『Rapid Eyes Movement Sleep』
一人、僕は目的地も見つからずに寂しい夜道を歩いていた。
一休みできるイスがほしい、せめて支えとなる杖がほしいと望んだ。
けれども、夜道でそんなものを見つけることはなかなか難しいだろう。
心の目を開けさえすれば、いくつもあるということにも気づけなかった。
いつしか夜道は急な下り坂へと変わってしまうんだ。
小さな小石だって大きなハードルと錯覚していた。
恐怖と疲労で足の震える僕はつまづいて転んだ。
一度転んでしまえば、どこまでも堕ちていってしまう。
この坂の終わりは、いったい、いったいいつなのか?
ゴロゴロ転がりながら僕は遠い夜空に目をやった。
転がることにも慣れて余裕ができたのかもしれない。
ああ、遠い雲間からきれいな月がのぞいていた。
淡い光だったけれど、その光で心の目は開いた。
すると不思議なことに下り坂だと思ったここは平地だったんだ。
僕は平地に寝そべりながらバタバタとあがいていただけ。
立ち上がってあたりを見渡せば、街灯もともって空も薄明るい。
街も見えている。まずはあの街を僕の目的地にしよう。
そう決めた僕の足は震えることなく、強く踏み出した。
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