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奇妙戦歴〜文化祭〜 作者:光夜

第7回   第一週4
 「あーあ、こりゃあひでえな」
 商店街の一角についた二人、そこで孝太が漏らした第一声がそれだった。
 「そうですね、周りが滅茶苦茶に壊されていますね」
 周りの様子を見ていたローゼン、ふと何かに気づいたように首をかしげる。
 「おかしいですね」
 「なにがだ?」
 ローゼンは壊された店を見た後孝太に振り返った。
 「いえ、なぜだか食品店だけ壊されていませんか、ここは八百屋ですし、向かいはカフェ、八百屋の二つとなりは食肉店、あと人が居ないのも気になりますし」
 「大方腹でも減っていたんだろ、人だって・・・」
 と、そのとき瓦礫の奥のほうが動いた。
 「!」
 それに気づいたローゼンはその場から飛びのいた、同時に瓦礫が大きな音を立てて盛り上がり吹き飛んだ。
 「おっと、出やがったな肉食コア」
 孝太は土煙で見えない敵に向けて斑匡を抜いた。
 「さて、鬼が出ますか蛇が出ますか」
 ローゼンも懐から自分の相棒とも言えるリボルバーを取り出す。
 「ハアア―――、ハアア――――、ア」
 煙の中から興奮を抑えるようなうめき声が響いてきた、声の大きさからして本体も大柄だと言う事がわかる、イメージはサーベルタイガー。
 「煙が晴れると同時に行きますよ、いいですね」
 任せておけと孝太は頷く。
 煙が晴れていく、徐々に中にいる何者かの姿がシルエットとなる、サーベルタイガーと言った、だが見えてきたのは人型の形をしていた。
 「おいおい、とんでもない奴が出てきたぜ」
 「そのようですね、獣――――と言うよりもうヒトですねあれは」
 瓦礫を踏みながら出てきたのはヒト、いや見た目こそヒトかもしれないがどう見てもアイツを連想させるいでたちだ。
 「タイラント?」
 「違いますね、似ていますが・・・・同型でしょうか」
 目の前にいるのは紛れも無くあのタイラントとそっくりなコア、そいつは孝太とローゼンをうかがうように見ている、どちらも動かない。
 「どうする、アイツと似ているって事は力もそれなりに似ているのか?」
 「わかりません、確かめ様にもうかつに近づけばどうなる事か」
 「だよなあ」
 どうしたものかと考えを巡らせているとコアがのそりと動き出した。
 「あ、動き出した」
 「攻撃をしてこない僕等を見て戦闘対象から外したのでしょう、知能はそれ程ない様ですね」
 ふ〜ん、と孝太は足元に落ちていた小石を拾い何を思ったか遠ざかるコア目掛けて大きく振りかぶった。
 「ギャッ!?」
 見事後頭部にガツンと当たった、頭を押さえながらキョロキョロと辺りを見回すコア、孝太とローゼンにも振り返るが見てみぬフリをして誤魔化している。
 「グウゥゥゥゥ?」
 首をかしげてまた自分の進行方向へと進みだした、孝太は横目でチラッと見たあと向き直った。
 「どうやらあいつ」
 「力と本能しかないようですね、しかも力の使い方が雑です」
 コアの観察をしていると丁度次の目的を見つけたのか道に添えつけてある自動販売機に視線を移した。
 「今度はあれを壊す気か?」
 「そのようです」
 そのままじっと観察、コアは大きく腕を上げると自販機に向かって振りおろした。
 「ガアアアアアア!」
 楽しいのか大声を上げながら自動販売機に大穴を開けた、腕を引き抜きまた叩きつけるほんの二、三回で販売機はボコボコになった。
 だがその壊す過程が雑である、それ程に力を持っていながら大穴を開けたあと別な所にも穴をあけている、実際自販機はボコボコになってはいるが原形を止めている、そんなことなら腕を入れたまま放り投げればもっとオヴジェのようなスクラップにできたと言うのに穴をあけるだけでそれ以上の事は無かった。
 「タイラントとはえらい違いだな」
 二人が観察している後から別な声が聞こえて来た。
 「よお斑鳩、お前もそう思うか」
 「ああ、遠目で見たときはまさかと思ったが、近くに着てみれば荒っぽいだけの下級コアだ」
 その会話にローゼンも頷いて答えた。
 「そうですね、多分アレは実験用のダイムですね」
 実験用と聞いて二人は顔を見合わせた。
 「いままで斑鳩君に探知されていた事で上手い具合に事が運ばなかったと考えたイリスはこう考えました、ならば新しいダイムをつくろう、と」
 この言葉にシンはピクッと反応した、それが今目の前にいる探知不可能の水色のコアを持つ暴力者のことだから。
 「そして実験のためにまずは探知不可能のダイムを装備、と言うよりも進化させた乱暴者を町に放った、多分この現状をどこかで観察している事でしょうね、成功の暁にはこのタイプが大量に来るかと・・・」
 イリスが近くにいると聞いて二人は慌てて周りを見た。だがそれらしい影は無い。
 「なるほどな、それでアイツか」
 孝太はさらに車を壊している暴れん坊を見た、やはり車の壊し方も雑だったのを見て少し溜め息が出た。
 「ふう、仕方が無い、暴れ方が雑でもこのままでは町の被害が広まるしな、片付けよう」
 「そうですね、始めますか」
 そう言ってシンは刀を抜いた、ローゼンも自分の相棒(銃)に弾を装填させる。
 「んじゃまあ、行きますか」
 孝太は肩に置いていた斑匡を構えなおし走った。
 真昼の町に金属音と銃声が入り混じった。


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Novel Editor by BS CGI Rental
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