「それと」 更に言う。 「タイトルはこれで良いんだなスポーツチャンバラ」 また頷く。そして書き始めた。数分後。 四人そろって出来たと言った。「よし提出」。
スポーツチャンバラ シン作 スポーツチャンバラ 葵 作 スポーツチャンバラ 唯 作 スポーツチャンバラ 孝太 作 スポーツチャンバラ ローゼン 作
全員分が出揃った。シンはシンプルに。葵はそれを太く間を短く。唯は太く跳ねた感じに。孝太は力強く。そしてローゼンは。 「こりゃあ決定だな」 孝太が言った。 「そうだな」 シンが肯定を示した。葵と唯も同意権らしい。字の形はローゼンに決定した。本人は「いいのですか僕のなんかで」と否定的だったが「当然だな。バランスも太さもどれを取ってもスマートだ。これなら気兼ねなく客も来るだろうな」 全員が頷く。 「それは光栄です」 ローゼンは笑顔で言った。 「後は絵だな、これは葵に頼んであるからいいとして」 孝太が言った時葵がそうそうと孝太と同じように紙を取り出した。開いてみると中には絵が書いてあった。 「こう言うのはどうかな、シンプルでいいと思ったんだけど」 描いてあったのはスポーツチャンバラで使用されるあのゴム製の刀だった。それがどかの海賊ゲームよろしく風にバッテンに棒の部分が交差されていた。シンプルだがその絵はリアルでこれを使用して行うゲームだという事をよくアピールできそうだった。 「これをね字の左右に描くのはどう」 葵は説明の後顔を上げる。静まり返った雰囲気が葵の不安をあおった。が、孝太とローゼンが目を合わすとローゼンがテーブルの下から大きな持ち手の付いた丸い判子を取り出す。それを孝太に手渡すと大きく振りかぶり絵にバンと押した。赤い丸で囲まれた赤い字で採用と大きく押されていた。これは二人の仕込だろうか。それは置いておこう。葵はやったーと喜んで孝太を除いた三人から拍手を貰った。 「看板と絵はこれでいいとして、次は試合ルールと申し込みなんだが」 と、そこまで言った時入り口から怒号が響いてきた。藤原はいるか。そう言った。食堂中の目が入り口に注がれた。如何にも不良ですと言わんばかりの男が二人。孝太達は顔を見合わせる。 「何あれ、孝太の事呼んでるよ」 唯が孝太に言った。 「見たいだな、でも俺にあんな友達はない」 孝太は話をそらすように言った。 「そうじゃないだろう。この分だとアイツは」 シンが予想を立てたとき入り口で叫んだ男の隣にいた小柄な男がこちらに気づいた。 「大文字、いたぞ」 やはりと言うべきか男の名前は大文字といった。この分だとあの怒り方にも予想はついた四人。ローゼンは全てを悟ったのか落ち着いてピラフを食べている。 「目を合わせるな」 そう言ってカレーを食べる手を進めた。仕方がないので他の三人も従った。五人とも揉め事はキライなのだ。だがそんなことはお構い無しに大文字と小柄な男はこちらへ近づいてきた。周りからヒソヒソと話し声が聞こえる。大文字が目当てのテーブルまで来ると。全ての視線がそこに集まった。中には「なんだまたか」と言う声も聞こえて来た。 「藤原だな」 大文字はそう言うと孝太を見下ろした。大文字が後ろにいるにもかかわらずローゼンは何事もないかのようにピラフを平らげてご馳走様と言った。立ち上がり 「では」と一言笑顔で言ったが大文字がそれを止めた。 「まて、お前も座ってろ」 「何故です、僕は藤原君ではありませんよ」 「このまま先公にチクるつもりだろうがっ。にがさねえよ」 「仕方ないですね」 そう言ってローゼンは座った。シンは不思議に思った。ローゼンなら睨みの一つでも見せれば相手は怯むはずだ。 「・・・・・・」シンは少し考えた。だが本人は(少し面白そうですね)なんて遊び感覚だった。ローゼンの隣では葵と唯が気にしながらも何とか食事を終えていた。シンも右に同じく。孝太はまだ素知らぬ顔でカレーを口に運んでいた。 「おまえ俺の名前を勝手に使ったそうじゃねえか」 案の定話の内容はそれだった。シンは小声でだが態勢を崩さぬように孝太に言った。 「(嫌な予感はあったが、孝太どうするつもりだ)」 「(悪い、ここじゃあ騒げ無いからな。教師達が来るのを待つしかないな)」 頼りない答えが返って来た。巻き添えとしてはいい迷惑だった。 「無視すんじゃねえ!」 今度は入り口の時よりも大声で言った。唯と葵が震えた。孝太は顔を上げると初めて大文字の顔と全体を見た。頭は丸刈りでピアスをしている。良く見れば眉まで剃っているのが見えた。そして私服。その道と言い張っても通用しそうだった。 「何かようか」 普通な態度に大文字は少し舌打ちをしたが話し始めた。 「誰の名前か解って使ったんだろうな」 どうやら細かい所まで伝わっているようだった。孝太は最後の一口をスプーンに乗せ大文字を見たまま口に運び租借した後飲み込んで言った。 「誰のか知らなきゃこの席は空かないだろう」 既に大文字を怒らすには十分な態度と喋り方だった。また怒鳴るのではないだろうか、そう思った葵はシンの手を握っていた。 「いい度胸だ、その言葉は冗談か」 「生憎、冗談は知り合いにしか言わないんでね」 そこまで言うと大文字が拳を振り上げた。唯が目を瞑る。拳を打つ音は無い。恐る恐る目を開けると大文字の拳を防ぐシンの刀が入った袋が拳の前に踏み切りのように入っていた。 「てめえ……」 そういう声があがった。 「こんなところで騒ぐな、食事をしている生徒の迷惑だ」 葵の呼ぶ声がしたがシンは無視した。 「そうかよ、表に出ろ」 暴力的に言って。シンと孝太、ローゼンは立ち上がった。唯と葵も静かに立ち上がった。シン、ローゼン、孝太がお盆を置いた。去り際に孝太がカウンターの女性に 「おばちゃんごめんな」と言った。それをしかたないねえと言った顔で見送った。葵と唯もお盆を置いた。二人そろってごめんなさいと頭を下げる。 「いいよ、それより大変だねえあんた等も。あんなのが彼氏じゃあね」 おばちゃんのこの一言に二人とも顔を赤くして出て行った。
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