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探求同盟−死体探し編− 作者:光夜

第35回   35
 横山さんが意識不明の重体に陥ったという情報は、次の日のホームルームのときから知れ渡った。そのときの小西さんは、なんともいえない表情で酷く、苦しそうに見えた。
 おかしい、おかしすぎる、昨日の彼女の容態からして、意識不明の重体になる要素なんて微塵も見当たらなかった。僕たちが帰った後、夜の検診で医者が下手な処置をしたか、それとも別な原因があるはず。
 医者が下手をするなんて、いくら最近は医療ミスのニュースが多いといっても、早々に起こるようなことではない。第一、意識が不明になるような処置を、たかだか骨を折った患者ごときに施す馬鹿はいないはずだよ。ということは、やっぱり・・・・
 「横山さんが意識不明の重体だって・・・・」
 「知っている。原因は、昨日の残滓の持ち主か、それとも」
 休み時間、僕と光夜は校舎裏で話し合っていた。というのも、いつものことだけれど、光夜の足元には先ほどまで威勢よく拳を振るっていた三年生たちの体がある。喧嘩のあとだったということ。
 光夜は横山さんが怪我をした原因を知っている。というよりも理解しているといった方がいい。でも、今の反応からして、何か別なことを考えているようだけれど、たぶん教えてはくれないと思う。
 「光夜は、昨日の今日で意識不明の重体になる可能性があると思う?」
 「馬鹿いうな、たかが骨折程度でそんな事になるかよ。脳の検査も異常がなかったってんだろう?だったら、外的要因しか、考えられねぇ」
 それは、人ならざる者の仕業だということらしい。だめだ、それじゃあ、僕にはどうしようもない。それに、光夜にそんな事をさせてはいけない。だって昨日誓ったはず、光夜は、僕が救う。彼には、普通に生きてもらうんだ。
 「横山さんを、助けないと、でもそれは光夜にしか出来ないんだよね」
 「札を持って、経を読んで、祈りを乞うたとしても、俺が認識した以上は規格外だってことだ。悪いが、人外相手は人間には出来ねぇってことだ。面倒くせえな、ったく」
 頭をかきながら、校舎へと戻っていく光夜。だめだ、このまま話を終わらせるのは良くない。光夜は、選択肢を勝手に狭めている。僕にだって彼を手伝うことは出来るはずなんだ。だから、だから―――――
 「僕は、光夜の片腕にはなれないのかなっ」
 「勘違いするな。俺は人間を辞めたりはしねぇ、お前がそんな事で無理をする必要もねぇ。俺はこれから、横山のところに行く。どうせ部屋には入れやしねぇが、外で見張るくらいは出来る。
いいか、明、お前にはお前にしか出来ないことがある。それは、俺には絶対出来ないことだ。片腕とか拘るんじゃねぇよ、お前が骨の在処を暴かなけりゃ、次に進むことは出来ねぇんだっての。いいか、俺のことは心配するな、去年のお前にもどれ。ただ目的のためだけに、お前はお前を活用しろ。
それが無理なら、これを使え」
光夜は、ポケットから荒っぽく取り出すと僕の方にそれを放り投げた。それを受け取ったことも確認しないまま、光夜は視線を外してしまった。
 そうして今度こそ、光夜は校舎の中へと戻ってしまった。残された僕は目的もなく、足が動いていた。僕が、僕に出来ること、それはだいぶ久しい言葉かもしれない。
 僕に出来ることは、確かに判りきっている。だって、僕は骨を盗んでいった犯人を捜すのが、僕に出来る最大限の協力だから。ああそうか、忘れていたかもしれない。
『探求同盟』なんだ、今の僕たちは。『書籍同好会』じゃない、だから相手に要らない心配を与えている暇はない。光夜は、切り替えだけは早いんだよね、実際。僕が考えている間に、解決できるものはもう終わらせられるくらいに、彼は独りで出来ることがある。
違う、そうじゃない。どうしちゃったんだろう、僕は・・・・やっぱり慣れない事を念頭に置いたからかもしれないね。でも、光夜は、脆すぎるよ。本当に。
「光夜、無理だけはしないでね」

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Novel Editor by BS CGI Rental
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