「ん・・・・こ、こは・・・」 シンの意識が覚醒した、徐々に周りが見えてきた。と、同時に自分の置かれている状況が肩の痛みと共に甦ってきた。 「痛っ!そ、そうか肩に怪我を・・・そうださっきの爆発は!?」 と同時に上の方でその爆発音が響いてきた。 「孝太、早く孝太の所へ・・・」 鉄骨に寄り掛かりながら立ち上がった。フラフラしながらおぼつかない足取りで階段を上がり始めた。 (そういえば・・・・ローゼンは・・・) 階段で声をかけてきたローゼンの顔を思い出す、願わくば孝太に協力くれていればと思った。 ついに屋上に辿り着いた。目の前には重火器を構えるローゼンと足から血を流している・・・ 「孝太!」 「斑鳩か、話はいいからこっち来て手伝え、ローゼンと俺だけじゃ無理だ」 「ああ、わかったよ」 ゆっくりと孝太の所へいくと目の前には見知った怪物がいた。 「こいつは!!」 「落ち着けよ斑鳩、お前の親父さんを亡き者にした奴かもしれないが突っ込んでもやられるぜ」 「・・・・そうだな、少し落ち着いた方がよさそうだ俺は」 「そうそう、ローゼンが援護してくれるらしいから思う存分行くぜ」 チラッとシンは後で重そうな重火器を持っているローゼンを見た。ニコニコと親しみのある笑顔で手を振っていた。 「よし行くぞっ!!」 「おうよ!!」 気合十分に走り出した、タイラントの身長は二メートル以上ある。そんな身長もものともせず頭の上まで飛び上がった。 「くらえぇぇぇぇぇぇ!!」 同時に刀を振り下ろした、が。 「フン!」 タイラントは大きく腕を振り二人を弾き飛ばしてしまった。 「「うわああああ!」」 コンクリートに叩きつけられる前に空中で体制を立て直し着地した。 「やはり、歯は立ちませんか・・・」 ローゼンは読めない表情で呟いた。 「ハア――――、ハア――――・・・くそ、肩に力が・・・」 シンの肩からは絶えず血が流れている、孝太に至っては肋骨を押さえていた。 「四本目か・・・くそっ!―――」 「二人とも避けて!」 「!?」 「!」 ローゼンの声に素早く反応し横っ飛びでその場をどいた。そして―――
ドドドドドドドドド!
二人のいた所には物凄いスピードで赤く細長い閃光が大量に走る、銃弾だ。 「グアアアアアアアア――――ッ!!!」 それら全てがタイラントに命中した、辺りは銃弾の煙に包まれた。 「どうです?この『ロゼッタ』の威力は」 得意げに銃を構えて決めた。 「ごほっごほっ・・・ロ、ローゼン、それは・・・」 「僕の愛しい相棒、ロゼッタです。まあ、正式名は『回転式自動型赤弾(かいてんしきじどうせきだん)ゼネラルターボマーク零』、略して『ロゼッタ』です」 「か、かいてん・・・しきじどうせきだっ!・・・いてて舌噛んだ」 孝太が復唱して舌をかんでしまった、つまり自動連送機関銃の小型版と考えればよい。 「煙が・・・」 二人のやり取りも気に止めずじっと煙を見つめるシン、その煙がだんだんと晴れてきた。予想ではタイラントがうずくまっているはずなのだが・・・・ 「あ!」 「げ!」 「そ、そんな・・・」 煙から出てきたのはカスリ傷を負っただけのタイラントが――――― 「フフ・・・」 不適に笑い余裕を見せた。 「ロゼッタでも歯が立たないとは・・・・困りましたね」 「どうすれば・・・・」 「クソッ!」 「あきらめればいいだけだ」 三人とは違う別の声が上から聞こえて来た。三人そろって見上げると少年がいたクレーンに乗っかりこちらを見下ろしていた。 「あ!お前公園にいた・・・」 「知ってるのか孝太!?」 少年の顔は孝太も良く知っていた、公園で声をかけてきた上にその内容が「殺したいの」とくればいやでも覚えてしまう。 「ローゼン、決着をつけよう」 シンと孝太には目もくれず少年はローゼンと話し始めた。 「・・・イリス・・・」 「イリス?ローゼン知り合いか?」 「ああ、差し詰め、君たちの言う『コア』の親玉といったところでしょうか」 「あいつが!」 シンはイリスを見た、余裕の笑みを浮かべながら高さ十メートルはあろうかと言うクレーンの上から飛び降りてきたイリスは指を指し命令した。 「さあ、パーティーの時間だ、行けタイラント!」 「ギュアァァァァァァァ!!!」 自慢の足で加速をつけシンとシンの前へ出た。息もつかずそのまま腕を振り下ろす。 「は、早っ!」 ガキンッと腕の刃と刀がぶつかった、パワーは互角・・・いや、シンが徐々に押され始めている、少しずつ後へと追いやられる。 「・・・・へっ!」 追いやられながらシンはタイラントに笑って見せた。 「ギュア・・・?」 「こっちだぁぁぁぁぁぁぁ!!」 横から孝太が攻撃を仕掛けてきた、シンが笑ったのはこう言うことだった接近戦をしているのは二人、自分が相手になっているなら孝太はフリー。 (必ず当たる・・・) ――――――が。 「アマイ・・・」 「うああああああ!」 孝太の『斑匡』はタイラントに当たった、しかし硬い体は刀など弾き返してしまった。片腕で孝太を弾き飛ばしそのままシンの腹部へと殴りつけた。 「がはあっ!・・・・ごはっ、ごはっ!」 その場にうずくまり腹を押さえた、むせた時に口から大量の血を吐き紅い水溜りを作った。 (こ、こんな所で・・・孝太・・・・) 頭を上げ遠く飛ばされた孝太を見た、床に倒れこんで動かない、気絶してしまったようだ。 (勝てない・・・・俺じゃああいつに・・・) 目線をイリスへ向けると退屈そうな顔でこちらを見ていた。 「なんだ、もう終わりか・・・・つまらないな、こんな奴等に手を貸すとは・・・ローゼンこれで解っただろう倒すだけ無駄だ」 「ふざけないで下さい、これは任務です私は「ダイム」の大元であるあなたを倒さくてはなりません」 足元に置いてあったトランクを持ち上げた。 「何をする気だ」 無言でトランクを自分に向け開け中からこれまでと違う大きさの銃が出てきた、バズーカのような大きさの銃口が目に付く両手持ちようのグリップ、そして取り出した大型の銃弾銃口に弾を入れ送転用のレバーを引き構える。 「組織の用意した大型砲撃銃『BNL―12』を私なりに改良してみました・・・・刺し違えてでも滅ぼします」 「行け・・・」 もういい、といった感じでイリスは静かに最後の命令を下した「皆殺し」と・・・ 「これで最後です!」 引き金を引き勢い良く特大の弾丸が飛び出した、タイラントは一直線にローゼンへ向かってくる、このまま行けば当たる、しかし。 「あ!」 鼻先でタイラントは弾丸を避けた弾丸は目標を失い空へと舞い上がっていった。 (うっ・・・くそ、何か・・・何か無いか) ローゼンとタイラントの攻防の中悔しさに震えるシンの手元に黄色い玉が転がってきた。 (こ、これはさっき回収したイグニスのコア・・・・) それを手にとり握りしめた。 (何とかあと一回くらいなら攻撃できそうだ・・・) その時大きな爆発音が響いた。シンが驚いてローゼンたちを見る、イリスが驚いていた。 「参ったな、まさか追跡可能だなんて」 「当然です、ただ飛ぶだけのものなら能無しでも造れます」 皮肉をこめた一言もイリスは興味を示さなかった。 「だからと言って勝ったと思うな」 煙が晴れる、だがそこにいるのは無傷のまま立ち尽くすタイラントがいた。 「そ、そんな・・・」 銃を落とし絶望の表情で膝をついた。 「はははは、残念だったなローゼン行けタイラントとどめだ!」 「ギュアアアアアアアアアア!!」 腕を伸ばしローゼンを切り裂こうとした。 (ここまでのようですね・・・) 覚悟を決めたとき予想外の声が聞こえて来た。 「待てイリス!」 その声にタイラントをは動きを止めイリスとローゼンも振り返った。 「斑鳩君・・・」 声を出したのはシンだった。力なく立ち尽くしていた、だが目は死んでいない。 (何か考えがあるんですね) 問い掛けるようにシンを見たシンの答えるように笑った。 「何だ死に損ないがまだあがくか」 「生憎、負けるのは嫌いなんだ・・・・お前は俺が倒す」 「いいだろう、タイラント奴を殺せ!」 標的を買えたタイラントはシンに向かって突っ走った。 「これで終わりだ、人間」 イリスは己の勝ちを悟った、が。 「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!・・・・・・」 「な、何!?」 突然タイラントが立ち止まり叫び声をあげた。 「へへ、俺の勝ちだ・・・」 タイラントの背中には刀が刺さっていた、それは丁度胸の所にあるコアの真後ろ。 「そうかイグニスの力で刀を飛ばしたんですね!」 「そういうことだ・・・・・・」 「く、くそなんてことだ!タイラント!」 「ギャアアアアア・・・・・・」 苦しそうに背中の刀を抜き放り投げた、イリスはタイラントの所へ近づくと背中に手を当てた。 「深いな・・・・すぐには治せそうに無いか」 「どうしますまだやりますか」 ローゼンに言われイリスは向き直る、その目には焦りは無い。 「勘違いするな、形成はこっちが有利に変わりは無い。だが今は退こう、いつか決着をつけてやるその時までせいぜい生きる事だな」 イリスはそう言うと手をかざし大きな穴を出現させた。 「・・・・」 それを黙ったままローゼンは見ていた。イリスとタイラントは穴の中へと消えていってしまった。 「終わった・・・のか」 イリスは去り際にまた合おうとか言った気がするがもう立っているのが限界だった、バタリとシンは倒れた。 「斑鳩君!・・・・ひどい怪我ですね・・・・しかし私は急用が出来てしまいました手を貸そうにも・・・おや?」 ローゼンが考えていると階段を上がってくる気配がした。 (葵さんたちでしょうか?・・・何にせよこれで一安心ですね) そう思い別な出口からローゼンは下へと下りていった。 あとには何やら大騒ぎする声が聞こえた。
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