午後十二時半―――昼休み。
「で、逃がしちゃったの」 唯が呆れた顔と声で目の前で肩を落とす孝太に言った。 「何てこった・・・」 斑匡を抱えながらイスにだれる孝太、現在部室(秘密の隠し部屋)に集まったメンバーは先ほどの戦闘での失態を反省中であった。 「そうですね、やはりあの時藤原君が斬りかかるべきでしたね」 ちゃっかりとローゼンもこの部屋の一員になってたりする、と孝太が立ち上がりローゼンに言った。 「何で俺なんだよ、手が空いていたのはお前も一緒だったろうが。ああいう時はお前が重火器でもって相手の体力を奪えば良かったろうが!」 「そう言われてもですね、生憎本日はそう言った武器の持ち合わせが無くて」 困りました、と言わんばかりの顔で肘をつくローゼン。 「じゃあアレは俺の責任か!?そりゃあ突っ走ったのは俺かもしれないが―――」 と、さらに何か言おうとした時孝太の口が止まった。 「・・・・いや、怒鳴った所でどうこうなる事じゃないか」 「孝太・・」 落ち込みながらイスに座る孝太を唯は心配そうに見ていた。 今話しているのは既に言った通り先ほど起こった町での戦闘のことである。何があったのか説明しよう。 「そんじゃまあ、行きますか」 そう言って孝太は暴れん坊へと走っていった。 タタタ、とアスファルトを走る、流石の力馬鹿でもこのぐらいの事には気づくのは当然だ、走ってくるのはどう見ても自分の敵。そう認識したコアは戦闘態勢はいった。 「おりゃあ!」 ダンッと飛び上がった孝太は馬鹿正直なほどその鋭い刃をコア目掛けて重力と共に落とした、が。 ガキイイイン、という硬い音がしてそれは弾かれた。 「え?」 ギリギリとコアの腕と斑匡の刃が音を立てる、間近で見ればその違いが判るだろう、先ほどよりコア身体の色が少しだけ黒くなっている、まるで鉄のように。 「何だこいつ、硬えぞ!」 「何ですって、身体が硬い?」 「タイラントじゃない奴の身体が硬いわけないだろう」 後から走ってくるシンが孝太に否定の声を投げる。 「だったら自分で確かめ、ろ!」 ダンと孝太はコアの硬い体を蹴って後ろへ飛んだ。 「ああ、そうする!はっ!」 入れ替わりにシンが真正面から刀を振った、だがそれも鈍い金属音と共に防がれた。 「くそ、何だこれは!?」 シンの刀は右腕でいともたやすく防がれてしまった、だが負けじとシンも喰らい着く。 「いけない、右腕に集中しすぎです」 ローゼンがそう思った瞬間、コアはあまっていた方の左腕を振り上げた、いくらなんでもあの力で人間を殴れば――――― 「バカ野朗、グロいオヴジェにでもなりてえのか、しゃがめ斑鳩!」 「え?」 孝太の声に気づくと目の前に左手。 「うわっ!」 間一髪、右の米神をかすったところで腕は何も無い所を殴った。同時に刀を押さえていた右腕もシンがしゃがんだ瞬間刀がずれて前のめりに身体がぐらついた。 「よっしゃあ!」 好機と見た孝太は斑匡を片手で構えた。 「これで駄目ならもう終わりだな」 勢いよく横一線に斑匡を振った、飛び出たのは緑色の刃だ、日々の特訓のおかげで孝太はついに片手での刃の飛び出しに成功したのだ。 「よし、貫通しろおおおおお!」 よろけたコア目掛けて緑色の刃は飛ぶ。 「グアア?」 どうしたのかと顔を上げるコア、だがとき既に遅し目の前には刃が。 ザシュウウと言う音がして右腕が落ちた。 「?」 頭が足りないのだろうか、痛みを感じさせない顔でなくなった腕と落ちた腕を見比べていた。 「今だ斑鳩、もう片ッぽ落とせ!」 「言われずとも」 そう言うと、刀を逆手に持ち体制を落とす。 「散り花の・葉「紅葉」!」 シュッとシンの身体が一瞬だけぶれた後コアの後ろに現れた。 時間差でバシュバシュと言う何かが裂ける音がした。 「おお、すげえ」 目の前で見ていた孝太がコアを見て驚いた。 コアの右脇腹が何か大きな丸太で貫かれたような大きな穴がいていた。 「はあ、はあ、あ―――」 当然のようにコアは何が起こったのか認識できてないが、シンは違った硬いコアの身体を突くために結構な体力を消耗したようだ。 「グウゥゥ・・・」 だがここでバカが気づいた、自分の結構なありさまにまずいと感じたのか自らの身体を溶かし始めた、まるでコールタールのように。 「な、何だ?」 「逃げる気ですかね?」 はあ!?と孝太は声を上げた、そんなことされてたまるかと言う感じで熔けていくコアに走った。 が、勢いよく突き刺したのは、アスファルト。 「くそ、逃げられた!」
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