以上が大まかな内容である。つまり先ほどまでケンカしていたのはボーっと観察なんかしないでローゼンも応戦しろと言うのが孝太の意見で、重装備が足りないのと、二人で十分と言う考えのもと動かなかったのがローゼンということだ。 「まあ、そのくらいにしておけ二人とも」 並べられたイスに横たわっていたシンが二人をなだめるために起きた、と言っても起こっていたのは孝太だけだが。 「大丈夫なのシン君?」 「ああ、ありがとう葵」 戦闘のさい、硬い身体を壊すために大きく体力を消費したシン、その反動で少しばかり動けないでいたのを二人で運んで葵に看病してもらったのだった。 孝太はただ起こっていたのではない、シンがつくってくれた好機を油断で逃してしまった自分に腹を立てぶつけていただけだったからだ、自分が素早く行動していればこんな事には、と。 「孝太、お前の気持ちはありがたいよ、でも少し落ち着いてくれ。俺は大丈夫だから」 シンも孝太の起こっている理由が自分にあるのを知っているが故、なだめているのだ。 「うっ、わかった」 孝太もシンに言われては言葉を出せないのか黙ってしまった。 「確かに逃がしたのは大きな失態だったな」 それを聞いて場の空気が重くなった。 「だけど変わりに判ったことが二つある、コアはまだ完成していない、変化能力まで身に付けつつあるコアだが、知性が低いみたいだからまだ何とかなるさ、今日の結果を見れば一目瞭然、俺と孝太の連携でも十分足りるさ」 場を明るくさせようと、シンが朗報を口にする。が。 「ですが、アレが大量に責めてきた場合はどうなります?一体に致命傷を与えるだけでも一苦労でしたのに、それに今回の一軒で確実に大量生産されますよ、探知不可能のダイムは、知性だって高ければ良い訳ではありませんし腕力で壊すのですから」 ローゼンが、悪気は無いのだろうが痛い事実を口にした、それを聞いた孝太がまた立ち上がる。 「お前な、せっかく斑鳩が場を和ませようとしてんのに何でその数倍悪い事を口にすんだよ!」 ダンと机を叩いた。 「まあ、仕方ないさ、事実だ」 「斑鳩・・・」 笑って誤魔化そうとするがどう見ても無理に笑っているとしか思えない、そんな辛そうな顔を孝太は直視できなかった。 孝太とシンの隣にいる唯と葵も同じだった。 「それにもう一つ朗報があるだろう」 「え?」 下げた頭を孝太は再び上げた。 「孝太、飛び出す刃のことだよ」 「・・・アレがどうした?」 「お前片手で出せるようになったじゃないか」 そう言われてあっと孝太は思い出した。 「そうだった、俺片手でアレを出せたんだ」 「日ごろの鍛錬が効果に出たんだよ、良かったなこのままなら本当にアレを操れるかもしれない、そうすれば大きな戦力になる」 事実、戦闘では逃げられてしまったが逃げなければやられると言うことを敵に認識させたのは孝太の横一線があってこそ、そう考えればこの出来事は大きな戦力と言える。 「そう・・か?」 照れているのか頭を掻きながら否定的に声を上げた。 「そうだよ孝太、いい事なんだからそんなに照れないの」 孝太の心情に気づいた唯がからかい気味に言った。 「て、照れてなんかねえよっ!」 図星が恥ずかしいのか慌てて唯に否定した。 「はいはい」 それを軽く流す唯、孝太はううっと唸った。 「そうですね、ではもう一つよい話しをしましょうか」 そういってローゼンは懐から木箱を取り出した。 「なんだそれは?」 ローゼンはその箱を机におき話し始めた。 「斑鳩君、だいぶ落ち込んでいるのは解ります、なにせあのような者たちが現れたのですから当然の反応でしょう」 その話を四人は黙って聞く。 「加えて力を増したダイム達はあなたの欠片には反応しない、これでは被害が出てこなければあなたは動けない事になる」 「何が言いたい・・・」 シンは睨むように遠まわしな話に質問をした。 「水野さん、その首飾りはダイヤモンドでしょうか」 質問はそっちのけで今度は唯の首飾りの話に変わった。 「おい、コアの話はどうした!」 孝太は見えない話に怒鳴りを入れたがローゼンはいつもの感じで続ける。 「今話します、少し待ってください、それで水野さん」 もう一度唯に向き直る。 「これは、孝太から貰った偽物だよ、ね」 「あ、ああそうだ、買い物のおまけみたいな物だ」 それを聞くとローゼンは興味深そうにおまけの所に反応した。 「まあそれは後にして、そうですか偽物、しかしそれはある意味本物ですね」 「え、どう言う事?」 葵が矛盾した答えに思わず聞いてしまった。 「そうですね、こう言うのはどうでしょうか、そのイミテーションはダイムと言うのは」 「・・・・」 「・・・・」 「・・・・」 「・・・・」 どう言う事だ、と言う言葉が浮かんだ。この首飾りがコア、何故そんなものをあの老人はくれたのか、何故そんなものを持っていたのか。 「うそ、だろ・・・」 「本当です、そこから微かにダイムの反応がうかがえます」 そう言うと、ローゼンはまた懐に手を入れた。取り出したのは、コア。 「これは先日サンプルとして手に入れたダイムです、これを近づけて見ましょう」 そう言って、コアを首飾りに近づける、すると 「あ、光った」 「・・・・コア」 シンはまだ信じられないと言う顔をしている。 「じゃあ、これもあんなふうに化け物になるの」 唯は首飾りを握ってローゼンを見た。 「いえ、それには物を取り込む能力はありません、ですが別な方法もあります」 「別な、方法?」 ローゼンは最初に見せた箱を持つと反対側を見せた。 「あ、同じ、形」 唯は首飾りと箱に彫られた形を見比べる、どう見てもぴたりとはまりそうな形だ。 「ローゼン、それはなんなんだ?」 シンは痛みをこらえて箱の前まで来た、多分開かない事は目に見えている、そしてアレが鍵と言う事も。 「見ての通り、この箱をあける役目がそのダイムにはあるんです、確かにそのダイムにも先ほどの新種を感知する能力はありますが弱すぎです、ですからこの中のものが必要なんです」 シンはもう一度箱を見た。 「何が入っている」 「マスター・ダイム、ダイムを統一しダイムを生み出すダイム、危険な上に制御不能となりこの箱に入れられどこかに飛ばされたと」 「何でそれをおまえが持ってんだよ?」 孝太は誰もが聞きたい疑問を聞いた。 「先日海へ行ったときに岩場に影に落ちていました」 「またいいかげんな」 「研究材料として本部に報告はしていますが、鍵が無いのでそれ以上の報告が出来ず困っていましたがようやく見つけました」 そう言って唯の首飾りを見た。 「だがもしあけた時はどうなる」 シンは箱の取り扱いを聞いている、その横で葵が振ったり転がしたりして遊んでいる。 「わかりません、ですが生み出す以外にはこのダイムに能力は無いですから慌てる事は無いと思います」 「それじゃあ開けようよ」 「「「え」」」 言うが早いか唯は首飾りと穴を同じむきにしてはめ込んだ。 「唯!なにやって・・・っ!」 孝太が止めに入ろうとしたが既に遅い、はめ込んだ瞬間カコと何かが外れる音がした。 「開きましたね、それではそれは皆さんで使ってください、私はそれを観察して本部に報告するので、あ、くれぐれも壊さないように」 ローゼンは言いたい事を言いながら出口へと歩く。 「私は用事が出来ましたので、これで。所で藤原君その首飾りは何処で?」 「え、街のカジノ専門店だ、それが」 「いえ、どうも。それではみなさんまた」 そう言って足早にローゼンはその場を後にした、残った四人はローゼンも気になったがそれよりも箱がきになった。 「今の所異常なし、開けるか斑鳩?まだ閉める事もできるみたいだし」 孝太はトントンと箱を叩いてどうするかをシンに聞く、シンもどうなるか判らないこの状況で少し考えている。 「・・・確かに、これを開けると何が起こるか判らないがこのまま立ち止まるのもよくないと思う。こう言うときは俺があけよう」 「そうか、じゃあ頑張れ」 開けると決まったとたん、孝太の頑張れの声が遠くなった気が。 「なにしているんだ孝太」 「いや、何か起こるとまずいからさ一応防御」 孝太は離れた所で横長の机を盾にして隠れている、見れば唯も既に孝太の隣で防御態勢を取っていた。 「・・・葵も行くか?」 「あはは、行かないよ、だってシン君一人じゃ心細いでしょ?」 「ム、そういうわけでは、まあいいか」 葵はシンの袖を掴みながらこの場にいることにした。 「よし、開けるぞ」 「うん」 箱を持って右手で蓋を掴む、それをかたわらで見守る葵、遠くの方で見守る孝太と唯。 「それっ!」 すっと乾いた箱の音と共に蓋が開かれた、その瞬間時が止まるかのような錯覚を憶えた、隠れた二人に問わずシンと葵まで息を殺した。 「・・・・」 「・・・・」 「・・・・」 「・・・・」 時間にして一分弱くらいだろう、だが箱からの反応は無い。 「あ、あれ?」 「何も起きない、ね」 何も起きていないということは空なのか?と思い立ち上がり中を覗く、だがそこにはちゃんと入っていた、白―――透明と言った方が良いか、透き通ったクリスタルにも似たピンポン球サイズのコアが在った。 「これが、マスター・ダイム・・・」 その不思議な輝きにシンは手を伸ばした。 「お、おい斑鳩?・・・」 その光景をいまだ遠目から除いている孝太が大丈夫なのかと言った様子で呼んだ。 「大丈夫みたいだ、ほら」 一通り確かめた後クリスタルを孝太に向けた、大丈夫と解り二人は物陰から出てきた、そしてまじまじとシンの持っているマスター・ダイムを観察した。 「へー、これがそのマスター何とやらか・・・・」 「綺麗だね、宝石みたい」 確かに唯の言う通りこの輝きは宝石のそれに似ている。 「でも、これをどうするの?」 同じようにマスター・ダイムを見ていた葵が尋ねてきた。 「刀にははまらないし・・・・とりあえず持っておこう」 「そうしとけよ、どの道こいつがないと俺らは敵の居場所が判らないわけだし」 孝太に言われシンはそうだなと頷いた。 「ローゼンはローゼンで勝手に帰りやがってどこにいったんだか」 続けて孝太はいそいそと帰っていったローゼンへ文句を垂れた。 「確かに、孝太がカジノ店の話をしたとたん・・・・あ」 「「「あ」」」 四人は同時にある考えに至った、と言うよりも気づかざるをえなかったと言うことか、ローゼンは多分・・・・ 「その店に行ったな」 「だよね、もしかして知り合いが経営しているのかな」 「ええ〜あのお爺さんが?」 「いや、案外そうかも知れねえな」 様々な憶測が流れた。どれも当たらずも遠からずと言った具合ばかりで自分達で悩んでしまっている、実際はどうなのだろうか。
|
|