『亡骸に咲く華』
知らぬ人はその姿に憧れる白い悪魔。
長く接すればその恐ろしい実態を知る。
今日も白い悪魔が街を押しつぶそうとしている。
既に100人ほどの人々は悪魔に喰われたらしい。
このままではみんなの心も潰れてしまうだろう。
僕の耳にはミシミシと心のきしむ音が聞こえる。
「どうしてこんなに責めつけるの?」と誰かがつぶやいた。
しかし、そんなつぶやきも空しく吹き飛ばされていく。
見上げた空には白い悪魔の姿しか見えない。
けれど、この悪魔は期間限定。
やがて白い身体は汚れにまみれて消えてゆく。
あんなに憎らしかったはずなのに、
その悪魔が消えていくのが切なく感じられる。
それはきっと悪魔の亡骸の跡に草木が芽吹き、
大きな華を咲かすことをみんな知っているから。
今年も大きな華が咲くのなら、
その花びらは君の心にも触れるだろう。
明日に怯える君の足元には、
小さな芽を顔を出そうとしている。
でも、そのことを君はまだ知らない。
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