シンと反対側へ歩いた孝太は大きなアパートが立ち並ぶ所で立ち止まりまわりを見た。 「同じ建物だらけだなここは・・・迷路かよ」 頭をかきながらアパートを通り過ぎ裏手の公園へと足を運んだ。 公園では母親たちが子供をあそばせ井戸端会議をしているのが見えた、特に何か在るわけではないが一応孝太は公園へ入った。 「特に何も無い・・・・・か」 と、母親たちがこちらを見てヒソヒソと話し始めた、見慣れない少年がいるのだからそれもそうだろう。 「たく・・・」 バカらしいといった感じで孝太は頭をかいた。 「これなら人ごみの中の方がまし・・・・でもないか」 どちらへ行っても面倒くさい事だと思いため息をついた、こうなると繁華街へ行ったシンのことが気なりはじめた。 (大丈夫か斑鳩の奴・・・・あいつ結構人が多いいと落ち着かない方だしな) シンの事も気になるがそれは置いておき、今は捜索が大事だと公園を出ようとしたとき出口の方に人がいるのに気づいた。 「ん?」 背格好は同じ高校生くらいだろうか髪は白く染めあげ額には黒い丸の刺青が彫ってある、いかにも不良といった感じだった。 (揉め事は慣れてるが子供がいるしなー・・・) 既に絡まれる事を前程に少年を見た。 少年は孝太を見ているが孝太はなるべく目を合わせないようにすれ違った面倒事には関わりたくないのだ。と、少年はポツリと孝太に声を掛けた。 「殺したいの・・・・」 「は?」 突然なんだと言う感じで振り返る、しかし・・・ 「あれ?何処行った?」 少年の姿は何処にも無く子供達が遊ぶ声だけが聞こえた。
そろそろ二時間が経とうという時それは起こった。繁華街の一角、シンが駅へ向かおうとした時爆発音がした。と同時に『コアの欠片』が光った。
ズゥゥゥゥゥゥン
地響きが走り歩いていた人々は足を止め全員が慌てた。 「何だ地震か!?」 「ちょっとなによこれ!」 「あっちでなんか爆発があったらしいぜ!?」 駅近くまで戻っていたシンは民衆の悲鳴を聞きつけ慌てて繁華街を走った。 「何てことだ・・・クソ、人が多すぎる」 人ごみを進んでいたら被害は広がる、シンはガードレールを超え車道へ出た走った。
パッパー!
突然の飛び出しに車は急ブレーキをかけて止まった、後ろから後続の車が渋滞を起した。 「バカヤロー死にてえのか!・・・あれ?」 運転手は身を乗り出して怒鳴ったがシンの姿は既に道の先へ消えていた。 繁華街の中心では人々がパニックを起し逃げ惑っていた。 「た、助けてくれー!」 「キャャャャ!化け物―!」 声のする方へシンは駆けつけると人ごみの中に明らかに人とは違う姿があった、『コア』だ。 「・・・・ってまたか・・・・」 しかし見つけた『コア』は灰色でしかもその姿は花瓶だった、それも二体共。 「見つけたからには排除のみ!」 花瓶はショーウィンドウや車を破壊し暴れまわっていた、格好の割には幾分強いようだ。 「行くぞ!」 『コア』目掛けてシンは走り出した。
所変わってこちらは孝太、繁華街で『コア』の出現と同時に孝太の所にも『コア』が出現したのだ。しかも場所はマンション供給のためのプロパンガスタンクの所だ、たまたま子供が駐輪場に置き忘れたシャベルに取り憑いた『コア』はガスタンクを狙おうとした時運悪く孝太と出くわしたのだ。 「一体だけで俺に勝てるかよ!」 シャベル姿の『コア』は鋭く尖った頭で突進してきた、もし孝太がよければ後ろにあるガスタンクにぶつかるだろう、だが孝太は避けようとはしなかった。 「ただ突っ込むだけか、能無しだなおまえ」 しゃがみ込み『斑匡』を逆手に持ち変えじっとシャベルを見据えた、シャベルが真上に来た時孝太は目が合い笑った。 「ギィ!?」 「空でも散歩しな」 『斑匡』をシャベル目掛け振り上げた、シャベルは舞い上がり突進の勢いもかき消された。 「ギィィィィィィ!」 シャベルの視界には両手で『斑匡』を構える孝太が見えた。よく見ると鍔が緑色に、孝太は素早く『緑』と取り替えたのだ。 「散れ!」 天高く振り上げると刃から緑色の三日月が飛び出しシャベル目掛け真っ直ぐ飛んだ。
バシュン
シャベルは切れると言うよりも触れたと同時に吹き飛んだ、驚くほどの攻撃力だった。 三日月はシンの言ったとおりシャベルを貫通して空へ消えて行き孝太の肉眼では捕らえられない所まで上った一体何処まで上るのだろう。 壊れたシャベルの破片が落っこちてきたと同時に子供の声が聞こえた。 「あ!僕のシャバルが・・・」 (え?しゃばる?・・・ってシャベルのことか?) どうやらあの子のシャベルらしかったようだ、子供は孝太を見て泣き出し始めた、孝太が壊したと思ったのだろう。 「わ〜〜ん!シャバルこわした〜!」 「げ!マジか」 その時運悪く公園にいた母親たちが戻ってきた。 「あら、何かしら?あの子泣いてるわよ」 「池野さんの所の子よ、なに!いじめ」 口々に話した後孝太の方へ歩いてきた。 「不味いな・・・」 このままだと厄介な事になると思い一目散に走り出した。二つ三つ先のマンションの角まで走り孝太は座り込んだ。 「はあ、はあ、俺のせいじゃ無いぞシャベルが壊れたのは」 下を向き悪態をついた。口ではそう言っているが実際は悪い事をしたと思っているのだ、それが証拠に・・・・ 「シャベル壊したのはあなたね」 突然の怒鳴り声に驚き、反射的に土下座のポーズを取り謝り始めた。 「すいません、すいません!壊そうとか思ったわけでなく不可抗力なんです!」 謝りまくる孝太を上から笑う声が怒鳴り主から聞こえた。 「え?」 よく聞けば聞きおぼえのある声だった、頭を上げ声の主を見た。 「あ!唯、なんでここに」 なんとそこには学校で待っているはずの唯が立って笑っていた。孝太は立ち上がり頭をかいた。 「えっとね、シャベルを壊したのが見えたから」 痛いところを突かれ孝太は慌てて唯に言った。 「あ、あれはだな唯、こ、壊すつもりじゃあ」 「わかってるよ、孝太が頑張ってるのは」 唯に言われホッと胸をなでおろした孝太は改めて聞いた。 「で、何で来たんだ?学校で待ってるはずじゃなかったのか」 「待ってるだけだと退屈だから」 「は?」 孝太は呆けた顔で唯を見た、呆れてものが言えないようだ。 「そんな理由で来るな!危険だって・・・」 孝太の怒り様を見て唯はまた笑った、孝太は訳がわからないといった顔で見た。 「あははは、嘘だよ」 「は?」 「すぐ孝太は引っかかるんだから、そんな理由で来るわけないよ」 「じゃあなんだよ」 唯は後ろを向いた。 「孝太が・・・・心配だから」 「え?」 孝太は唯の後ろ姿を呆然と眺めた、しだいに口には笑みが浮かんだ。 「行くぞ」 唯の背中をポンと叩いて孝太は歩き出した。 「うん、ところでね、葵も来たんだよ」 「そうなのか?じゃあ斑鳩のところか」 「う〜ん見つかればね・・・」 唯は手を顔に当てハッキリしない声で言った。 「あの人ごみじゃあ難しいかもな」 孝太も自分の言った事に納得して首を縦に振った。
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