「あー疲れたー」 四人は図書部にいた、剣道部が休みに入ったので孝太は掛け持ちの『図書部』に来たのだ。 「それにしても・・・本当に一回目の攻撃防いだの孝太?」 先ほどの勝負に唯は疑いを感じているようだ。 「おいおい、まだ疑ってるのか唯?」 「だって早過ぎてぜんぜん見えなかったし・・・」 疑ったままで信用されない孝太にシンが助け舟を出した。 「本当だよ唯、孝太は確かに攻撃を防いだ後一本取られたんだ」 唯は考えた後頷いた。 「まあシン君が言うんなら本当でしょうね」 「なんだよ、斑鳩の言う事なら信用するってか?」 孝太はふてくされた様に机に突っ伏した。 「ごめんごめん、機嫌直してよー孝太」 唯は手を合わせて孝太に謝った。 「まあいいさ、ただもう少し練習が必要だな」 孝太は自分の手を見ていった、孝太にも目標ができたようだ。 「これなら大丈夫かな」 シンが孝太を見て言った。 「何がだ斑鳩?まさか俺にも戦えってんじゃないだろうなさっきので判ったように俺はお前より弱いぜ」 シンは袋を開けながら孝太の隣に立った。 「そのまさかだよ、協力してくれ・・・」 シンは本気のようだ、孝太も立ち上がりシンを見た。 「俺なんかで役に立つのか?」 「ああ」 そう言ってシンは袋から日本刀を取り出した。シンの持っているのとは違い彫り物がされていない一般的な日本刀だった。 「これを持っていてくれ」 そう言ってシンは刀を渡した。 「ほ、本物か・・」 「ああそうだ」 孝太は驚いていた、それもそうだ竹刀や木刀しか持ったことの無い孝太が本物の刀を持って落ち着くはずが無い。 「シン君二本も刀持っていたんだ」 葵は袋を見ながら聞いた、確かに刀が二本も入るほど大きそうには見えない。 「まあね、それより孝太よろしく頼むよ」 孝太はまだ慌てていた。 「あ、ああ解った、預かるよ」 シンは刀が入るような袋を孝太に渡し、孝太は袋に刀をしまいこみ座った。 「こいつに名前はあるのか?」 刀を見ながら孝太はシンに聞いた。 「『斑匡(ムラマサ)』だよ」 「斑匡・・・・か」 感動する孝太の横から唯が言う。 「ややこしい名前だね」
ピンポンパンポン
『校内に残っている部員の皆さんは下校の時刻です、忘れ物の無いよう帰宅してください。なお明日は定期検査のため登校は不可となります。繰り返します・・・』 「行くか・・・下校時刻だ」 孝太は立ち上がり唯もカバンを持って後をついた。 「そうだね、行こうかシン君」 「ああ」 シンと葵も『図書部』を後にした。 四人は校門のところで見知った顔を見つけた、銀だ。誰かを待っているようだった。 「よお、銀じゃねえかどうした」 声を掛けられて銀はこちらを向いた。 「大勢で下校ですか?」 葵が答えた。 「うん、そうだよ。銀君は誰待ってるの?」 「ああ、ちょっとねそうだそれよりもさ今朝のニュース聞いたかい?」 「何だ?」 孝太が興味ありげに聞いた。 「この町にさ、大きなサルが逃げ回ってるらしいよ」 この一言にシンが反応した。 「その『サル』はどこに?」 銀はシンに向き直り言った。 「え、何でも『四子神公園』辺りのビルの上とかって言ってたよ」 「そうか・・・・」 黙ってしまったシンに孝太が話し掛けた。 (おい、それってまさか) 下を見たままシンが答える。 (ああ、多分『ブルース・コア』だ・・・) 葵と唯も加わった。 (どうするシン君今から行く?) 葵の一言にシンは考えた。 (いや、もう少し様子を見よう) こそこそと話す四人を銀は不思議そうに見ていた。 「まあいいや、僕もう一度校舎に戻るからさ。じゃあね」 「うん、ありがとう」 四人を代表して唯が銀にお礼を言った。 「四子神公園か、明日にでも行ってみようか・・」 シンの一言に三人は頷いた。 「グルルルルル!」 そんな四人を見ている影が、その影には赤く光る玉があった。 「ん?」 シンは袋の中の『コアの欠片』が光った気がして辺りを見た。 (気のせいか・・・?) 欠片は光ってもいなかったし周りには誰もいなかった。 「おいてくよー」 葵達が先に行ったのに気づいてシンも追いかける。 「ああ、今行くよ」 四人はその場を後にして歩き出した。 後ろのビルの上で影が動いたとも知らず。
夏休み二日目シンは家にいた、今日は学校が定期検査ということで部活はない。ベットに横になり本を読みふけっていると不意に家のチャイムが鳴った。 「だれだ?」 こんな人気の無いと言うか人が来るような事が無い場所に誰が訪ねてくるのか見当も付かない様子でシンはドアを開けた。 「葵じゃないか、どうしたんだ」 そこには葵が立っていた、葵はシンに言われて少し怒っているように見えた。 「ひどいなーせっかく遊びに来てあげたのに」 シンは頭をかきながら言った。 「何を恩着せがましいことを、とにかくは入れよ」 葵は怒った様子のまま中に入った。 部屋に案内されイスに腰掛けた、シンはキッチンで飲み物を注ぎながら聞いた。 「で、何のようなんだ」 葵はまだ怒っているようだ。シンはジュースを持ってテーブルについた。 「解ったよ謝るから機嫌を直してくれ」 そう言って葵の前にジュースを置いた。 葵はコップを持ちながら言う。 「まあいいか、今日来たのはねさっきも言った通り遊びに来たの」 「遊びにって・・・・なんで?」 葵はジュースを飲み干してコップを置いた。 「何でって、ほら一昨日言ったでしょ一緒にどこか行こうって」 そう言われてシンは思い出した。 (そういえば言ったなそんな事) 『ブルース・コア』の事で頭がいっぱいだったシンはすっかり忘れていた、現に今も敵のことを考えていたら葵が訪ねて来たのだった。 「あ、でも忙しいならまた今度にするけど・・・」 葵を見ながらシンは考えた、確かに『コア』を見つけることが最優先だが慌てて走ったって見つかるはずが無い、孝太も言っていた『慌てずゆっくり』と。 (骨抜きも大切か・・・) 葵は困った様子でシンの顔をうかがっていた。 「ねえシン君?・・・」 「よし!行くか」 その瞬間葵は満面の笑みを浮かばせた。 「うん!」 「それでどこがいい?」 葵は怪しい笑いをしながら何処から取り出したのかリュックを出した。 「何だこれ」 シンはリュックを指差した、中に手を入れ葵は四角い箱を出した。見るからにそれはお弁当箱だった。 「えへへ、これをもってピクニックに行こうよ」 「用意がいいな・・」 感心しながらもシンの顔は笑っていた。 「じゃあ行くか」 「レッツゴー!」 葵の掛け声と共に外へ出た。 「なあ葵」 「なあにシン君」 ご機嫌な葵にシンは行き先を聞いた。 「これからどこに行くんだ?」 「えへへ、駅向こうの『四子神公園』だよ、この町で一番大きい公園なんだよ」 「そうか」 ご機嫌な葵を見てシンは笑顔がこぼれた。二人は公園へ向かうため商店街へ入っていった。
時を同じくしてここは二人が向かっている『四子神公園』の林の中そこには大きな岩があった。見るからに人的なお札や注連縄がしてあった。何かの守り神だろうか? その岩の周りに囲むようにして四つの小さな岩が埋まっていた。その岩にはそれぞれ「酉(とり)」「虎」「亀」「龍」と彫られていた。四神獣。 そしてその岩に近づく三つの影、いずれも大きさは異なるが胸に赤い玉が埋まっていた。大きい玉を持つのが一体、一回り小さい玉を持つのが二体いずれも顔の形は似ていた、しかし所々が違っていた大きい玉の持ち主は足が細く腕には鋭利な刃物がついていた。もう一体は体が大きく硬そうなイメージだ、最後の一体は人形だが頭が少し大きい。 「グルルル」 「グハアア」 「ゴロロロ」 それぞれが喉を鳴らしながら近づいた、岩を壊すつもりらしい・・・だが 「ギャアアア」 岩に近づこうとした一体が小さい岩に触れたとき電気のような物が襲ってきた、どうやら結界が掛かっているらしい。 「グウウウ」 頭の大きい方が体の頑丈そうな方に目配せで指示を出した。それに従い頑丈そうな方は岩に近づいた当然さっきのように電気が走った、だが負けじと頑丈な体で体を中へこじ入れた。 ビシ、と岩が砕ける音と共に電気は止んだ、四つの岩は全てにヒビが入っていた。同時に頑丈そうな体の方は電気にやられ粉々になっていた。しかし赤い玉は砕けずに落ちていた。 「ゴロロロロ」 と、頭の大きい方が唸ると落ちている玉が見る見るうちに胸の玉と一緒になり一回り大きくなった、隣にいる足の細い方と同じぐらいに。体も変化していった、体が頑丈な大きな体になった。 二体は結界がなくなったことを確認するとい目的の岩に近づいた。ここまで来れば頭を使う事は無い、ただ岩を砕くだけだ。 一体は自分の刃物で、一体はその頑丈そうな腕で岩を砕いた。しだいに岩には亀裂が入り、ガツンと殴られたと同時に岩は大きな音と共に崩れた。 「グルルルルルル!」 「グアロロロ」 満足そうに唸り岩の下を覗いた、岩の下にはその岩が丁度入るぐらいの穴が掘られていた。砂埃で見えにくいが中には・・・・玉だ岩を砕いた者たちと同じような大きさの赤い玉が無数に埋まっていた。その数約二十。 「グオオオオオオ」 一体が叫ぶと穴の中の玉が光だし何処かへと飛び去っていった。 二体はそれを見届けると人の気配に気づいた。 「何だ今の音は!」 「林の中からだ、一体なんだ?」 警備員らしき二人が駆けつけるとそこのは砕かれた岩以外何も無かったもちろんあの二体も玉も。
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