で、後日談。  「は?告白した?いつ?」  「一昨日かな。あ、正確には昨日の午前三時ごろだけど」  何をそんな早朝に、と古西さんは首をかしげていた。まあ決心した僕がどうしようと僕の勝手だけど、そんなに変かな。  「で、向こうはなんて言ってきたのよ。返事、貰ったでしょう?」  翌日の昼休み、僕が光夜に告白したと言ったとき、古西さんはリストカットをしようとした。そんなに非現実的だったのかな。止めずに見てたけれどそれで現実だって理解した時は、僕はそんなに薄情者なのだろうかと、自分を責めたくなった。  「返事?貰ってないよ、僕の勝手な言い分だし」  「は?貰ってない?なにそれ!」  「いや、なにって・・・」  「普通は、告白したそのときに返事を貰って理解しあうものでしょう!それをなに、保留?後送り?何贅沢かましてんのあの馬鹿!」  いや、そんなことを大声で言われると、大衆の目が気になると言うか、流石に彼女を押さえ込まないとまずい気がする。  「落ち着いて古西さん。光夜はそれで良いんだよ、たぶんまだ気持ちが固まっていないだけだから。大丈夫、光夜は異性に興味もないし、同姓にも興味がないもの、オマケに近寄ってくる人もいないから、僕の選び放題なんだよ」  「・・・・あんた、逞しいわね」  古西さんは僕の肩に手を置いてため息を一つ。  「人の話題で勝手に盛り上がるな」  と、そこに光夜がやってきた。同時に、十戒のように人の波が引いていった。おお、恐るべし光夜。  「おめでとう、八神君。素敵な相方が出来て」  「・・・・その話題か。俺は、明を片傍に置いたつもりはない。こいつが勝手に言っているだけだ」  「うん、僕が勝手に言ってるだけだね」  でも、僕の気持ちは本気だもの、絶対に不変のね。  「あんたたち、それでいいの?」  「気にはしない」  「僕は努力する」  僕が言うと、光夜は教室に戻るといって歩き出した。  「光夜、光夜は、今の僕のこと嫌いかな?」  最後に、それだけが聞きたかった。ぴたりと止まると、光夜は首だけ振り返ってこう言った。  「人間のお前も、悪くはない。少しは、忙しくなるかもしれないがな」  それだけ言って、光夜は教室に戻っていった。  古西さんは首を傾げたけれど、僕は、もっと光夜が好きになった気がした。  さあ、今日も一日、普通の高校生活を続けようね、光夜。 
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