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探求同盟−死体探し編− 作者:光夜

第20回   20
 「今日も、面倒な仕事か」
 放課後、いつものように部室に向かっていた。どうせ今日も本と書類の睨めっこだ。気を張る必要はない、適当にやればいい。それよりも―――――
 「明、どこだ?」
 静寂、室内の電灯はついている、その前に鍵も開いていた。つまり、明はここにいたということになる。だが今はいない。隣の物置になっている部屋には一分と入っていられないだろうから、論外だとして、自販機に何か買いに言ったのか?
 「ふん、まあどうでもいい」
 俺は明が来るまで待つことにした。どうせすることは限られている、適当に本と書類を手にとってペンも―――――、とそこで手が止まる。なんでこんな事をせねばならない、と思った。
明が言うには、この仕事は本来の明の担任のものらしい、それを同好会と銘打って生徒にやらせているそうだ。仕事量の多さに耐えかねて、出来ることは生徒にやらせるということに俺は異存はない。社会勉強の一環になると教師も考えたのだろう。
だが、問題はそれをさせる期間にある。一年以上もそれを行わせるのはやはり不当ではないか。とはいえ、この作業があるために、俺はこうしていられるわけだ。今更文句を言う必要はない。だが、ここで俺が進んで書類を書けば、俺がその教師の仕事に加担したことになる。生憎と人の役に進んで立つつもりはない。
俺に指図できるのは正当に俺の上に立つ人間だ。言うなれば現在二人それを上げられる。一人は爺さんだ。俺の扶養者であり保護者、確実に正当に俺の上の立場にある。
もう一人は、明だ。なにせここの部長だ、俺は部員だ、ならば指示を受ければ作業せざるを得ない。担任に頼まれた仕事を明が責任者として担い、部員の俺が部長の指示に従い手伝う。これが正しい手続きといえる。
つまり、俺が勝手に手をつけることは出来ない。いや、明に言わせれば「やることはいつもと同じなのだから、やっててくれればいい」と、そう言うだろうが、だがそれは暗黙の了解ではない。俺は指示を受けていない以上は何も出来ない、故に―――――
「眠い、どうせいないのなら、しばらく遅れてくるのもいいだろう」
昼間はあまり寝れなかったからな、一時間ばかり静かなところで寝ていたいものだ。そうと決まれば、さっさと出て行く。静かな場所など限られている、俺はそこへ向かって廊下を歩き出し。
「お、八神じゃん、久しぶり」
「・・・・大塚か」
廊下を歩いているとき、明の教室の前で大塚と出くわした。とりあえずほとんど面識のない人間とは関わりたくないところだ。だが、大塚はその性格から俺に話しかけてきた。
「桐嶋から聞いているか、俺があのキーホルダーのことを一緒に調べてるって?」
「・・・・いや、初耳だ」
「そっか、まあいいまあいい。んで、だ、あのキーホルダーの飾りなんだがな、どっかのインディーズバンドの連中が作ったオリジナル商品かもしれないって、さっきメールで帰ってきた」
「そうか、すまない」
「いいっていいって、恩人に報いるのはせめてもの忠義だ。んじゃ、桐嶋に伝言よろしくな〜」
そう言って、大塚は鞄を片手に反対へと歩いていった。一年で、随分と変わった奴だ。はじめて会ったときは、真っ先にぶん殴る人間に見えたはずだが、今は普通に俺に声をかけてくる数少ない人間かもしれない。
まあ、どうでもいい。ともかく、飾りのヒントも得た、だが今は寝るのが先だ。俺は目的地へと足早に向かった。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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