「まあ、今にして思えばあいつの元気に当てられたんだろうな。いつの間にか気になっていたみたいだし」 自分の気持ちに正直になるのはどんな人間でも抵抗はある。でも孝太は水が流れるかのごとくあっさりと受け入れ認めてしまっている。これも無頓着からの傾向なのかも入れない。 「まあその内にでも言えば良いかな」 孝太は立ち上がって先ほどの唯の笑顔を思い出した。もう焦りは無い。寒くなってきたので教室に戻る事にした。 階段を下りていると二時限目の終了を知らせるチャイムが鳴った。開いたドアから教室に入る。どうやらシン達は席を外しているようだ。大方自分を捜しに言ったのだろう。イスに座ると同時に大きく息を吐いた。教室は外と違って人肌で温かくなっている。 「どうでしたか気分転換は」 ローゼンが笑顔で言った。 「お前は何でもお見通しか?」 へっと顔を見ずに笑ったあと腕を組んだ。 「まあ、おまえの事を追及するのはとりあえず止めた、皮を被ったお前に何を言っても無駄だろうからな」 「はあ、それはそれは」 「でもな、お前を信用した事にはなら無いからな。不審な動きをしたらすぐに問いただすぞ」 「藤原君らしい見解です。ええ、それで構いませんよ完全に信用するのも人としてどうかと思いますし」 「言ってろよ、とりあえずお前にも色々あるんだろ」 「ええ、それはもう大変ですよ、偽りが唯一の武器ですから」 その一言で終わった、互いに小さく笑いあう。何を理解したのかそれとも未だ発展途上なのか、とりあえず蟠りは小さくなったようだ。丁度そのときタイミングよく教室に三人が帰ってきた。よお、なんて孝太は軽く挨拶をすると唯がすごい勢いでやってきた。 「あ、孝太。何処に行っていたのよ。保健室に行っても誰も来てないって先生が言ってたから探しちゃったじゃない・・・って何がおかしいのよ」 唯は自分が怒鳴っているのにもかかわらず孝太が笑っている事に不満げな顔をした。孝太は唯の顔を見た瞬間自分の焦りを思い返して笑っているのだが唯のご立腹振りを見て止めた。 「いや、悪い悪い。そうだな笑うのはよくないよな、それは謝るよ」 そう言うとローゼンを見た。 「藤原君に話したのは正解だったかも知れませんね、ありがとう」 そう言った。 「買かぶり過ぎだ。俺は・・・」 そう言うと唯を見たあと「俺は腹を据えただけだ」そう言った。ローゼンはおかしそうに笑って「みたいですね、健闘を祈りますよ」そう言って二人で笑った。その様子を三人は顔を見合わせて肩を空かした。よく見れば教室中の視線も注がれていた。
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