―――――いや、この部屋の扉が僅かに開いていた。そこから除く一人の人物がいた。
 息子の修一郎だった。父親の乱心振りを入り損ねた扉の隙間から様子を覗いていたのだ。
 「ちっ、以外に使えねぇな親父も・・・・。いや、相手が悪いのか。くそ、こうなったらなりふり構ってられねぇな。最悪転校生を退学させる手段があるが、親父が当てにならないなら自分で何とかするしかねぇな」
 修一郎は携帯を取り出すと軽快にボタンを操作して耳に当てた。
 「おう、俺だ。おきてるか」
 『ふ、わぁ〜あ、ん。うん、今起きた』
 皮肉な感じで受話器の向こうから聞こえてきたのは田島の声だった。今起きたというのはどういうことだろうか。
 「用件がある」
 『明日じゃ駄目かい・・・・、それとも佐々木君に言うとか、これから出かけるんだけど』
 眠そうな声で答える田島は城ヶ岬が怒っている感じの声と悟っていないのか、それも知っていても関係ないということだろうか。それよりも、学生風情がこれから出かけるというのも穏やかではない。
 「駄目だ。桐夜を壊す作戦の一つ目が失敗したから二つ目を実行する。とりあえず佐々木に何人か連れて囲め」
 『・・・・いいけど、それも失敗したら?』
 「砂野を監禁して壊す」
 城ヶ岬の迷いの無い計画、それを聞いた田島は声だけだがなんとなく眠気が引いたような感じで聞き返してきた。
 『砂野君を?そんなことして何の意味があるのさ、確かに彼は転校生の友達だろうけれど、彼を壊す決定的な要素にはならないと思うよ?』
 「いいんだよ。確信があるんだから、俺の言うとおりにしてろ。いいか、あくまで佐々木が他の連中連れて囲った後、それで負けたらお前が砂野をさらって―――――そうだな、閉鎖された旧体育館に縛り付けとけ、そのあと俺に連絡しろ、砂野は俺が壊す」
 『・・・・どうしたの、焦って』
 「黙ってろ。俺の指示通りに動け」
 田島の質問に、更に不満を募らせた城ヶ岬の声は怒りを押し殺すことの出来るギリギリのようにも聞き取れた。田島は、これ以上の詮索は自分の身も危険だと思い納得していなくても了承した。
 『いいよ、楽しければ何でも。それじゃ、僕はこれから女の子と楽しい時間だから』
 「けっ、集団で女さらってマワすことの何が女の子と楽しい時間、だ。お前だけが楽しい時間だろうが」
 『そんなことは無いよ。他のみんなは無理矢理だけど、ぼくはちゃんと最後には言うこと聞くようにしてあげてるもの。僕の従順な狗になるようにね。だから、女の子も嫌がってないよ』
 なんの感慨も無く口にする田島は既にいかれていた。城ヶ岬はさもどうでもよさそうに返答した。
 「そうかよ。とりあえず、佐々木に言っとけよ。じゃあな」
 一方的に電話を切って城ヶ岬は電話をたたきつけた。そして激情した顔を暗闇に浮かばせると、それは紛れも無い城ヶ岬社長とそっくりの、憤怒の形相だった。
 「どいつもこいつも俺の言うことを聞き返しやがって。従ってればいいんだよ、権力にしたがって、俺の狗として動いてりゃあそれでいいんだ。くそ、どいつもこいつも。桐夜め、完全にぶっ壊してやる。かははは、かははははは!」



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Novel Editor by BS CGI Rental
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