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僕は・・・ 作者:mkonkon

最終回   人助け
 高校に入ってこんな生活を続けていた僕も一度だけ人を助けたことがあります。ある日自宅に戻っている途中屋上から飛び降りそうな人を見かけました。僕は慌ててそのビルの屋上に走っていきました。幸いにもその人は死ぬことを躊躇ってまだ飛び降りていませんでした。僕が来るや否や、その男は飛び降りようとしました。「やめろ〜飛ぶのはよせ。」今日も腹に何発もパンチを入れられた僕の声はか細いものでした。しかしその声が聞こえたのか男は立ち止まりました。「俺はもうたくさんなんだよ、こんな人生。」僕は男の話を聞いてあげることにしました。男を助けてあげたかったし、何よりも僕より酷い経験に会った人なんてそうもいないと思ったからです。
 
 男は自分に起きた体験を話しました。金を取られた、暴力を奮われたなど・・・されども僕の比ではありませんでした。些細なものです、彼の経験なんて。彼の話を聞いてあげると続いて僕は自分自身の話をしました。金を取られた、暴力を奮われた。彼と同じようなことを、しかし自分に起きた体験は彼の比ではありません。もっと凄まじく、まさにインフェルノ。彼は最初疑いの目で聞いていたのですが、僕自身の痣や、これから支払うための札束などを見せつつ話をすると、彼は口をあんぐりして聞き入っていました。僕はなぜだか知らないけども、この話をしていくうちに自己陶酔というかなんか満足したものを感じていました。「僕ほど酷い目に会った奴なんかいない。」僕は自身を持ってそう言い切りました。彼は頭をぽりぽり掻くと「ああ〜そうだな。」と返事してくれました。「あんたほど酷い目に会った奴を俺は見たことね〜よ」彼はすっきりした顔立ちでそう言いました。
 
 僕は何かをやり遂げた満足感で心が満たされていました。ああ〜良かった、と思うも束の間彼はこちらにすたすた歩いてきます。「良かった。改心したんだね。」僕がそう言うと彼は「ああ〜良かったよ、あんたと会えて。」と言って卑屈な笑みをこぼしました。そしてそのまま僕のお腹に拳をめり込ませていきました。「えっ、なんで」僕は血反吐を吐きながら目を丸くしていると彼は高笑いを始めました。「あんたぐらい卑屈な人間がいたなんて俺知らなかったからな〜俺の方がマシってすっごく感じてるよ、今。だからさ、こんなことやっても大丈夫なんだよね〜」そう言うが彼は僕の腹に何発もパンチをぶち込んでいきました。僕は血反吐を吐きながらその行為が終わるのを必死に耐えていました。彼は笑いながら時折「気持ちいい、超気持ちいい。」と言っては楽しんで殴っていました。やがて彼はすっきりしたのか、僕から離れると寝転んでいる僕に唾を吐きかけました。「いや〜ありがとう。これで俺もう立ち直れたよ。マジでサンキュー。これ貰っとくから。」そう言うと彼は私の持っていた10万円の封筒を掴み取っていきました。僕はただ彼を怯えた目で見ることしかできませんでした。彼は僕の頭を足蹴にすると悠々と歩いて屋上を去っていきました・・・これって人を救ったってことになるのかな〜

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Novel Editor