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探求同盟 −未来編− 桐夜輝の日常 作者:光夜

第13回   13
 「ただいまぁ」
 「おかえりなさい、今日はどうだった?」
 帰宅後、昨日と同様にぱたぱたと母さんが出迎えてくれた。その揺らぐことの無い笑顔は父さんだけの物と思われそうだけど、僕には僕にしか見せない笑顔もある。本当、我が家って言うのは素晴らしいよね。
 「うん、友達になった子のいじめを目の当たりにしてね。ちょっと午後の授業はサボったかな。トイレで水攻めにあったんだ」
 「そう、可哀相・・・・。でも、あなたがいるんだから大丈夫ね、きっと。それにその程度ならまだその子もがんばれるから」
 「ああ、そういう心配ならないよ。普通は精神的にまいって自殺を考えそうだけど、彼の場合はそんなこと毛頭考えてないみたいだから。どうも精神的には強い子らしいよ」
 靴を脱いで玄関からフローリングへ上がる。それよりも、と僕は母さんたちのことを聞いた。
 「母さんたちはどうなのさ?あんまり仕事のことに口出ししないようにしてるけど、この間面倒な仕事が入ったって聞いたよ、父さんから」
 「おしゃべりなんだから・・・・。大丈夫よ、ちょっと会社役員の汚職調査だから、直接話しを聞けなくてもボディーガードとかはお父さんが倒すし、問題はないかな」
 「そ、ならいいや。父さんは奥?」
 そうよ、と母さんは笑顔で見送ってくれた。僕はそのまま父さんの部屋に赴いた。
 「ただいま、父さん」
 「ああ」
 子供に向けるには、ちょっと愛想の無い挨拶だった。これが仕事のときは狂信者的になるんだから、信じられないよ。二人とも仕事の姿を僕に見せたくないからって黙ってどこかに行くけれど、本当に父さんて二重人格みたいな人間なのかな?
 「今日の結果、聞く?」
 「言いたいのなら、言えばいい。一日で、劇的に何かが変わることなんて、母さん以外にあり得ないがな」
 「あはは、まあそうだろうね。うん、昨日と同じだよ。まだ主犯格は大きな事を起しては来ていないね。たぶん明日あたり、僕と友達は、標的になると思う」
 「対抗できるのか、他人を守りながら」
 「出来る、じゃなくてするんだよ。僕は成り行きから望んで父さんたちの家業に首を突っ込んでいるんだよ。父さんだって、母さんを守りながら戦ったんでしょ?確か、神様とかだっけ?」
 「似たようなものだ。なら、自分の事を疑うな、わずかでもだ」
 「肝に銘じておくよ。それじゃあ、部屋に戻るね」
 「ああ」
 最後まで父さんは笑わなかったけど、僕は笑って退出した。渋いよねぇ、父さんは、母さんはいったいどうやって父さんと一緒になったんだか、不思議だ。
 明日は、砂野君とどうやって城ヶ岬に対抗しようかなぁ。
 「なんて、考えていたら結構なことになったりして、なんてね」
 軽く笑って、後悔するのは翌日だった。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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