「これであなたの人生は終わったわ。。。。」 1人魔女が、人間に呪いをかけた。その魔女の名前はモカ。 密かに人間界で暮らしていたモカは、最愛の親友を殺した 犯人に呪いをかけた。モカの仕事は人間に呪いをかけ、 人間界を、ボロボロにする事。 仕事でやっている時よりも、もっと嫌な呪いをかけた。 最愛の親友は人間でもあったが、素敵な人だった。 モカはその悲しみの結晶と、怒りを呪いに込めた。 悲しみの感情と、怒りの感情から作られた、呪い。 仕事で使う物とはまた違う。 呪いをかけた人間を不老不死にし、いつまでも治らない病に 悩まされる呪い。モカが使える呪術の中で、一番最大の呪いだ。 モカは涙も流さない。表情も何も表さない。 魔女にとって泣くという事は屈辱的な事。 泣かされてしまっては魔女として名乗れないという事もある。 だから、いくら親友をなくして悲しくても、泣けないのだった。 今回の呪いは仕事としてではなく、仕返しとして行ったのだった。 帰り際には「魔女を敵に廻したあなたが悪いのよ」と 男の前から去って行った。 「モカ。。。私情で呪いを使っては駄目でしょう?」 モカの先輩のミナがモカに注意をした。 「はい、でも本当に使わなきゃ気が済まないんです。」 「私達、魔女は、仕事で呪術を使っているの。まだ16才の あなたにはわからないでしょうけど、純粋な頃にそんな事 をしちゃ駄目よ。それだけはちゃんとわかって、ね?」 実の姉のようにちゃんと気づかってくれるミナを、モカは 嫌いではなかった。 そして、また仕事が依頼される事になった。 今回の依頼は、世界中の少女に恋する心をなくす呪いをかける事だった。 「何ですか?今回の任務。恋って何ですか?」 魔女に恋などなかったのだ。だから不思議そうにモカはミナに聞く。 「う〜ん。。。恋って言うのは。。。人を好きになる事かな! でも、好きは好きでも女の子が男の子を好きになる事。その逆も あるけどね。その心を無くしちゃうんだ。もう世界中の女の子が 恋をしないようになるの。だから、いくら男の子が女の子を好きに なっても、女の子は男の子の事は好きにならないんだよ」 「何か。。。可哀想。。。」 「可哀想だよね。。。でも仕方ないんだ。仕事だから。それに 今の事、誰かに聞かれたら、女王様が怒って、私達殺されちゃうよ! そういう言葉は言わないようにしなきゃ。。。」 暗い雰囲気になり、2人共話す事がなくなった。
「じゃあ。。。。用意して。。。」 モカ達がビルの屋上に立った。そして杖を魔法で出すと呪文を唱え始めた。 やがて呪文が終わると「世界中の恋する気持ちよ!ここに消え去れ」 と不思議な扉が開き、そこに吸い込まれるように、世界中で光った。 恋する心が扉に封印された。もうこれで、人間達の恋はない。 「これで。。。本当にいいんでしょうか。。。?」 「。。。。わからない。。。仕事だから仕方ないと思っていたけど、 恋の心はとっても純粋だと思う。とても素敵で、人間の持つ物の 中でも一番、綺麗だと思う。。。」 「綺麗。。。?」 「そう、綺麗」 「心に綺麗なんて事があるんですか?じゃあ汚いって事も あるって事ですよね?」 「そう、人間の心は魔女の心なんかよりもずっと綺麗なの。 汚いっていうのは、私達。魔女の事。」 「私は、汚いの?」 「。。。今のあなたは「綺麗」だけど、年月が経てば、汚くなるわ」 話している内に段々とわからなくなってきた。 魔女の学校では、「綺麗」や「素敵」などの言葉は教えられなかった。 なので、モカは長年人間界に住んでいるミナから最近教わったばかり だった。けれど、まだモカには難しくて、わからない部分も多かった。 「さあ女王様に報告しに行きましょ」 と、魔界への扉を出して2人は魔界に行った。 魔界に着くとすぐ分かる。目立つ豪華な城。眩しすぎて、 一目見れば、もう一生忘れないだろう。 2人は城に着くと今回の報告をした。 「それはよかった。上手くいかなかったらアンタ達を大鍋に入れて、 ぐつぐつと煮込むところだったよ。ああ、楽しそうだ」 と女王は身震いしながら、少しからかったように2人に言った。 「はい、絶対に失敗などという事はしませんですので、 期待してて下さい!」 とミナが言う。その後もさんざん女王に愚痴を聞かされ、 城に入ってから帰って来たのは3時間後だった。 「あ〜どうせ私達なんか使いっパシリなのね」 とうんざりしたようにモカに言った。 「まあ、こんな私が役に立つなんて思ってはいまませんでしたけど」 流石に女王の態度は気に食わなかった。 「でも、逆らったら本当に怖いわ。。。あの人何するかわからない もの。。。考えたくもない。。。」 嫌な思いで2人は人間界に戻るのだった。
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