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奇妙戦歴〜文化祭〜 作者:光夜

第6回   第一週3
 階段の取り付けも終わり完成したステージを五人は喜ばしげに見ていた。
 「やっと完成か、結構重労働だったな」
 「そうだね、でも五人でやったら早く終われたよ」
 シンと葵がステージの上で完成の喜びを口にしている、と横から同じくステージに上っている孝太が話し掛けてきた。
 「まあ喜ばしい事もあれば最近は物騒な事も多いらしいぞ」
 「ん?何のことを言っているんだ孝太」
 シンは孝太に振り返って眉をひそめた。
 「何だ、今朝のニュースは見てなかったか」
 「ああ、今日はわりと急いでいたからな」
 「ほう、寝坊しかけていたのか?」
 そう聞くとシンは苦笑しながら頭を掻いた。
 「いやまあ、言ってしまえばそうだが別に夜更かししたわけじゃ――――」
 「大方、愛しい誰かの事でも考えていて眠れなかったんだろ」
 孝太はイタズラっぽくそう言うとシンは顔を少し赤らめた。
 「なっ!・・・いや、そうじゃなくてだな、俺はそのなんと言うか・・・・」
 慌てて何か弁護を計ろうとしている、冗談のつもりで言ったらしい孝太も図星に気づき、くくっ、とのどで笑った。その会話を横で聞いていた葵も恥ずかしそうに俯いている。
 「孝太、話が反れてるよ、物騒な話は何処に言ったの?」
 そんな二人を助けたのは唯だった、いつの間にやらニュースの話がシンの話に変わっていたようだ。
 「ああ、そうだったな、俺が言いたかったのは最近起きている破壊騒動って奴だ」
 「それなら知っている、昨日のニュースでも言っていたからな」
 実はここ最近隣町で色々な物を壊すという悪質な事件がおきていた、警察も犯人の特定が出来ず困り果てているという事だ。
 「店先の商品やシャッター、あまつさえ車までボコボコに壊してるって言う事らしいが駅の向こうまで被害が出ていやがるんだ、どう考えてもこりゃあ」
 「コアの仕業かな」
 そう言ったのは葵だった、車をボコボコになるまで壊すという荒業は確かに人間では難しい、だがシンは――――
 「いや、コアの仕業じゃない」
 違うと否定した。
 「どうして違うんだ?あれはどう見ても人間業じゃあ・・・」
 「そう言われても、この欠片が反応を示さないんだ」
 すっとシンは持っていた刀を見せる、コアの反応を察知しその強さをも感知するコアの欠片、大ボスのタイラントの欠片にはそういった信頼性がある。だがそれが万能とはいいきれるのだろうか・・・・・
 「確かに、ですがいつも必ずそれが彼等の出現を教えてくれると言い切れるのですか」
 そう言ったのはローゼンだった。
 「彼等は、いつも現れる貴方達に嫌悪感を持っている、そう考えると自然とダイムの性質も変わってくると思いますが」
 ダイムとローゼンは言った、彼の組織ではシン達の言うコアのことをダイムと称している、だから会話の不自然さはお互いが理解しているので生じない。
 「どう言う事だ」
 「簡潔に言うと、最近街で暴れているのはダイムの生き残りです、先日も一匹葬りましたが」
 コアが出たと聞いてシンは黙ってしまった。
 「それはいつだ」
 「一昨日です」
 一昨日と聞いてまた黙り込んでしまった、その日持っている刀からはコアの反応は一切無かった、どう言う事だとじっと欠片を見つめた。
 「彼等は貴方達に気づかれないように自分達の性質を変えているんです、性質が変わってしまえばその欠片にも反応はしません、全く別なダイムに進化したのですから」
 すでにローゼンの言い方は確定になっていた、そのはっきりとした言い方がシンの不安をあおる。
 「なら俺はどうすれば!」
 見れば手が震えている、これからの自分の在り方の考えからくるものだろう、どうやってコアを見つけるか、それが重要。
 「ですが、これはあくまで推測、本当にそうなったかは私自身にもわかりません」
 先ほどの言葉の否定を本人がしてくれた事によりシンは少し肩の力が抜けた。
 「どうやら、それを確かめる材料が来たようですから」
 「え?」
 呆けた声の後、ドカンと街の方で破壊音が響いた。
 「なっ!?」
 「そんなっ・・・・!」
 孝太は驚きシンは欠片からの反応が無い事を驚きながらその破壊音の方を見た。
 「行きましょう」
 「おう!」
 ローゼンと孝太は町のほうまで走り出す、シンも走り出そうとしたが葵がそれを止めた。
 「シン君!」
 「え?どうした」
 振り返ったシンの顔はどこか落ち着かない様子だった。
 葵はシンに近づき笑いながら言った。
 「欠片の事は確かに大切だけど、シン君はいつものままがいいよ、じゃ無いと何も守れない」
 「あっ・・・・・」
 言われて自分が慌てている事に気づいた、確かに今は欠片の事で思案している時じゃない、目の前に標的がいるのだからそれを臆せず倒すのが今の自分のする事。
 「わかった、欠片の事は帰ってきてから考えよう、今は町のことが大事だ」
 「うん、それでこそシン君、いってらっしゃい」
 そう言って軽く自分の唇をシンの唇に触れさせる。
 「ああ、行ってくる」
 笑って、シンは孝太達に追いつくように走り出した。それを笑顔で葵は見送った。
 「さ、あたし達は教室に行こうか」
 「そうだね、あ、でも三人が出かけちゃった言い訳はどうする?」
 「・・・・遊んでいたらボールが坂まで転がっていって追いかけた」
 おいおい・・・・・だが、呑気な反面唯は自分の首にあるダイアのイミテーションの光に気づいていない。



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Novel Editor by BS CGI Rental
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