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ねぶの詩集2 作者:ねぶ

第8回   『波打ち際』
『波打ち際』

僕は海を眺めるのがとても好きだ。

特に気分が沈んだときはよく近くの海岸へ足を運んだものだった。

海を眺めると単純にちぢこまった心が広がるような気がしたから。

海辺を歩く親子連れ、海水と戯れるカッポーを見ると和めたから。



でも、しばらく海を眺めていると飽きてくるので、

そんなときは波打ち際に砂山を作ってみるんだ。

どれだけの間、この砂山が押し寄せる波に耐えられるのか知りたくて。

けれども、止むことのない大きな波の前には成す術もなく崩されていく。



崩れそうになる度に新たな砂を追加しても無駄だった。

コンクリートで固めればいいのかもしれないけれど、

僕にそんなことなどできるはずもなかった。

そもそも僕はなんでこんなことをしているんだろう。



気が付くと夕日が水平線に接し、海はその色を濃くしていた。

家路に着く前にその日一番の大きな砂山を築くんだ。

そして木切れを探して、それを砂山へ突き立てる。

どうか次に僕が海岸に来るときまでは、

木切れが流されないでいてほしいと願いながら。

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