孝太は川べりに座り唯に包帯を巻いてもらっていた。 「きつくない孝太?」 「ああ、大丈夫だよ」 孝太は川を見ながら考えた。 (もう少し・・・強くならないとな俺・・・) ポケットの中の二枚の鍔を触った。 (この鍔と『斑匡』で何ができる・・・俺に・・・) 「孝太」 唯に声を掛けられ孝太は後ろを見た。 「何だ唯?」 「・・・ううん何でもない、だけど」 「だけど?」 「さっきの孝太少しカッコよかったよ」 「そうか、ありがとう」 そう言うと孝太はまた川を見た、だが顔は笑っていた。
手当ても済み日も沈む頃四人は公園を出た。孝太は葵のリュックに入っている古い文献を図書館に返しに行った。 「唯も行くの?」 葵は当然のように唯に聞いた。 「いや俺だけでいいよ、それより明日はどうするあれで終わりじゃないだろう?」 「そうだな、二手に分かれて隣町まで捜すか」 孝太は頷いた。 「そのほうが早そうだな、よし明日は朝・・・何時がいいかな?」 唯が手を上げた。 「はーいじゃあ学校に朝七時集合ね」 「何で学校なん・・・まあいいか、な」 孝太は頭をかいた、この際細かい事は置いておこうと言うのだろう。 「それじゃあまた救急箱必要だね」 「あと弁当もな」 シンが何気なく言った。 「まるで合宿だなこれじゃあ」 孝太が呆れたように言った。 「いいじゃない、合宿は楽しまなきゃ」 唯が孝太の背中を叩いた。 「命がけの合宿だなこれは」 そうだなとシンが言う。命がけとは思えないほど四人は笑いそして楽しんでいるようだった、この後それぞれは家に帰り明日の準備をするのであった。 「明日に備えて練習だ、『斑匡』もう少し付き合ってくれよ。それに・・・」孝太はシンから預かった『赤い鍔』を装着した。 「うわ、なんだ急に重くなったぞ重りかこれ?」 『慣れるより慣れろ』孝太は夜遅くまで素振りの練習をした。
「う〜んこのくらいかな?」 唯は明日に備えての弁当作りをしていた。 「卵焼きにミートボール、エビフライにサラダ、あそうだ孝太の好きなハムも」 ウキウキしながら唯は弁当を作っていた。
葵も弁当作りをしていたが唯とは違い考え事もしていた。 「さっき公園でなんて言ってたんだろシン君?」 シンの言った事が気になっている様子だ。 「何かを見たくないって言っていたような」 思い出しながら卵をかき回す。 (葵の・・・・・・・は見たくない) 「私の・・・なんだろ?まあいいや明日聞いてみようっと」 細かい事は気にしないのが葵なのだ。
シンは精神統一中だった。 「・・・・・・・・・・・」 イスに座り目を瞑る事三時間随分長い精神統一だ。 (今日は疲れたな) 落ち着いた所で今日の事を思い出していた。 (自分の精神をもっと鍛えないと、『奴』が近くにいると考えたとたん体力も考えずに走ったのはやはり父の『カタキ』と考えているからだろう) 理由が解っていてもそれを押さえられなければ意味がない、今日を振り返りシンは痛感したのだ精神鍛錬が足りないと。 「・・・・・・・・」 また長い精神統一に入ろうとしたシンは頭の中を空にできなかった。 (葵・・・いや、このことは全てが終わった後だ!せめて『奴』を倒した後・・・) 今度こそシンの頭は空になった。 明日に備え皆頑張っていた。 「あと二時間の素振りだ!」 「サラダはこのぐらいかな?」 「バンソウコウと包帯、あと消毒液。他には胃薬?」 「・・・・・・・」 四人の戦いは佳境を迎えようとしていた。
闇に動く影が二つ。 「ツイニ・・ナカマガ・・フエタ」 両者の胸には赤く光る『コア』が。 「モウマツヒツヨウハナイ・・・コノ・・町ヲ・・・ホシヲ・・奪ウ」 「この・・・バ所・・・に・・・ヒキコム・・・」 「コ・・ロ・・セ」 周りからあおる声が聞こえた。 「コ・・ろ・・・せ」 「殺・・・セ」 徐々にハッキリと聞こえてくる。 「殺セ・・・」 「殺セ」 「殺せ」 建物の中に殺意が吹き荒れた。 「ふふふ、楽しみだねタイラント」 この者は誰なのか、そして『タイラント』とは一体・・・・ 「もうすぐだ、もうすぐ・・・」 ただ彼の額には黒く光る玉が埋まっていた。
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