公園の入り口には葵達三人が着ていた。 「あの岩だよね本に書いてあったのは」 唯が入り口の地図の真中を指差す。 「そうだな、間に合うといいんだが・・・」 神妙な面持ちで林を見る三人、その時シンが飛び出してきた。 「あ!シン君どうだっ・・・・」 呼び止めようと葵が声を掛けたがその横をダッシュで駆け抜け手言った。 「あれ・・・どうしたのかな?」 呆然と走り去った方を見る三人。 「って追いかけねえと!」 そう言って孝太はシンの後を追いかけた、葵と唯も続いた。 「おい!どうしたんだよ斑鳩、岩は見つけたのか!?」 追いついた孝太はシンに聞いた。 「ああ、だが壊されていた、物気の空だ」 「なんだって!それでどこに行くんだ?」 決意の表情で何かを言おうとした時刀の『コアの欠片』が反応し立ち止まった。 「おっと、いきなり止まるなよ」 「コアの反応だ!」 そう言われて孝太は構えた。 「『奴』か?・・・」 警戒しながらシンは孝太に近づいた。 「いや違う、反応が弱すぎる。多分別な『何か』だ」 「別な・・・『何か』?」 その時路地裏から悲鳴が響いてきた。 「うわああああ!」 「きゃあああああ!」 二人は悲鳴を聞きつけそこへ走った。 「いた!・・・って何だあれ?」 孝太はコアの姿に呆然とした、シンも「どう言うことだ」と言う顔だった。 「植木・・・鉢」 それもそのはず確かに岩から出てきたのと同じ『灰色のコア』が憑いているがその姿は植木鉢そのものだった。 「ど、どう言うことだ斑鳩?」 孝太はシンに顔を向けた。 「今はそれより排除が先だ!」 「お、おうそうだったな」 そう言うと騒ぐ人を掻き分けながら孝太は植木鉢に走った。 「ギャルル」 孝太に気づき自分の体である木の枝らしき物を伸ばした。 「遅い、おりゃ!」 『斑匡』を真一文字に振った、バシュッと気持ちよく植木鉢の胴と足(?)が離れた。 「ギュルルルル」 植木鉢は粉々に砕けた、『灰色のコア』も砂のように風に散った。 これを見て孝太は首をかしげた。 「斑鳩、『コア』は残るんじゃないのか?砂になっちまったぞ?」 シンは残骸に近づきコアだった物を見た。 「たぶん能力が低いんじゃないのかと思う」 「と言うと?」 シンは解りやすく説明した。 「たぶんレベルの高いコアほど好きな物に取り付き形を自由に変えられるが、低いコアつまり今のような奴は取り付いた物の形そのままで形を変えるんだろう。それにコアには種類があるようで色によって形を変えレベルが高いとやられた後も別な物に取り付けるんだろうと思う」 孝太は頷きながら言った。 「ってことはこいつは弱いタイプなんだな」 「たぶん・・」 裏路地から出た時また『コアの欠片』が反応した。 「な、またかよ。今度は何処だ一体?」 周りをキョロキョロしながら辺りを見回した。 「ここじゃない・・・センター街の方だ!」 二人は走り出した、『四子神公園』の方を回りセンター街の方へ行くと居るわ居るわそこら中『コア』だらけ、ざっと数えて八体はいる。だがその姿は先ほどの植木鉢と同じようにそこらに在った自販機や車などに姿を変えていた。 「多いな、手分けして倒すか孝太?」 「ああそうだな、いくぜ!」 周りには助けを求める声や警官たちが必死に誘導していた、空にはマスメディアのヘリも飛んでいるから大事だ早くカタをつけねばならない。 シンは『コア』の動きに目をやりながら腰に刀を構えた。 (四体が一直線になった所を・・・今だ!) シンが『コア』の群れ目掛けて走った。 「散り花の『特』其壱『松葉』」 刀を抜くと真っ直ぐに突き出し一瞬にして四体の『コア』には同じ所に穴があき見事に散りと化した。 「やるねー、おっと」 孝太も最後の一体を倒してシンを誉めた。 「孝太こそ刀の使い方上手いじゃないか」 「剣道部だからな」 誉められて孝太は頭をかいた。 その時二人の足元に影ができた。 「ん?・・・うわ!」 二人が上を見ると空から何かが降ってきた。 「避けろ孝太」 シンに言われその場から転がるように避けた。 「ウォオオオオン」 起き上がり二人は降ってきた者に目をやった、その姿先ほどまでのいい加減な形ではなく体は巨大だが人の形を模していた、何より特徴的なのが『青いコア』に一つ目という事だ。 「今度のはまともそうな色だな」 孝太は笑みをこぼしながら言った。 「一つ目巨人・・・・サイクロプスか」 「さいく・・ろぷす?何だそりゃ」 孝太はシンを見た。 シンは『サイクロプス』を見据えながら孝太に説明した。 「何処かの外国の話に出てくる『一つ目の巨人』だ」 「いろいろ知ってんだなお前」 感心しながら孝太は笑った。 「ブウォオオオオ」 『サイクロプス』は叫びながら跳びかかって来た。 「感心している場合じゃない、来るぞ!」 「あいよ」 着地地点を予測して挟み撃ちにしようと回りこみながら走った。 「ぐあ?」 二手に分かれたことで『サイクロプス』は標的を見失った、そして手当たりしだいに落ちている物を投げつけた。 投げられた鉄の残骸がシンを襲う、刀で残骸を切りながら間合いを詰めた。 「くそ、バカ力な奴だ!」 「だけどおつむはそれ程でもないようだぜ」 そう言うと孝太は石を投げつけた。 「グ!」 石が頭にあたり怒りをあらわにした『サイクロプス』は孝太へ走った。 「今だ斑鳩!」 「よし」 孝太の合図と共にシンは刀を構えた。 「散り花の壱『桜改』」 シンは『コア』の周りをえぐるように切った。 「ギュワアアアアアア」 見事に『コア』のみを摘出して止まった。 「よっしゃあ!」 喜びながら孝太はシンに近づこうとした時シンは摘出した『青いコア』に刀を刺した。 「何してんだ?」 その光景を孝太は不思議そうに見ていた。すると見る見るうちに『青いコア』は刀に吸い込まれいき刀の刃は青くなり唾の桜の模様に枝が生えた。 「おおー青くなったな・・・・何で?」 孝太は面白がるように刀を見た。 「じろじろ見るなよ、ただ単に『コア』の特徴を吸収しただけさ」 「特徴を・・・吸収?」 孝太には訳がわからなかった。 「つまりな俺の刀は捕獲した『コア』の特徴を吸収して強くなるんだ」 「え、じゃあ俺の『斑匡』は?」 「無理だ」 アッサリ否定され孝太はこけた。 「あっそう」 完全に否定された孝太は負に落ちず顔を上げた。 「でもなんで斑鳩のは『コア』を吸収できるんだよ?『斑匡』との違いは何だ」 「ま、まあ落ち着けよ説明するからさ」 孝太は腕を組んだ。 「聞かせてもらおうか」 「刀って言うのはな、もともと生き物なんだ」 「生き物?」 孝太は『斑匡』を見た。 「ああ、自分に名前を付けてもらおうと必死に強くなろうとアピールするんだ。俺の場合それはコアを吸収することによって力を得るんだ」 「へえーそうなのか」 「だけど名前は造った本人がその場で彫ってしまう、だから『名無しの刀』はほとんど存在しないんだ」 孝太はシンの刀を見て首をかしげた。 「ん?ってことはお前の刀はその『名無しの刀』だと?」 「そういう事、作者が作り上げたその場で亡くなったから名前が無いんだ」 「名前を付けるとどうなるんだ?」 シンは少し考えてから言った。 「そうだな、その状態のままの刀に収まるかな?」 「ふーん」 シンは不満そうな孝太を見た、相当自分の『斑匡』を強くさせたいようだ。 「そんなに『斑匡』を強くさせたいのか?」 「そりゃあ・・・まあな、でも無理なんだろ」 シンは他の『コア』を捜すように歩き出した、孝太も警戒しながら歩き出した。どうやらまだこの近辺に『コア』が潜んでいるらしい。 「ふう・・・基本的数値はね、上げられないよ」 「基本的数値?」 この言葉に孝太は期待を膨らました。 「どう言うことだよ斑鳩、他にも何かあるのか?」 シンは袋から二つの丸い鍔を出した、それぞれ『赤』『緑』と色付けされていた。 「ほら、これを貸すよ」 二つの鍔を孝太に投げた。 「おっと・・・なんだこれ?刀の鍔か?」 「そうだ、今から一週間以内に俺はこの事件の元凶である『奴』を倒そうと思う、見つけるまで時間はある、使いこなせるようにしておけよ」 孝太は鍔を見つめながら聞いた。 「使い方は・・・どう使うんだこれ?」 シンは笑いながら意地悪く言う。 「教えないよ、自分で見つけなきゃ意味が無い」 孝太は顔をひくつかせた。 「結構ケチだなお前・・・まあいいか」 自分の『斑匡』が強くなるという期待に胸を膨らませ喜ぶ孝太、しかし横目で見ているシンの目は暗かった。 「次の客だ」 「え?」 喜んでいる孝太は目の前の敵に気づかず慌てて鍔をしまう。目の前には『サイクロプス』と同じような巨人が四体いた。 「ゴアアア!」 「よし、もう一仕事行くか!」 「オーケー!」 二人は走り出した。
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