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探求同盟 −未来編− 桐夜輝の日常 作者:光夜

第14回   14
 「えーっと、田中君、村島君、江口君、だったっけ?」
 朝、登校の途中で僕はまったく話したことは無いけれど顔だけは知っているクラスメイト三人に囲まれた。三人とも、なんとも鬱陶しそうに僕のことを見ていた。
 「お前さ、転校初日からウザイんだよ」
 「城ヶ岬に逆らいやがって、おかげでこっちは要らない心配させられっぱなしなんだよ」
 「とりあえずさ、痛い目、見とく?」
 そういって三人はじり、と僕に近づいてきた。
 「えーと、城ヶ岬って、そんなに信頼できる人間なのかな?」
 「・・・・・」
 「・・・・・」
 「・・・・・」
 僕は間髪いれず僕はそう聞いた。険しい顔の三人は表情を崩しはしないが、思うところはあるようだ。
 「まあ確かに、長い物には巻かれろっていうけれど、巻かれる相手は選んだほうがいいよ。少なくとも、君たちには選ぶ権利はあるんだからさ。権力と財力、城ヶ岬にはそれがあるけれど、それしかないよ。そんな相手に、高校生活を任せていいのかい?」
 「う、うっせぇよ!」
 田中君が僕を黙らせるように大声でどなり胸倉を掴んできた。残念な行動だね、これは。僕はその腕を掴んで捻りあげた。
 「い、たたたっ、いたたたたたっ、う、うぅぅ〜っ!!!」
 間接をいためるように捻ると自然と苦しい声が上がった。それを見て他の二人が一歩引いた。
 「は、離せ、離せよバカっ!」
 「あ、ごめん。やりすぎた」
 僕は掴んでいた腕を離して彼を自由にした。
 「くっそ、いてぇ〜・・・・」
 「てめぇ、桐夜ぁっ!」
 腕を押さえる田中君をかばうように村島君が僕をにらみつけた。威勢だけはいいけれど勢いだけで人は倒せないよ。僕ははぁ、とため息を吐いた。
 「朝からさ、暴力は止めようよ。僕は君たちとも友達になりたいけれど、今のままじゃ駄目だろうね。残念だよ。城ヶ岬は、どこからどう見ても間違っているのに、どうしてはいはいと従うんだい?」
 「こっちだって従いたくねぇよっ、でも、あいつに逆らっていいことがあるわけ無いだろうが。知ってるか、逆らった経験はお前だけじゃねぇんだよ!知ってるか、城ヶ岬の言い草に一番に逆らった奴がどうなったかっ!努力してこの学校に入ったのに、逆らっただけで三日後には合格取り消しだぞ!あいつは、そういうことを平気でやるんだよ!じゃあ、従うしかねぇだろうがっ!」
 呪詛のように叫び声をあげて、村島君はその拳に怒りを宿して僕に突き出してきた。それを理解したうえで、僕はその拳を手で受け止めた。がっちり、と。
 「え―――――」
 「わかった。なら、従うな」
 ずい、と僕は突き出された腕を顔だけ通り越して彼に接近した。
 「し、従うなって、そんなこと・・・・」
 「出来ないわけじゃない。僕が出来るようにする。例えば今、僕たちは出会わなかった。僕はいつもの道とは違う道から登校したんだ。いつまで待ってもやってこない僕を待つことを諦め、君たちは登校する。それでいい。それを繰り返せばいい。嫌なことを、進んで行う必要はない」
 「お、お前、本気か、本気で城ヶ岬に逆らう気かよ・・・・」
 そういってきたのは江口君だった。この中では一番大人しそうな顔立ちの彼は、結構声がはっきりしていた。
 「本気だよ。初見から城ヶ岬は危険だと思ったからね。それに、君たちとケンカをするのは嫌じゃないよ。友達ならケンカくらいするだろうしね。でも、自分の意思で向かってこない相手とするのはいやだ。それはケンカじゃない、ただのロボットだ」
 僕ははっきりとした意思を三人に見せると、既に三人からは僕に攻撃する意思はなくなっているようだ。それもそうだろう、そもそも彼らは嫌々ここまで来たのだ、攻撃の意思なんて、あってないようなものだね。
 「さて、この分だと砂野君も他の人たちに囲まれていそうだね。場所はわかる?」
 「あ・・・・」
 「そんな、こと・・・・」
 三人のうち二人は口をつぐんでしまった。まだ、意思は決定できていないらしい。けれど田中君は視線を僕に向けたままじっと何かを考えているようだった。
 「・・・・砂野は、登校したのを待ち伏せされてる。体育館の裏だ」
 「た、田中・・・・」
 「大丈夫かよ、おい・・・・」
 「いいよ、もう。入学して半年経つけど、いいかげん城ヶ岬にはうんざりだ。そりゃあ逆らえばどうなるか判らないけど、したがってて気分外わけも無い。第一、コイツも砂野も、何の関係もないだろうが。まだ砂野と、全然話していないのに、つまんね、そんなの」
 田中君は城ヶ岬の影に怯えながらも自分の気持ちを伝えてくれた。それは、すごく大きな一歩だし、大きな勇気だった。こういう瞬間を見るのが、僕は最高に気分がいい。
 「・・・・俺も、もう止めた。城ヶ岬のやつ、むかつくし」
 「そうだな、うん、やめたやめた。さっさと学校行こうぜ」
 三人は三人とも、すっきりした顔で頷いていた。よし、まずは周囲から崩すところに成功したようだ。この調子で、残りのクラスメイトたちも何とかしないと。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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