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探求同盟 −未来編− 桐夜輝の日常 作者:光夜

第19回   19
 「よーし、それじゃあ今日はここまでだ。気をつけて帰れよー」
 放課後、授業も終わり先生は教室を出て行った。先生に目配せをして、とりあえず今日は何も無かったとうなずいて知らせた。毎日今日みたいだといいけれど、宣戦布告してしまった手前、休み明けには大変な事になるかもしれないなぁ。
 「さて、帰ろうか砂野君。帰り道で明日の予定を立てよう」
 立ち上がり隣の砂野君を確認すると、何か言いたげな顔をしていた。大体解る、一臣さんのことだろう。まあ授業が終わって直ぐだからだろうけど、来る気配はない。ならばやってくる前に帰ってしまおう、面倒ごとはごめんである。
 「大丈夫だよ、約束すっぽかしたって怒るような人じゃ――――」
 「いくら俺でも約束すっぽかされたら怒るぞ、輝」
 はっとなって振り返る。今の今までいなかったくせに、教室の開け放たれた扉の向こうで、昼と同じように壁に背中を預けて腕を組み、心外だという顔でこちらを見ていた。そう、戦国一臣である。
 「おい、なんか知らない奴がこっち見てるぞ?」
 「え――――はっ!?あいつって国際学院の生徒会長者ねぇのか!?」
 「マジでっ!なんでここに!?」
 瞬間、一臣の登場から十秒かからず、生徒たちは彼のオーラに気づき騒ぎ出した。当たり前だ。普通の公立の高校の生徒会長ならまだしも、能力を確実に判断される巨大学院の生徒会長がいるのだ。この建前には超がつくほど高い位置の人間がいて、騒がれないはずがないのだ。
 「ほらぁ、君が来るから騒ぎになったぁ・・・・」
 「しゃははは、気にするな気にするな。有名人に会えば誰だって慌てる。それだけ自分たちが常識の世界にとらわれている証拠だ」
 「で、でも一臣君、大変なんじゃ・・・・」
 「何が、大変なんだ?俺って言う話題になる人間がいることがか?それとも、『そんな話題の人間が、別な意味で話題になっている二人と仲良くしている』ことか?」
 「あ・・・・」
 図星、だったらしい。それは、既にフレンドリィに会話している僕らを見れば、誰もが一目瞭然だった。
 しきりに周囲からは学院の会長と知り合いなのか、友達なのか、そんな困惑の声が聞こえてきた。だが、考えようによってはこれはいい傾向かもしれない。偶然とはいえ、大物が僕らの知り合いだったと知れ渡れば、城ヶ岬はともかく他の人たちは考えを変えてくれるかもしれない。でも、その解決方法は僕は嫌いなんだけどね。結局、人に任して物事を収めようって言うんだからさ。
 そして、僕はちらり、と後ろを振り向いた。城ヶ岬がいた。こちらをじっとみて値踏みをしているようだった。表情に変化は無くとも、それなりには思う事があっただろう。
 さて、この光景に城ヶ岬はどうおもったか。そう考えたところで、城ヶ岬が立ち上がった。
 「帰るぞ、くずの近くにいると病気になる」
 「ああ・・・」
 「はいはい」
 城ヶ岬に促されて佐々木と田島も立ち上がった。そして教室を出て行こうとする。だがその城ヶ岬をとめる声があった。
 「おっとまった、城ヶ岬君だよな、君」
 「・・・・・あ?」
 一臣さんだ。あろうことか、城ヶ岬を呼び止めてしまった。周囲が一瞬にして凍りついたのは言うまでもない。
 「いやいや、挨拶をしようと思ってね。君のご両親とはなんどかあった事があるんだ。国際学院は城ヶ岬グループもスポンサーだからね。いつも感謝してるよ」
 「あっそ、その出資も、そのうち止まるかもな。そこのクズ二人のせいで、知り合いなら黙ってられないんじゃねぇの?」
 特にそこで隠れてるクズは、と僕と一臣の影になっているだけの砂野君を睨み付ける。失礼なやつだ。だが一臣はそんな事を言われていないように答えた。
 「しゃははは、それはそれは、なんだい君はこの二人と仲が良くないのか?クラスメイトとしてそれは悲しいなぁ」
 「ああ、人の注意を聞かないからな。クズはクズだ。そのうち焼却処分してやる」
 ちっと、城ヶ岬は舌打ちをして出て行った。緊張の糸が切れたように、教室内のプレッシャーが開放された。
 「城ヶ岬グループ御曹司、結構でかいな、的が」
 「ええ。でも、一人で解決しようなんて思ってません。今は解決する事を重点においてますから。両親の力も、借りるかもしれません」
 「ああ、それならいいことだ。なら、勝てるだろうよ。よっしゃ帰るぞ」
 一臣の号令のもと、僕らはようやくそこから動く事が出来た。
 「なるほどなぁ、そうとう性根が腐ってるなあの馬鹿息子。自分の手を汚さず勝ちにいくなんて、ろくでもねぇ」
 帰り道、城ヶ岬が砂野君にしている事、したことを教えるとしゃはははと笑いながらもちょっと不満そうに一臣さんは言った。
 「僕が一緒にいるからちょっとは防げているけど、でも完璧じゃない。怪我をさせられる前に解決しないとだめなんだ」
 「ごめんね、ボクのために無理させちゃって」
 自責の念にとらわれる砂野君。だが、彼が誤る事ではない。
 「砂野君が謝る事じゃないよ」
 「そうだな、こいつは俺のときもそうだったが、勝手にやってきては勝手に問題を共有して勝手に解決しやがろうとする。当事者はちょっと休んでください的にな。そんなことできるかっての、当事者には当事者のプライドがあるんだからよ。ってわけで、こいつは食いつぶすつもりでこき使っていいぞ」
 「こき使うって・・・・まあ、いいけど」
 実際に僕はぼろぼろになるまで戦うつもりだし。それで何かが解決するならそれでいいのさ。
 「じゃあ僕の家はこっちだから、明日はさっき言ったところで待ち合わせってことで」
 「うん、楽しみにしてるね」
 「また連絡する。元気でな」
 二人に手を振って別れを告げる。さて、帰って明日の準備でもしようかな。
 「はあ、相変わらずな奴だったな」
 「うん・・・・」
 「で、どうなんだお前としては?」
 「え?ど、どうって、なにが?」
 「ごまかすなよ。どうせ教えてないんだろ、他の連中の反応を見れば解る。お前、どうせ教える前にいじめられたから、言いにくくなってそのままなんだろう」
 「う、うん・・・・わかるんだ」
 「当たり前だ。俺はお前が好きだったからな。俺が撃沈した事柄について、その後どうなったか気になるのは当然だ」
 「ごめん、でも、やっぱり一臣君は友達だから、近すぎたのかな、あはは・・・・」
 「申し訳なさそうに言うな。こっちが恥ずかしいし情けない。ってことは、だ。はっは〜ん、ようやく相手を見つけたんだなお前?」
 「へっ、な、何が!?だ、だって、き、桐夜君は友達だし、それに会ったばかりでそんな――――」
 「おいおいおい、別に俺は輝のことなんて言ってないぞ。それとも、そういうことで受け取っていいんだな?」
 「あ・・・・い、いじわる」
 「まあ、そこがお前のいい所だからな。とりあえずがんばれ」
 「うん、ありがとう・・・・」
 「でもな、あいつは俺のときと同じで、色々と調べるのが得意だ。自分が言う前に本当のことを知ってしまうのは時間の問題だ。知らずにばれるより、教えた方がいい事はたくさんある。わかってるか?」
 「うん、ボクだってそれは考えてる。自分で言わないと、桐夜君にわるいし・・・・」
 「そうか、解っているのならそれでいい。じゃあ俺はここまでだ。ここまでなら後はまっすぐだろ」
 「うん、そうだね」
 「じゃあな、また連絡する」
 「うん、さようなら」

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Novel Editor by BS CGI Rental
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