つい先日、中学校時代親友であった高木が家を訪れた。 仕事でこっちに戻り、ついでに昔懐かしの親友の顔でも見ようかとここを訪ねて来たらしい。 2人で、杯を交わし、昔話に花を咲かせる。 「そういえば、おまえ仕事なにしてんの。」 机にちょうど2本目のビール瓶がスコンと空の音を立てた中、僕は高木にそんなことを訊いてみた。 「銀行に勤めてんだよ。」 高木は笑って、そう答えていた。
・・・大分酔ってるな。 目を覚ますと、僕の目元に被されていたタオルを机に置き、そっとトイレの方に向かった。 ・・・ガタッ・・・ 僕の部屋の方から物音がする。 そっと僕の部屋を窺ってみると、貴重品の入った棚を一人男が荒らしている。 僕は部屋を離れると、台所へ向かい、包丁を手に取り、再び僕の部屋へと訪れた。 こちらの様子に気づかない男が、棚をひたすら漁っている。 ・・・ズブッ 「ぐわっ」 という悲鳴とともに男が倒れこむ。 僕は倒れこむ男の身をかわすと、人差し指で部屋の明かりを灯した。 男は当然、高木であった。 下腹部に刺さった包丁は、腎臓まで達しているに違いない。 「・・・くそっ・・・なんでだよ・・・」
高木の遺体は、友人として例の空き地に埋めといてあげた。 横には僕の妻もいる。 いずれは僕もこの中に入るのだろうか。 咲き誇るユリの花を見ながら、僕は小さな感傷に耽っていた。
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