「は〜、これからどうする?」 初めに喋ったのは孝太だった、今三人のいる部屋は窓も入り口も無い部屋だった。 いや、入り口はある。しかしその入り口は外から見ればただの掃除用具入れだ・・・・ここは『スーパー鬼ごっこ』の時発覚した葵が作った『秘密の部屋』だった。と言っても校長に無理言って譲ってもらい勝手に手を加えた部屋だ。今はシンが部活の勧誘を受けないために『図書部』として使っている。 「それよりごめんね孝太、シン君のために部活掛け持ちさせちゃって」 「かまわないよ、それに『図書部』と言っても形だけだろ」 「うん」 そうなのだ、ここ『田町第三高等学校』で部活を作るには最低四人以上の志望者がいなければ部活は作れないことになっている。 そのため『図書部』を作るために孝太と唯が形だけ志望者として加わったのだ、これによって二人は自分の部活と掛け持つ事になった、葵はそのことを謝っていたのだ。 「でも夏休み中はこっちと一緒に出なければならないんじゃ」 次に喋ったのはシンだった。 「俺も唯も好きでやった事だ。斑鳩が心配する事じゃねえよ」 そう言われてシンは黙った。 今日は七月二十四日どこの学校にもある一学期の『終了式』の日だった。基本的に部に所属する生徒は休みの間週に一回以上運動部なら三時間、文化部なら二時間は部室にいなければならないと言う校則が存在する。 「話を戻すぞ、これからどうする?唯は書道部に呼ばれて部室だし、『図書部』と言ってもやる事は無い」 暇そうに言う孝太に葵が提案した。 「だったらシン君の目的の『ブルース・コア』を探したら?」 「パス!」 この提案に孝太は即回避した。 「何で?」 「今日は暑い、動きたくないんだ」 なんといい加減な、前は協力すると言っておきながら。 「いいじゃん、チョットぐらい暑くたって・・・・」 文句を言う葵をシンが止めた。 「いいんだよ葵、協力と言ってもできる限りで良いし、それに皆を危険にさらすわけにもいかないよ」 シンはそう言うと刀を取り出した。 「でもその内手合わせ願おうかな孝太」 そう言われて孝太は自信のある表情で答えた。 「いつでもかかって来な、待ってるからよ」 そんな会話を葵はニコニコと見ていた。 「それじゃあ、唯の所行ってくるわ、そろそろ部活も終わってるだろうし」 「あ、そうだね、じゃあね孝太」 「ああ」 そう言って孝太は部屋を出て行った。 「あの二人、仲いいね」 「そうだな」 葵はシンを見た。 (・・・・・仲がいいか、私はシン君と・・・) 考えているとシンと目が合った。 「あ・・・」 「ん、どうした?顔に何か付いてるか?」 「あ、うんん、何でもない」 「そうか」 シンは立ち上がり壁に寄りかかった。 「でもどこにいるんだろうね『ブルース・コア』、それにどうしてこの町にとどまっているんだろう?」 「それは俺にも解らない・・・何か目的が・・・・だとしたら何があるんだ?」 壁に寄りかかったまま俯いて考え始めた。 (まだ探していないのは・・・駅の反対側の町と・・・・・学校・・・・) 気づくと目の前に葵の顔があった。 「うわ!ど、どうした?」 心臓をバクバクさせながら聞いた。 「急に静かになっちゃったから覗いたの、大丈夫?」 「あ、ああ、平気だ」 何か声をかけようとシンは考えた。 「な、何でそんなに心配してくれるんだ?葵」 聞かれた葵は顔を離し照れた様子で言った。 「な、何でって私はただシン君が少しでもこの町に慣れてもらおうと・・・・それで」 そこまで言うと葵は黙ってしまった。シンもどう声をかけたらいいか迷っていた。 「あ、葵?・・・」 とりあえず呼ぶと葵は顔を上げシンを見た。それと同時に心臓が速くなるのを感じた。 誰もいない教室、気持ちを高ぶらせるには十分な場所だ。 (あ、あれ・・・どうしたんだろう私・・・) しだいに呼吸も荒くなっていった。 「おい、大丈夫か葵・・顔、赤いぞ」 気持ちを押さえきれず葵はシンに近づいた。 (どうしたんだろ私、なんかボーっとしてきた) 無意識のうちに顔を近づけていた。シンは違う意味で心臓が速くなっていた。 (おいどうしたんだ?いつもの葵らしくないぞ・・・どうなってんだ) 互いの顔が近づきそして――――― とその時袋の中の『コアの欠片』が異常な光を発した。 「あ!こ、この反応は・・・まさか!」 「え?」 おしい!じゃなかった・・・・・・ゴホン、突然シンの刀に付いている『コアの欠片』が光りだしたのだ。前回と比べ物にならないくらい強い光だ。 「奴が・・・この近くに奴がいる!」 そう叫んでシンは部屋から飛び出た。 「あ・・・・」 後には葵が一人たたずんでいた。葵は自分のしたことを後悔していた。 (何やってんだろ私ったら・・・) 自分の気持ちに気づくまではまだ時間がいるようだった。
ガチャン
屋上に出たシンは辺りを見回した、しかしどこにもいない・・・・・・・・いや、いた! 「グァアアアアアアアア!」 突如後ろから唸り声を上げてシンに遅い繰る影が。 「何!うあ!」 振り向きざまシンは殴り飛ばされた、立ち上がり目の前にいたのは今までと違う形の化け物。両肘に鋭く尖った刃が突き出ていた。 (欠片の反応は強い・・・・しかしあいつとは違う) シンは目の前にいる敵を分析した、その結果目の前の相手は自分の捜している相手と似て非なる者と判断。 (似ている・・・だが胸のコアが小さすぎる) 化け物には胸に赤い玉が埋め込まれていた、しかし余りに小さすぎる大きさにシンは困惑した。それと同時に化け物の刃が襲ってきた。 「クソ!早い!・・・・」 避けながらまだシンは考えていた。 (コアを持つのは奴だけだ他は自分の体の分身のはず・・・・・・分身・・・) 「まさか!」 攻撃を避け体制を立て直す時そう叫んだ。 「まさか奴は自分のコアを分裂させたのか?」 考えの末出された結果は意外な物だった、コアを持つのは初めの一体だけで他は体の一部を変えた分身、だが目の前にはコアを持つ化け物・・・つまり本体は自分を分身させたのだ、コアごと。 「何てことだ、それじゃあ一体いくつに、うわ!」 考える暇を与えないように攻撃は続いていた。 (だが分身なら一匹の時より力は劣るはず) シンは腰に刀を構えた。 「グウォォォォォォォ!!」 分身は咆哮した後上に飛んび、引力に任せて落ちてきた。 「分身と言えど、所詮同じ生き物!いくぞ!」 上に向かって刀を振りぬいた。 「くらえ!散り花の参・『薔薇(バラ)』!」
ズシュ、グバ、
二つの影は交差した、分身の体が膨れ上がった。 音も無く渦を巻くように飛び散った。 「やったか・・・・うあ!」 見るとシンの横腹に赤い筋が一本見えた、少しずれていたら腕が取れていただろう、分身が最後に攻撃した証だった。 「さすがに分身のことだけはあるな・・・・・ん?」 振り返るといつも消えてなくなるはずの死体が消えていなかった。 「どう言うことだ」 シンは近づこうとした時、コアが光死体を飲み込んだ。 「な!何?」 目の前には赤く光る玉があるのみ、そして目の前で消えた。 「どこへ・・・・行ったんだ?・・・」
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