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探求同盟 −未来編− 桐夜輝の日常 作者:光夜

第3回   3
 この学校には授業と授業の合間に休憩時間というものがなく、もっぱら教室の移動や授業の準備で終わってしまうということを知った。つまり、何かしら質問をしてくると言うことがあれば、それは昼休みに集中することになるだろう。
 授業と授業の合間、教室を移動して別なところで授業があるそうだ。僕は全員についていって廊下を歩いていた。周囲を見渡すと、特に変わった様子はない。あのとき僕を転ばせた生徒も、見当たらなかった。
 「それにしても、広い学校だね」
 廊下だけで短距離走が出来る長さがある。まったく、地図でもないと迷ってしまうだろうね。あまりの校内の大きさにあきれて、ふと、移動の中で廊下の外を見る。すると、僕はその光景に足を止めた。
 「今朝の、彼か」
 そこにはなぜか短い時間で次の授業が始まってしまうのに、如雨露を片手に花壇に水をやっている彼の姿があった。今朝の優れない表情などではなく、すごく楽しそうで優しそうな、慈愛にあふれた顔をしていた。その彼の肩には、どこからか飛んできたのかスズメが一羽乗っていた。
 野生のスズメが人の肩に乗るなんてこと、ありえるのだろうか。それだけ、彼には警戒するだけの材料がないと、そういうことなのだろうか。僕は、クラスメイトから急いだほうが良いと声をかけられるまで、その光景を眺めて、ひとつの決心をした。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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