■ トップページ  ■ 目次  ■ 一覧 

奇妙戦歴〜文化祭〜 作者:光夜

第20回   第二週10
「お咎め無しだったね、本当に」
職員室を出たとき葵が言った。呼ばれたときは確実に説教を喰らうという事を五人は覚悟していたが、諸注意のみですんだのは不思議だった。
「やっぱりお祭りが近いからかな」
唯が腕を後ろに組んでそう言った。多分そうだろうと四人は思った。諸注意にかかった時間も十分と短かった。だがもう授業には間に合わないだろう。止めとばかりに教室へ向かう五人に終業のチャイムが鳴った。
「ああ〜国語が〜」
唯が力なく廊下に弱々しく座り込んだ。
「すまん唯。俺の所為で」
孝太は先ほど唯に言われた事を思い出し唯に謝った。
「ううん、孝太は悪くないよ。勉強不足なのが悪いんだから」
唯は立ち上がった。既に他の三人は先を歩いていた。
「最悪進級できなかったら俺も付き合うよ」
孝太がそう言うと唯はえっ、と声を出した。
「孝太今なんて言ったの」
孝太はそれ以上言わず行くぞと一声かけた。一瞬呆けた唯だがすぐにうんと返事をして続いた。
教室に戻ると拍手で出迎えられた。これには五人とも鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていたに違いない。それもそうだろう自分達のクラスに貢献したのだから。だがもし失敗した時のことを考えると気が気ではなかったが。六時限目が始まるころにはその熱も冷め静かに授業が進んだ。そして放課後。部活の時間となりました。

「じゃああとで顔を出すぜ」
孝太はそう言って剣道の道具をかついだ。
「じゃあ部室で待っているよ」
シンはそう言って鞄を持った。孝太は手を振りながら出て行った。シンの部活勧誘騒動を収めるため孝太は自分が発案した図書部と人数合わせのため掛け持ちをしていた。だが最近こっちの方が楽だと図書部に入り浸っていた孝太はそれじゃあいけないと唯に渇をいれられた。しぶしぶながらも行く事を決意し先ほどの会話へ至ったのだった。
「それじゃあ私たちも行こうか」
葵も鞄を持ちシンへ振り返った。
「そうだな、看板の作成も残っているからな」
そう言いながら葵の前へと歩み出た。
「唯も書道部が終わったら孝太と来るって言ってたよ」
当初自分だけでは人数が足りないと言った孝太、その時に一緒に入部したのが唯だった。唯も既に書道部に入部済みだったが孝太と違ってちゃんと臨機応変に両方の部活へ顔を出していた。
「そうか、多分二人とも二時間ぐらいで来るだろうからその間に文字だけでも書いておかないとな」
そうだねと葵は返事をした。廊下に出ると何処へ行っていたのかローゼンとバッタリ出くわした二人。これから部活ですかと聞いて来た。
「まあそうなんだが、大体は看板作りが主だな」
葵が頷いた。
「そうですか、僕も参加したいのですが生憎今日は用事がありまして」
丁寧に断りを入れるローゼン。
「そうか。なに、そんなに畏まらなくていいよ。用事があるなら無理は言わない」そう言って歩き出す。
「じゃあねローゼン君、また明日」
シンに付いていきながらローゼンに手を振った。また明日とローゼンも手を振って踵を返した。
「さて行きますか」
少し声のトーンを落として呟いた。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

Novel Editor by BS CGI Rental
Novel Collections