「おはよう砂野君」 「お、おはよう桐夜君、あ、あはは・・・・」 午前十一時、約束どおり僕は待ちの本屋で待ち合わせた。一緒に出かけるには最高の天気となり、同時に繁華街は結構な人ごみで溢れていた。それよりも、なぜ若干だけど砂野君は困った顔で挨拶してくれたのだろうか?その答えはすぐに判った。 「おっす、また会ったな」 ひょっこり、という効果音が似合うような感じで砂野君の後ろ―――――本屋と隣の建物の間―――――から顔出したのは、今後しばらくは会うこともないと思って昨日分かれた国立国際総合学院中学部生徒会会長の戦国一臣さんだった。 「だったー、ってなにをぶつぶつ言ってんだ輝?」 「あ、いえいえ、なんでも。それよりも、なんでここにいるんですか?」 考えていたことが口から出ていたらしい。そんなことは無視してもらって僕は聞いた。一臣さんだって暇なわけが無い。いや、休日は学生として当然休めるんだろうけど、所属が所属なだけに、休日だって暇だという可能性は低いと思う。 「何でといわれてもな。学校は違えど、俺は真の保護者みたいな物だからな。高校で初めての友達と一緒に出かけるんだ、何かあっては大変だ。よって俺も同行する」 まるで過保護な兄のような意見だった。 「大変って、別に異性でもないんだから二人きりになったからってどうこうなるわけじゃないと思うよ。というより、同姓じゃないか、砂野君」 と、そんな意見に一臣さんは人差し指を立てて「ノンノン」とかいってきた。うっわ、なんか言い知れない苛立ちを覚えますねそれ。 「よく見ろ輝!真のこの容姿と顔立ちを、着る服によっては異性と間違えられてもおかしくないだろうが!」 「え、え?か、一臣君・・・・?」 「あー、いや、そう言われればそうかもしれないけど・・・・。いや、だとしても僕は事実だけで判断するし、砂野君が同姓であるなら手なんて出さな―――――は!?ま、まさか二人はそういう関係」 「じゃねぇよっ!」 言葉を間違えてしまい一臣さんからグーで叩かれた。 「い、痛い・・・・」 「だ、大丈夫桐夜君っ」 手加減の無い一臣さんの一撃は本当に痛かった。頭を抑える僕に砂野君が近づいてくると心配そうに声をかけてきた。 「あー、うん。大丈夫、大丈夫だけど今ので思いついたことがある」 「へ?」 なにを突然、そんな感じで砂野君はきょとんとなった。そう、その砂野君という単語についてだ。僕はどうしてこれを今まで考えなかったのだろうか。 「一臣さんだけ君を名前で呼ぶのはなんか不公平だから、僕も真君と呼ぼう。というわけで、真君も僕を輝と呼んでよ。だめ?」 「へ?え、ええっ!?で、でも、そんないやだめってことは、な、ないけど・・・・」 ちら、と真君は一臣さんを窺うと、一臣さんも「別にいいんじゃねぇ」という顔で、なんでかにやにやしてた。 「・・・・(わくわく)」 「え、えっと、あの・・・・あ、輝、君?」 照れた顔で、勇気を振り絞って、真君は僕の名前を口にした。おお、やっぱり苗字を口にされるよりも一歩親近感が湧く気がする。 「よし、元気でた!さぁ、遊ぶぞー」 腕を高く上げていざ戦場へ! 「か、一臣君・・・・」 「いいんじゃねぇの?こういうステップアップもありだろ?」 「う、うん・・・・」 とにもかくにも僕らの休日が始まったのだ!
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